秘密の終焉

土屋大洋「秘密の終焉」『治安フォーラム』2014年1月号、45〜48ページ。

 『治安フォーラム』側の都合で2013年12月号は休載になりました(私はちゃんと原稿を出していましたよ)。1ヶ月遅れで載った原稿です。

 NSAの問題が議論されていますが、英国のGCHQ(政府通信本部)の動きについて書いています。

ビッグデータの威力

土屋大洋「ビッグデータの威力」『治安フォーラム』2013年10月号、30〜33ページ。

 連載の第4回。NHKのクローズアップ現代に出演させてもらったことで刺激を受け、書きました。プリズムについての続きです。

プリズム問題で露呈した、オバマ政権下で拡大する通信傍受とクラウドサービスの危うさ

土屋大洋「プリズム問題で露呈した、オバマ政権下で拡大する通信傍受とクラウドサービスの危うさ」DIAMOND ONLINE(2013年6月17日)。

 プリズム問題について歴史的な経緯を書かせていただきました。(いろいろ追われていた時にすぐ書けとのお話だったので、タイトルも小見出しも付けない原稿を出したのですが、うまくまとめてくださいました。)

ワシントン、ボストン

 12月4日、NさんとワシントンDCへ。到着日はワシントン在住のMさんと、もうひとりのNさんの4人で会食。韓国とアメリカのインテリジェンスについてお話をうかがう。韓国では機密性を第一に考えたが、アメリカではスピードを重視するようになっているというお話が印象的だった。

 翌5日は朝から4件のアポをこなす。すべてサイバーセキュリティに関して。

 びっくりするような新しい話はなかったが、フォローアップできてよかった。夜はイタリアン・レストランで賑やかに。同行のNさんとはここでお別れ。

 6日は午前の便でボストンへ。ワシントンDCのナショナル空港は大好きだ。めずらしく窓際の席に座ったので、滑走路上から外を見ると、ワシントン・モニュメント、ジェファーソン・メモリアル、議事堂が見渡せる。離陸してペンタゴンとアーリントン墓地を横目に見ながらぐっと旋回すると、飛行機はアーリントンの上空で上昇していく。2001年7月から1年間住んでいたアパートが見えた。とてもなつかしい。

 機内では本を読んでいた。窓からふと外を見ると、なんとニューヨークのマンハッタン! まるでミニチュアのようにマンハッタンが見渡せた。これからナショナル空港からボストンへ飛ぶときは、窓際Aの座席に座ることにしよう。

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 ボストンでは3日間にわたってハーバードのバークマン・センターが主催するシンポジウムに参加。シンポジウムといっても非公開。世界各国のインターネットと社会に関する研究をやっている研究所の研究者たちが50名ほど集まる。慶應SFCからは両学部長が参加予定だったが、学部の行事のため、私が代理で参加。他にフォスター先生とマラッケ先生、それに学部生のO君が参加。

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 なぜかやたらとドイツからの参加者が多かった。アジアは、慶應SFCチームの他に、シンガポールやインドから数人。韓国からも来るはずだったが、仁川空港の雪のための飛行機が飛ばなかったらしい。3日間、いろいろ議論して、次のステップをみんなで考える。

 会議終了10分前に失礼して、ボストンのローガン空港へ。セキュリティ・チェックでMITメディアラボの研究者とばったり鉢合わせる。彼もバークマン・センターの会議に参加していたが、ワシントンDCでの会議に行くとのこと。共通の知り合いがいたので、話がはずむ。1月に東京に来るらしいので、会えたら会おうといって分かれる。

 ワシントンDC行きの便も窓側に座ったが、あいにく天気が悪く、ずっと雲海だった。それはそれで良い。

 ワシントンDCに到着してからYさんに電話。少し遅れるとのことなので、ナショナル空港で買い物。車でピックアップしてもらい、タイ料理を食べに行く。ワシントンで外国人研究者が生き抜く方策を教えていただいた。とても大変だ。

 空港近くのホテルまで送っていただき、そこで1泊。帰国前までにやらなくてはいけない宿題をなんとか片付け、メールで送る。間に合った。

 ワシントンDCから東京への便は満席。ワシントンDCでいただいた論文を読み、映画を1本見て、残りの時間は割とよく眠れた。

ボブ・ドローギン『カーブボール』

ボブ・ドローギン(田村源二訳)『カーブボール—スパイと、嘘と、戦争を起こしたペテン師—』産経新聞出版、2008年。

 コード名「カーブボール」。言わずと知れたイラク戦争の原因となったイラクからドイツへの亡命者だ。彼の発言をドイツのインテリジェンス機関が取り上げ、それがアメリカのCIAに伝わり、イラクが大量破壊兵器を持っている唯一の証拠としてイラク戦争が開始された。

 しかし、彼は完全なペテン師だった。なぜこんなことが起きたのかを追ったドキュメンタリー。

 英語版を先に買ったのだが、前半の記述が退屈で、読み通せなかった。翻訳が出ているのが分かったが、なぜかもう品切れになっている。古本で買い求めて、読み始めた。やはり翻訳でも前半のドイツについての記述は退屈で読むのがつらい。しかし、後半、舞台がワシントンとバグダッドに移ると俄然おもしろくなる。そして、唖然とするような事態が次々と起こり、イラク戦争が始まったことが分かる。インテリジェンスの失敗が如実に表現されている。秋学期の授業の教材の一つにしよう。

土屋大洋『サイバー・テロ 日米vs.中国』

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土屋大洋『サイバー・テロ 日米vs.中国』文春新書、2012年。

 ヴィントン・サーフへの名誉博士号授与式と記念講演から帰ってきたら、見本が届いていた。

 すごい帯が付いていた。一応言い訳しておくと、タイトルも私が付けたわけではない(私はもっと保守的なタイトルを提案していたんだけど、全てボツ)。

 ともあれ、形になったのはまちがいなく良いこと。ありがたい話だ。国内外のいろいろなところに行って、調査・研究して、原稿を書いて、本にまとめるのは、ひとりではできない。特に、原稿を渡してから本になるまでの間、会ったこともないたくさんの人たちが手伝ってくれている。感謝。

 しかし、新書っていうのは決まると早い。とにかくびっくりしっぱなしだった。

来月新著

 来月、新著が出る見込み。

 テーマはサイバーセキュリティで、初めての新書。タイトル付けは苦手なので出版社にお任せしたところ、私としては気恥ずかしいものになった。それで多くの人が手に取ってくれるなら良いかもしれないと思い直している。

http://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refBook=978-4-16-660878-2&Sza_id=MM

 手元の記録によると、書き始めたのは昨年の12月26日、第一稿を編集者に送ったのがゴールデンウィークの終わりの5月6日、書き直しの第二稿を送ったのが7月10日。発売予定が9月20日。ずいぶん速いなあという感じ。

ロナルド・ケスラー『FBI秘録』

ロナルド・ケスラー(中村佐千江訳)『FBI秘録』原書房、2012年。

 フーバー長官からビン・ラディン急襲まで、FBIの極秘捜査の手法がこれでもかと明らかにされていておもしろい。FBI長官にもインタビューし、その他の現場の人物たちから生の証言をとっている。

デイヴィッド・ワイズ『中国スパイ秘録』

デイヴィッド・ワイズ(石川京子、早川麻百合訳)『中国スパイ秘録—米中情報戦の真実—』原書房、2012年。

 どぎつくやっているなあというのが感想。

 FISA(Foreign Intelligence Surveillance Act)の実際の運用についていくつも記述があるのがとても参考になる。

 最終章はサイバーセキュリティを扱っているが、これはあっさりとしている。

ボブ・ウッドワード『ディープ・スロート―大統領を葬った男―』

ボブ・ウッドワード(伏見威蕃訳)『ディープ・スロート―大統領を葬った男―』文藝春秋、2005年。

 つい最近のことと記憶していたけれども、発行されたのは7年も前。7年間も「つん読」状態になっていた。

 「ディープ・スロート」は言うまでもなく、ウォーターゲート事件でワシントン・ポスト紙の情報源となった人物のこと。実際にはFBI副長官だったマーク・フェルトであった。彼は、長くFBI長官として君臨していたフーバーの後継をねらっていたが、そうはならなかったという事情がある。

 当時と2000年以降の裏事情を説明した本。

 しかし、晩年のフェルトが記憶をかなり失ってしまい、2008年に亡くなってしまったので、全容は分からなくなってしまった。

ボブ・ウッドワード『ディープ・スロート―大統領を葬った男―』

ボブ・ウッドワード(伏見威蕃訳)『ディープ・スロート―大統領を葬った男―』文藝春秋、2005年。

 つい最近のことと記憶していたけれども、発行されたのは7年も前。7年間も「つん読」状態になっていた。

 「ディープ・スロート」は言うまでもなく、ウォーターゲート事件でワシントン・ポスト紙の情報源となった人物のこと。実際にはFBI副長官だったマーク・フェルトであった。彼は、長くFBI長官として君臨していたフーバーの後継をねらっていたが、そうはならなかったという事情がある。

 当時と2000年以降の裏事情を説明した本。

 しかし、晩年のフェルトが記憶をかなり失ってしまい、2008年に亡くなってしまったので、全容は分からなくなってしまった。

松本清張「内閣調査室論」

松本清張「内閣調査室論」『松本清張全集31』文藝春秋、1973年、483〜498ページ。

 明日の授業の課題文献の一つ。毎年読むたびにいろいろ考える。現代まで尾を引きずる日本のインテリジェンスの問題。

Daniel Miller, ”Secret army of 200 homegrown suicide bombers ’plotting to attack Britain’”

Daniel Miller, “Secret army of 200 homegrown suicide bombers ‘plotting to attack Britain,'” Mail Online, October 9, 2011, available at <http://www.dailymail.co.uk/news/article-2047069/200-suicide-bombers-planning-attacks-living-Britain-intelligence-chiefs-warn.html> (access October 13, 2011).

 ロンドン・オリンピックを狙って英国内に2000人の過激派がいて、200人の国産自爆テロリストがいるというのだが、本当かいな。狙われるのはスポーツ・イベント会場ではなく、地下鉄駅などだという。

岡久慶「英国の対国際テロリズム戦略:CONTEST」

岡久慶「英国の対国際テロリズム戦略:CONTEST」『外国の立法』第241号、2009年9月、198〜226ページ。

 英国の対テロ戦略についての解説。戦略的コミュニケーションという点でも興味深い。これは2009年版のCONTESTの解説だが、サイバーテロはまだ脅威ではないと書いてあるのもおもしろい。その後大きく転換している。

横大道聡「国家の安全と市民の自由」

横大道聡「国家の安全と市民の自由—G・W・ブッシュ大統領の大統領命令による軍事委員会の憲法上の問題を中心に—」『法学政治学論究』第66号、2005年9月、355〜388ページ。

 久しぶりに大統領令(大統領命令、行政命令)についての論文。

 慶應の法学研究科の大学院生のための紀要である『法学政治学論究』。私も昔書いたことがある。

 ここで取り上げられている大統領令(DETENTION, TREATMENT, AND TRIAL OF CERTAIN NON-CITIZENS IN THE WAR AGAINST TERRORISM)は、なぜか番号が振られていないようだ(普通はEO12345というような番号が振られる)。

http://www.fas.org/irp/offdocs/eo/index.html

(2001年11月13日のところを参照)

 なぜなんだろう。

 大統領令よりも軍事委員会のほうに力点があるようなので、後半は流し読み。

中国のインテリジェンス関連3本

高橋博「鬼が笑う十七大予想と中国情報機関の紹介」『東亜』第470号、2006年8月、78〜88ページ。

高橋博「中共軍高層と情報機関の変遷」『東亜』第471号、2006年9月、78〜86ページ。

高橋博「中国の情報機関」『東亜』第472号、2006年10月、74〜85ページ。

 中国のインテリジェンス(情報)機関についての数少ない論考。

 私はチャイナ・ウォッチャーではないので、やたらとたくさん出てくる人名とポストに閉口してしまう。話もあちこちに飛ぶ。

 昔の話がいろいろ書いてあるが、文革終了後のインテリジェンス機関については、総参謀部の第二部、第三部、第四部、連絡部(通信部?)などの軍関連のものの他、国家安全部、公安部、外交部、新華社、各企業があり、これに共産党の中のものが加わるらしい。それらがどう連携しているのかは読み取れない。