3連覇を狙う東京大学圧倒的有利の下馬評の中、ドラマは第1試合から起
こった。前年度高校選手権優勝の大井川高校は、卒業生中心のその優勝メン
バーに竹中先生を加え、必勝を期す。果たして藤波・筒井が山崎・赤井をくだ
し大井川は優位に立ち、厳しいと見られた吉井・片山にも安藤・竹中が運命戦
に持ち込む。さすがは東大、札クロスは免れたが勝敗は出札に託すことにな
る。一枚の空札の後、出札は大井川。大井川高校、東京大学全盛時代の絶頂期
に、みごと勝ち点を奪う大金星であった。
大井川は宿敵富士高に勝ち点を失うものの、結局東大戦で奪った4勝がもの
を言い、決勝に進出する。大井川高校の決勝進出は2年ぶり2度目。裏ブロッ
クの有力チームは早稲田大学。緒戦の暁星戦こそ3勝2敗と苦戦するものの、
東大B・長泉には4勝で余裕の決勝進出。大井川との決戦に備える。
決勝戦、3期ぶりの優勝杯に意欲を燃やす早稲田、中本・池田が早々に2勝
をあげる。1敗の後、劣勢の石丸が怒濤の取り、抜き抜き抜きで鮮やかに逆
転、早稲田の優勝を決めた。萬年も藤波を振り切り、自身14回目となる最後
の職域を、なんと8度目のA級優勝で飾った。
優勝チームの早稲田は最強チームではなかった。今回の最強チームは明らか
に東京大学。しかし職域の歴史に名を残すことになったのは「勝った」早稲田
大学の方である。その陰にあった高校最強チーム・大井川高校があげた金星の
輝きが、まぶしさが、筆者には忘れられない。
(田口貴志氏による観戦記)