サイードの『オリエンタリズム』
Edward Said's Orientalism : An Outline
日本語79ページー119ページ English version pp. 31-49

背景:英国のバルフォア
20世紀の初期、「ユダヤ人のため」に、イギリスなどの西ヨーロッパが支配
していた近東の諸国から、「パレスチナ」という一つの地域を切り離し,西ヨー
ロッパからユダヤ人を送ることにした。その政策を作った人がバルフォアであっ
たので、oルフォア宣言」と呼ばれる。いずれそこには新しい国が建設(19
48年)されることになり、そこに住んでいたパレスチナ人は「無国籍」になっ
ていった。
1。「オリエント」(「東洋」)とは、西洋諸国の作り上げた概念である。つまり
その存在を西洋が「地理的に、道徳的に、文化的に闍`付けたのである。

2。そのように定義されたオリエントは、17世紀からの植民地制度のお陰で
西洋にとっての利益になった。19世紀末から20世紀にかけ、不平等貿易に
よる収益だけではなく、政治的な利益をどのように得るかということが西ヨー
ロッパ諸国の熱い討論になった。
植民地だけではなく、ヨーロッパの諸国はお互いに帝国建設の競争をした。そ
の結果,「オリエント」にある巨大な土地が西洋の国によって所有され、オリ
エントでの植民地行政支配制度が始まった。

3。バルフォアによると、エジプトが英国の行政支配が必要となる理由は、イ
ギリス人の立場でも勿論エジプト人に利益与えるが、別な意味でヨーロッパ全
体に大いなる利益にもなるという。

4。西洋のオリエントに対する発想の代表としてのバルフォアは、西洋の「オ
リエント」の伝統的な定義や性格付けを参照する。古典文学からカール・マル
クスまでの著作の中で、オリエントの人達は「自分のために代表できなく、我々
に代表として語ってもらわないとならない者」として定義された。ということ
は,西洋がオリエントを代表するものになり、オリエントの現実をオリエント
の人々よりも語れるというような言説を通して表現された。
そのような言説が植民地や支配や支配を生み出すし、生み出された支配制度を
正当化する。

Orientalism 31-49 『オリエンタリズ』79頁ー119頁
知識と支配・情報と管理

1。西洋が作り出した「オリエント」は「プラトン的な本質」である。この創
造物を客観的で、普遍的にした。西洋の主観的で、伝統的な「オリエント」の
発想を事実化する。

2。「オリエント」の下記の定義が、その反対の「西洋」の定義を作り出す。
オリエントには次の要素がある。。。(英38ー9)
「オリエントの人」  「西洋の人」l 
●騙されやすい    
●エネルギーや意欲に欠けている     
●大げさな世辞を言う傾向
●陰謀的な行動、ずるさ
●動物
●うそ付き、怠け者で疑いやすい (英38ー9)
●非合理、非論理;結論を引き出せない
●説明は長くて明確ではない
●ひねくれた
●子供っぽい
●「違う」、「差がある」、「異常」(英 40)

「西洋人」
●合理的;正確的;論理的
●明確、直接的 (英 38ー9)
●道徳的にすぐれている
●成熟している
●「正常」   (英 40)

3。西洋の発想によると、オリエントという国々はイギリス(又はヨーロッパ)
による占領を求める,という。 (英34)

4。オリエントの人達は被支配者人種;支配する人種は被支配者以上に被支配
者に何が良いかを知っている,という。 (英35)

5。「オリエントの国々にとっての教師」とは、宣教師、ビジネスマン、兵士、
教師、そしてイギリスやヨーロッパからのオリエントの植民地行政官。

6。「西洋が支配する、オリエントは支配される」発言は、オリエントの土地
が占められ、行政が固く管理され、オリエントの血や資産が西洋権力に仕える
という意味をする。(英36)

7。オリエントの人種達をよく管理するため、オリエントに関する「知識」が
必要となる。だから「オリエンタリズム」(「オリエント」に関する作り上げ
られた「知識」)は西洋によるオリエントの管理に必要となる。それと、「オ
リエンタリズム」は「情報と管理のダイアレクティク(弁証法)」となる。作
り出した「情報」は管理に導き、管理過程はもっと細かい「情報」を要求する。
(英36、37)

8。イーヴァリン・ベーリング・クローマ卿キョウ(エジプトを支配した英国
人)は、「インド人、エジプト人、シルック人、ズール人。。。民族的な意味で
皆生徒の位置にいる」という。したがって、彼らが望むものについても,まず
西洋の知識や経験に照らしあわせ被支配者によいと思われるものを彼らに指摘
するほうがいい,と彼はいう。(英37)

9。彼は、西洋人の優秀な才能や無私の行動を大事にするという姿勢に対する
コスモポリタン的な忠誠や感謝をオリエントの人間の間に養うことができると
いう。(英37)

10。オリエントの人々はどこでも殆ど同じだ。(英38)

11。「オリエントの人のや話し方、考え方は一般にヨーロッパ人と逆だ。」
(英39)

12。オリエンタリズムが植民地支配を正当化したという言い方よりも、植民
地支配があらかじめオリエンタリズムに正当化されていたという言い方を優先
する。(英39)

13。18世紀末(ナポレオンのエジプトの征服)から、東西関係は二つの要
素がある:
	● ヨーロッパの「オリエント」に関する「知識」その「知識」は1
9世紀に発展した分野に支えられた:人類学、言語史、歴史、そし家、詩人、
翻訳者、紀行作家によって書かれた作品
	●ヨーロッパのオリエントに対する力や支配の位置付け

14。オリエントに関する「知識」は「オリエント」を創造する(英40)

15。オリエントとは、評決されるもの(法廷の裁判過程でみたいに)、勉強
や表象されるもの(カリキュラムの一部として)、しつけられるもの(学校か
刑務所でみたいに)、そして描かれるもの(動・生物教科書の内容みたいに)。
(英40ー1)

16。オリエンタリズム言説の歴史/事実への変換:1815年から1914
年まで、ヨーロッパの直接的な植民地支配の範囲は地球35%からおよそ85
%までに拡大した。

17。支配されている「オリエント」はヨーロッパの作り出した「オリエント
に関する知識」のラボとされている。(英43)
そして(言説、研究分野、科学としての)オリエンタリズムに基づいた西洋に
よる中近東への攻撃は、「西洋の科学的な異文化の略奪りゃくだつ)と呼ばれ
る。(英42)

18。オリエンタリズムという発想や言説は、ある程度に普遍化したが、発想
や分野としては非常に限界があるものである。単純に「西」と「東」、「文化
差異」として人間の複雑さや類似点を把握することしかできない。(英42、
43)そのような用語や思考には限界がある。(英44)しかし、人間として,
人間の現実を異なる文化、異なる歴史、異なる伝統、異なる社会、異なる人種
に分けることができるのか、そしてまたそのような分け方が生み出す結果を受
け入れることができるのか? (英45)

。。。。(中略)授業でやったことは次の第23番で終わりました。

23。最終的に、上述したオリエンタリズムのような人間の分け方が生み出す敵
意を避ける方法があるのか?(英45)



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