論文の要旨


松村俊和・一ノ瀬友博・Arifin, N. H. S.・Asmiwyati, I G. A. A. R. (2004) インドネシアバリ島の水田周辺の植物相. 景観園芸研究 5, 41-44.

We made a flora list of paddy fields in Bali island. In Japan, of 95 species in the flora list, 20 species are not distributed, 23 species are naturalized species, 9 species are distributed only over Ryukyu islands and 43 species are distributed over Honshu island in Japan. It is necessary to investigate vegetation ,because vegetation can be different with each other due to the difference of seasonality and climate.


加藤和弘・章冬琴・一ノ瀬友博 (2004) 淡路島のため池

における付着珪藻群集の種組成に関与する要因. ランドスケープ研究 67, 511-514.

Agricultural reservoirs are now regarded as important habitats for some aquatic organisms, though their value as habitats of algae has clarified little. Diatom is often the most dominant component of freshwater algal communities and its contribution to species diversity can not be negligible. We studied periphytic diatom assemblages in 24 agricultural reservoirs in Awajishima Island, Japan to find major factors controlling diatom species composition. As it has often been reported and discussed, influence of eutrophication to species composition was detected. However, surrounding land cover was estimated to be the most important factor: some dystrophic or soil diatoms characterized diatom assemblages in reservoirs surrounded by woodland. Compositional difference caused by substrate was not detected. It is concluded that water quality management considering eutrophication and land use management where conservation priority is put on woodlands surrounding reservoirs are possible means to conserve diatom assemblages in agricultural reservoirs.


一ノ瀬友博・片岡美和 (2003) 兵庫県北淡町の農村地域における小規模ため池群の水質と水位変動について. 農村計画学会誌 22(別冊), 1-6.

兵庫県淡路島北淡町の小規模ため池群において、2002年5月から2003年4月まで水質とため池の管理状況を調査した。調査対象とした小規模ため池は、4つの異なる集水凹地に属する合計38カ所である。気温、水温、pH、電気伝導度、溶存酸素量、亜硝酸イオン、硝酸イオン、アンモニウムイオン、二酸化珪素イオン、リン酸イオン、化学的酸素要求量に加え、水位変動や水草の有無を調査した。その結果、季節やため池の位置、周辺の土地利用とあまり関係なく、どのため池も同じような水質であった。また、農業用水としての利用に伴って大きな水位変動を見せるため池がある一方で、ほとんど水位が変化しない池も見られた。


一ノ瀬友博 (2003) 緑地と周辺の土地利用が越冬期の鳥類の分布に及ぼす影響について−都市域における生態的ネットワーク構築に向けて−, 日本都市計画学会学術研究論文集 38, 625-630.

主に列状の緑地と島状の緑地、周辺の土地利用に着目し、我が国の都市域において生態的ネットワークを構築する手法を確立するための基礎的な研究として、鳥類の分布との関係を明らかにすることを試みた。研究対象地は、兵庫県西宮市西部とした。2002年12月から2003年2月の間に、夙川沿いの列状緑地、甲陽園一帯の島状緑地、北山公園において、ライントランセクト法による鳥類調査を行った。鳥類の確認地点を中心として半径50mのバッファーを発生させ、その種ごとの土地利用比率を分析した。その結果、主に樹林を利用する種にとっては、50%以上が樹林で占められていることが必要であることがわかった。また、いくつかの種によっては、低木層、草本層の存在が重要であることがわかった。最後に、都市域において鳥類を対象とした生態的ネットワークを構築する際の要点をまとめた。


三井雄一郎・岩崎寛・藤原道郎・一ノ瀬友博 (2003) 環境要因の違いがため池周縁部の植物相に与える影響. 日本緑化工学会誌 29(1), 293-296.

ため池は本来の農業用水としての利用に加え,近年では多様な生物を支える貴重な環境であることが指摘されている。また,農業における管理作業は周辺の植物相に大きな影響を与えていると考えられる。そこで,本研究では兵庫県北淡町のため池において,農業における管理作業が植物相に与える影響について環境要因をとして明らかにすることを目的とした。管理については,護岸の基質,草刈り回数,水位の変化,環境要因に関しては,気温,水面の温度,日射量,土壌含水率,植物相に関しては,出現種および優先群落の調査を行った。その結果,水位変化の影響を受けるため池周縁部下位で上位や提頂部と出現種が異なることがわかった。


松村俊和・一ノ瀬友博・Arifin, N. H. S.・片岡美和・片野準也・Asmiwyati, I G. A. A. R. (2003) インドネシアバリ島における水田周辺の植生. 景観園芸研究 4, 11-14.

We briefly reported vegetation around the paddy fields in Bali Island, Indonesia. Many kinds of species in Bali Island are similar to those in Japan. In the paddy fields, floating and emerging plants on the water were observed. Some of them are rare and endangered species in Japan. The number of species per 1m2 in fallow fields, on the slopes between paddy fields, and on the slopes between paddy field and kebun are 13-18, 20, and 10-12, respectively. Species richness between paddy fields is almost the same with the species richness in Awaji Island.


一ノ瀬友博・Arifin, N. H. S.・片野準也・片岡美和・松村俊和・Asmiwyati, I G. A. A. R. (2003) インドネシアバリ島の棚田と水利システムに関する基礎調査. 景観園芸研究 4, 5-10.

The interview for the reader of the irrigation association, the examination of water quality and the investigation of amphibian species were conducted from 27 to 30 August 2002 in Belimgbing village, Bali Island, Indonesia, as the basic research for the relationship between biodiversity and human activities in the typical agricultural landscape in Bali. The results showed that subak, Balinese irrigation association, is strictly controlled by the reader, the agricultural landscape in Belimgbing consists of rice paddy and mixed garden, water quality is not so good condition because of inflow of drainage from residences and that some frog species were observed in spite of dry season.


岩崎寛・三井雄一郎・一ノ瀬友博 (2003) ため池周縁部に生息するクズ Pueraria lobata Ohwi の光合成特性. 景観園芸研究 4, 1-4.

It is necessary to maintain the vegetation of the pond because pond exists in the rural region from the maintenance of various organisms. In the present study we focused on Pueraria lobata Ohwi which prevent from establishing and growing of other plants. The photosynthesis ratio of Pueraria lobata Ohwi which grew on different potision from surface of the water was examined.
We investigated in two places in the pond in the Awaji Island, Hyogo Prefecture. It measured in summer and winter when the water level was different.
As a result, it has been understood that the photosynthesis characteristic is different according to the difference of the distance from the surface of the water. The photosynthesis ratio of Pueraria lobata Ohwi which grows to a place away from the surface of the water has decreased. Soil water contents at a position away from the surface was low. We think that work of pulling out water be an effective management method for controlled the growthe of Pueraria lobata Ohwi.


一ノ瀬友博・加藤和弘 (2003) 都市域の小規模樹林地と都市公園における越冬期の鳥類の分布に影響する要因. ランドスケープ研究 66, 631-634.

埼玉県所沢市の住宅地内に位置する都市公園と孤立樹林地において、鳥類の分布に影響を及ぼす要因を明らかにするために、1994年の越冬期に鳥類分布調査を行った。その結果、鳥類の出現種数は、公園と樹林地の面積との間に有意な正の相関が見られた。鳥類の種組成をTWINSPAN (Two Way INdicator SPecies ANalysis) によって分析した結果、調査対象地はすべての都市公園と2つの孤立樹林地で構成されるタイプAとそれ以外の孤立樹林地で構成されるタイプBの2つのタイプに区分された。これらのタイプ区分には、対象地周辺の土地利用タイプと対象地内部の植生構造が影響を及ぼしていることが明らかになった。


加藤和弘・一ノ瀬友博・高橋俊守 (2003) 分類樹木を用いた生物生息場所の分類 河川水辺の鳥類を対象とした事例研究. 応用生態工学 5(2), 189-201.

多摩川中流部の水辺における鳥相及び植生の調査結果を「分類樹木」の手法により分析し、その有効性を検討した。分類樹木は、機能的には判別分析に相当するが、本研究において得られた判別精度は、両者でほぼ同等であった。一方、分類樹木は、Yes-No型の条件判断を繰り返すことで最終的な判別に至るという、わかりやすい構造を持っており、判別分析に比べてより広範囲に応用可能であると考えられた。また、説明変数間に交互作用がある場合にも有効な手法であることが確認された。結論として、ランドスケープ計画においては判別分析に比べて分類樹木が利用しやすく、今後広く利用され得る手法であると言える。


中瀬勲・服部保・田原直樹・八木剛・一ノ瀬友博 (2003) 兵庫県におけるビオトープ地図・プラン作成について. 造園技術報告集 2, 42-45.

兵庫県では、1995年から2001年までの7年間をかけて、全県のビオトープ地図化とビオトーププラン作成を行った。ビオトープ地図化を県域という広域的なレベルで行ったものとしては、我が国初めてのものであり、また地図化に基づく計画策定を行ったものもこれまでに例がない。地図化は、兵庫県を7つの地域に分けて行われた。計画の中では、ビオトープの保全と創出の方向性について明らかにするとともに、具体的な例を挙げたアクションプランを設定し、計画の実現を目指した。さらに、ビオトープの保全や創出を支える地域の活動や環境教育などに着目している点が特徴である。本報告では、兵庫県のビオトープ地図・プランの経緯とその成果を報告する。


橋本亜矢子・伊藤休一・三井雄一郎・片岡美和・一ノ瀬友博・美濃伸之・斎藤庸平 (2002) 生態的ネットワーク計画のための評価手法の提案−洲本市を事例として−. 農村計画学会誌 21(別冊), 235-240.

近年、生物多様性の保全が重要視されるようになり、生態的ネットワークの考え方が注目を浴びている。しかしその計画手法は、未だ確立されているとはいえない。本研究では、今後必要性が高まると思われるマルチスケールでの生態的ネットワーク計画策定へ向けて、生息空間の連続性を評価する手法を提案し、兵庫県洲本市でケーススタディを行なった。衛星リモートセンシングデータから解明した市全域レベルの空間特性に基づき、市内2箇所で指標種を設定し、現地調査等を行なった後、GISを用いてそれぞれの指標種の生息空間の連続性を評価した。最後に今回の手法について、今後の課題等に関する検討を行なった。


山野浩嗣・片岡美和・一ノ瀬友博・美濃伸之・平田富士男 (2002) 兵庫県北淡町の小規模ため池におけるトンボ類の分布と環境要因の関係について. 農村計画学会誌 21(別冊), 25-30.

淡路島北淡町の農村地域の小規模ため池23ヶ所において,2000年の5月から10月の間,トンボ類の分布と環境要因の関係について調査を行った。トンボ類は8科32種1066頭が観察された。ため池の水面面積はトンボ類の種数にほとんど影響していなかったが,周辺樹林地率,草刈り管理頻度,コンクリート護岸率がトンボ類の分布と種構成に影響を及ぼしていることがわかった。特に,人為的な管理の一つである草刈り管理頻度は,開水面の閉鎖性を左右することで本調査地におけるトンボ類の多様性の維持に貢献していることが明らかになった。


一ノ瀬友博 (2002) 公園緑地における鳥類の出現状況と公園緑地の植生及び周辺土地利用との関係に関する研究−都市域における生態的ネットワーク計画構築のための基礎的研究−. 日本都市計画学会学術研究論文集 37, 919-924.

都市における生態的ネットワークを計画する手法を明らかにするために、都市緑地における鳥類の分布に影響を及ぼす環境要因を検討した。兵庫県西宮市の都市域の都市緑地20ヶ所において、1999年12月から2000年2月の鳥類の越冬期に調査を行った。その結果、公園緑地内の緑被面積と鳥類の出現種数の間には有意な正の相関が見られた。TWINSPANと分類・回帰樹木を組み合わせた分析によって、公園緑地に出現する鳥類の種組成が、(1) 周辺500 m 以内の樹林地の比率、(2) 公園緑地内の植被率、(3) 高木層の存在頻度、(4) 草本・低木層の存在頻度に影響を受けていることが明らかになった。


一ノ瀬友博・森田年則 (2002) 兵庫県北淡町の農村地域のため池におけるトンボ類の分布とそれを規定する要因について. ランドスケープ研究 65, 501-506.

淡路島北淡町の農村地域のため池24ヶ所において、2000年の6月から9月の間、トンボ類の分布を調査した。出現したトンボ類の種数とため池の水域面積の間には明らかな関係が見られなかった。TWINSPANによって、24ヶ所のため池は5つのタイプに分類された。ため池の環境についての変数を説明変数として、分類・回帰樹木を用いて分析を行った結果、ため池の区分には、ため池の位置する標高、隣接する樹林の存在、水域面積、水質が影響を及ぼしていることがわかった。特に、ため池の周囲の約半分以上で樹林と接していれば、林縁や暗い環境を好む種が出現することが明らかになった。


一ノ瀬友博・高橋俊守・川池芽美 (2001) ドイツにおける生物空間地図化の現状とその日本への展開. 保全生態学研究 6, 123-142.

1970年代にバイエルン州で初めて作製された生物空間地図は,その後ドイツの自然保護において,必要不可欠な資料として位置付けられ,ドイツ各地で作製されるようになった.地図作製手順には,当初から大きな変更がないものの,具体的な作業方法は大きな変化を遂げた.一般的だったカラー空中写真にかわり,最も重要な基礎資料として赤外カラー空中写真が利用されるようになった.地理情報システムの活用によって,情報はすべてデジタル化され,コンピュータ上で地図が作製されるようになった.本論では,最新の地図作製方法とその応用について紹介するとともに,我が国における生物空間地図を生かした生物多様性保全のあり方について検討した.


瀬尾綾子・美濃伸之・浅田増美・一ノ瀬友博 (2001) 地理情報システムを用いた兵庫県淡路町の土地利用変遷の分析. 農村計画学会誌 20(別冊), 169-174.

兵庫県淡路町において、大正時代から現在までの土地利用変遷をGISを用いて分析した。その結果、淡路町では海岸部に都市的利用地が集中し、樹林地、荒廃地の面積が比較的大きいことがわかった。土地利用変遷過程では、(1)果樹園、 (2)荒廃地、(3)都市的利用地において特徴的な変化が見られた。この3点について、さらに分析を進めた結果、ほとんどが樹林地からの変化であり、その減少につながったことが示唆された。これら一連の解析結果から、土地利用変遷をとらえる手法として、GISを用いた分析の有効性が示唆された。今後、異なる条件と組み合わせ、土地利用変遷との関連を明らかにしていく必要があると考えられた。


浅田増美・一ノ瀬友博 (2001) 兵庫県淡路島のため池の分布特性とその管理に関する研究. 農村計画学会誌 20(別冊), 79-84.

今日では, 農村社会の変化などにより, ため池もその本来の役割を失いつつある。しかし, ため池の多様な生態系は, 雑木林や棚田などと並んで, 人里の身近な自然として, あるいは田園景観の一要素として再評価されている。そこで, 本研究では, 非常にため池の密度が高い淡路島を対象として, ため池の分布特性と管理主体の特徴を明らかにし, 今後の管理のあり方について検討することを目的とした。その結果, 淡路島の南部には比較的規模の大きなため池が, 北部には小規模のため池が多いことがわかった。また, 管理主体である田主(淡路島における水利組合)が管理するため池数 ,田主の構成戸数についても異なる特徴を持っていることが明らかになった。


一ノ瀬友博・高橋俊守・加藤和弘 (2001) 多摩川の生物空間地図作製と絶滅危惧植物カワラニガナの分布予測への応用. 地理情報システム学会講演論文集 10, 337-340.

生物空間地図はドイツを中心としたヨーロッパで自然保護や各種の空間計画の基盤情報として利用されている。しかし、我が国には同種の基盤情報は存在しない。本研究では赤外カラー空中写真を用いて、現地調査を伴わない生物空間地図の作製方法を提案することを目的とする。地図の有効性を検証するために、事例地域を東京都の多摩川中流域に設定し、実際に地図化を行った。さらに、作製された地図を用いて、絶滅危惧植物であるカワラニガナの潜在生息地の予測を行った。潜在生息地は、実際の生息地と良く対応しており、地図の有効性が示された。


山本祥子・河原田愛・糸川千尋・大森潮・中谷千尋・一ノ瀬友博・斉藤庸平 (2001) 兵庫県北淡町の土地利用変遷とその要因. 景観園芸研究 2, 21-26.

本研究では、兵庫県北淡町の土地利用変遷過程を明らかにし、変遷に影響を及ぼした原因を究明することを目的とした。戦後の北淡町において、顕著な土地利用変化の見られた5時期(昭和24年、45年、52年、平成5年および10年)を選出し、地理情報システムを用いてその変化を分析した。土地利用地目比の変遷において顕著な変化が見られたのは果樹園、荒廃地、水田及び樹林地である。果樹園は昭和49年に増加したが平成4年には再び減少と短期間に急激な変化を見せた。荒廃地については昭和42年に減少したものの49年以降増加する傾向が見られた。水田及び樹林地は減少傾向にあった。これらの変化の要因について考察を行った。


Cheng, S., Asada, M. and Ichinose, T. (2001) Topography and the Tazu system of Awaji's Rainwater Storage Pond (Tameike) - a comparison study of the farming social structure in Hokudan-cho and Mihara-cho, Hyogo Prefecture. Landscape Planning and Horticulture 2, 9-14.

数多くのため池があることで知られている兵庫県淡路島の北淡町と三原町に着目し、それぞれのため池の規模や分布形態の違いを検討し、それを支える地形的要因や淡路島独特の水利組合である田主の組織形態の比較を行った。ため池についての基礎情報は、それぞれの町のため池台帳により収集した。田主による農業用水の分配、ため池の管理については農家にヒアリングを行うことによって調査した。その結果、地形が急峻で平坦地が少ない北淡町においては、小規模のため池が多数存在し、農家は複数のため池を使って農業用水を確保していることがわかった。また、田主の構成員も少なく、その運営は伝統的に行われていた。その一方で、傾斜の緩やかな扇状地に位置する三原町では、比較的規模の大きなため池が存在し、田主の構成員も多く、その運営は北淡町に比べて組織的に行われていた。


一ノ瀬友博 (2000) ドイツを中心としたヨーロッパの景観生態学研究とそれに基づく計画の動向. ランドスケープ研究 64, 122-125.

1970年代にバイエルン州で初めて作製された生物空間地図は、その後ドイツの自然保護において、必要不可欠な資料と位置付けられ、ドイツ各地で作製されるようになった。地図作製手順には、当初から大きな変更がないものの、作製過程は大きな変化を遂げた。一般的だったカラー空中写真にかわり、最も重要な基礎資料としてカラー赤外線空中写真が利用されるようになった。地理情報システムを利用することによって、情報はすべてデジタル化され、コンピュータ上で地図が作製されるようになった。本論では、最新の地図作製方法とその応用について紹介するとともに、我が国における生物空間地図を生かした生物多様性保全のあり方について検討した。


一ノ瀬友博 (2000) 兵庫県立淡路景観園芸学校実習林における越冬期の鳥相. 景観園芸研究 1, 3-6.

兵庫県北淡町に1999年4月に新設された兵庫県立淡路景観園芸学校は、附属の実習林を有している。実習林は淡路景観園芸学校から北に約1700mに位置しており(北淡町堂原)、これまで農用林として利用されていたものが、地権者の好意により淡路景観園芸学校に寄贈されたものである。管理が行われなくなって既に20年近くが経過しているといわれ、林内では常緑化が進行している。今後この樹林を淡路景観園芸学校の実習林としてどのように利用していくのかを考慮するにあたっては、実習林の現状を把握して、今後の利用及び管理計画を策定しなければならない。筆者は、長年植生管理が行われなくなっている実習林において、特に鳥類の分布と植生管理の関係に着目して、調査研究を行う予定である。本研究は、その一連の調査研究の第一段階として鳥類の分布状況の把握を試みたもので、その結果を報告する。しかし、本来の研究目的が実習林全体の鳥相を余すことなく記述することではないので、実習林全域で出現する鳥類種を明らかにすることはできなかったが、実習林で越冬期に一般的に出現する鳥類を明らかにすることができたと考えている。


一ノ瀬友博 (1999) 都市近郊の農村地域の樹林地における鳥類の分布に影響を及ぼす諸要因について. 農村計画論文集 1, 259-264.

東京近郊の狭山丘陵と武蔵野台地上の樹林地11カ所において,鳥類の分布とそれに影響を及ぼす要因について検討した。鳥類調査は,1995年の越冬期にそれぞれの樹林地で3回ずつ行った。出現した鳥類の種数と樹林地の面積の間には有意な関係が見られなかった。それぞれの樹林地は,TWINSPANによって,3つのグループに分類された。一つのグループには大規模な樹林地である狭山湖周辺の樹林地と最も規模の大きい孤立樹林地が分類された。残りの2つの樹林地のグループの間には,樹林地が農耕地と接している境界の割合に有意な違いが見られ,隣接する土地利用が樹林内の鳥類の種組成に影響を及ぼしていることが明らかになった。


一ノ瀬友博 (1999) ドイツにみる自然と共存するまちづくりとその日本への展開. 生活衛生 43, 165-175.

これからのまちづくりや地域づくりを考えていく上で、「人と自然の共存」は避けて通ることのできない重要な課題である。自然と共存するまちづくりにおいて先進的なドイツでは、生物空間 (Biotop)という生物の生息する空間の単位を基盤として、生物多様性の保全を行っている。その基礎となるのが、生物空間の保護・再生・創造の3つの考え方である。ある地域にどのような生物空間が存在し、それが生物にとってどのような価値を持っているのかを評価するために、生物空間調査が行われ、その成果が生物空間地図としてまとめられる。その上で、どのような生物空間の保護・再生・創造をどこで行うかを、広域的な生物空間計画において明らかにする。近年では、個々の生物空間の保全を行うだけではなく、いくつかの生物空間の間の生物の移動を保証することによって、地域全体の生物多様性を保全しようとする生物空間結合システムという考え方も提唱されている。後半では、ドイツで実際に行われた生物空間保全の事例をいくつか紹介し、最後に日本における「自然と共存するまちづくり」について論じた。


一ノ瀬友博・加藤和弘 (1999) 武蔵野台地および狭山丘陵の樹林地における鳥類の分布と植生の種組成の関係について. ランドスケープ研究 62, 577-580.

樹林地内部の植生の種組成が鳥類の分布にどのような影響を及ぼしているか明らかにするために、武蔵野台地および狭山丘陵に位置する比較的規模の大きな樹林地において、鳥類の分布と植生の種組成の対応関係を調査した。それぞれの樹林地に植生の異なる複数の調査地点を設定し、1994年の繁殖期に鳥類の個体数調査を行った。その鳥類調査地点内に方形区を設定し植生を調査した。調査結果から、樹林性の種の中には、ヤブサメやメジロのように常緑樹林への遷移が進行している二次林を特に好む種があることが明らかになった。また、林床植生の貧弱な二次林には、草地や疎林の環境に現れる鳥類が侵入することが示された。


武内和彦・一ノ瀬友博 (1999) 二次自然域における生物相の保護と創造. 201-211.「ランドスケープ体系第5巻 ランドスケープ・エコロジー」(日本造園学会編)、技報堂.

自然保護行政の発展に伴って、わが国でも原生自然を保護する施策だけでなく、広く国土に広がる人為的な影響を受けた自然、すなわち二次自然の保全施策が展開されるようになってきた。とりわけ、1994年11月に策定された環境基本計画では、自然と人の共生の確保が唱われ、二次自然域においても生物の多様性を確保する必要性が明示されるようになっている。ところが、そのような二次自然に生息してきた野生生物が、農業基盤整備や新都市開発によって、急速に減少している。このような二次自然における生物相の保全を考える際には、単に自然を保護する施策にとどまらず、積極的に自然を再生し、しかも二次自然としての特質が維持されるような人為による持続的な管理システムの確立を図っていく必要がある。ドイツで発生し、その後ヨーロッパ各国のみならず日本でも発展しつつあるビオトープ創造の考え方は、基本的には、こうした二次自然域における生物相の再生と管理を目的としたものである。ここでは、ビオトープの考え方を概略し、つぎに生物相の分布把握のための手法を鳥類を事例に検討し、さらに地域の生態系再生のためのビオトープ結合システムのあり方について提案した。


Ichinose, T. and Katoh, K. (1998) Factors influencing bird distribution among isolated woodlots on a heterogeneous landscape in Saitama Pref., Japan. Ekologia (Bratislava) 17, 298-310.

鳥類の分布に影響を及ぼす環境要因を明らかにするために関東地方の所沢市の都市近郊における孤立樹林地20ヶ所において、鳥類群集調査を行った。その結果、出現した鳥類の個体数、集数ともに最も大きな影響を及ぼす環境要因は孤立樹林地の面積であることが明らかになった。越冬期の鳥類の種組成を多変量解析であるTWINSPANを用いて分析したところ、孤立樹林地は4つのグループに分類された。すなわち、核となる樹林地、核となる樹林地を取り巻く樹林地、孤立しておりかつ規模の小さな樹林地、孤立しているがある程度規模はある樹林地であった。正準判別分析によって、これらの分類に影響を及ぼしている環境要因を分析した結果、樹林地の孤立の程度と内部の植生構造が重要であることが明らかになった。これらの結果を踏まえて、鳥類の保全を行うためには、明らかになった環境要因の管理が必要であることを指摘した。


Ichinose, T. and Katoh, K. (1998) A Procedure of Compositional Data Analysis for Land Use Planning. 422-429. In "Urban Ecology", Breuste, J., Feldmann, H. and Uhlmann, O. (Eds.), Springer-Verlag, Berlin.

生態的な分析は、環境アセスメントや計画に欠かすことができない。生態的な分析に基づいてこそ、我々は対象地の生態的状況を把握できるし、それを改善するためにどのように環境要因をコントロールしたらよいのかを知ることができる。ある地域に分布する生物相を分析する手法の中では、多変量解析が一般的であり、近年その活用が増加している。本稿では、そのような生物分布要因を明らかにするための多変量解析の活用について紹介する。さらに、実際に埼玉県所沢市におけるケーススタディを用いて、その有効性について検討する。


武内和彦・一ノ瀬友博 (1997) 成熟社会における国土計画の新しい理念. 94-102.「緑地環境科学」(井手久登編)、朝倉書店、東京.

近年、環境の保全、特に身近な自然の保全が社会的な関心事となり、生物多様性やビオトープ、アメニティといった専門用語が、新聞紙上でも盛んに見かけられるようになった。さらに、かつては都市部に限られていた環境をめぐる議論が、今では広く国土全体を対象に展開されるようになっている。”生き物と共存できる快適で豊かな環境の創出”は、国土の将来を語るキーワードの一つといっても過言ではないだろう。しかし、環境保全という行為が、日本の自然の特性を活かしたものとなるには、人にやさしい自然の保全や創出とともに、非日常的な災害の未然防止といった側面を持つ必要がある。特に、国土全般といった大スケールの環境を対象とした場合には、自然環境や快適な今日住環境の保全・創出と、防災上の配慮とがうまくバランスされた計画が必須となる。


一ノ瀬友博・Stefan Hotes (1997) ドイツにみる生態的ネットワークを生かした国づくり. 科学 67, 772-778.

近年、生態的ネットワークを用いた生物多様性の保全が注目を浴びている。それは、個々の生息地をつなぐことによって生物の移動を確保し、絶滅の危険性を少なくしようとするものである。本稿では、生態的ネットワークを支える保全生物学上の理論と自然保護上の背景、いくつかの先進的な事例を検討し、その有効性を議論した。


加藤和弘・一ノ瀬友博・大久保悟 (1997) 都市近郊におけるコナラ林の組成および構造について. ランドスケープ研究 60, 539-542.

埼玉県所沢市西部に点在するコナラ高木林40地点で植生の組成と構造を調査し、今後の植生管理のあり方を考察した。全体に高木層ではコナラ、亜高木層ではエゴノキが広く優占しており、コナラは亜高木層以下にはほとんど見られなかった。コナラ林はやがてシラカシ林へ遷移するといわれている通り、低木層以下にはシラカシの個体が多く見られた。但し、ヒノキなどの常緑針葉樹もシラカシ同様多くの個体が見られたほか、亜高木や高木の個体もあった。これらのヒノキが、シラカシと競争しつつ今後の植生を構成する可能性は否定できず、管理のあり方によっては、従来になかったような組成をもった林分となることもあり得ることが示唆された。


一ノ瀬友博 (1996) 狭山丘陵における人工巣を用いた被捕食実験. 保全生態学研究 1, 49-60.

都市近郊に残存する樹林地において、ダミーの卵を入れた人工巣を設置して卵が捕食される状況を調査し、樹林地における捕食圧の空間的なパターンを明らかにすることを試みた。調査は、東京都と埼玉県の境に位置する狭山丘陵の比較的大規模な樹林地とその周辺の孤立樹林地5カ所の計6カ所で行った。樹林地では、周囲から侵入してくる捕食者によって、林縁付近においては被捕食率が高くなることが予測されたが、林縁からの距離と被捕食率の間には統計的に有意な相関は認められなかった。また、面積の小さな樹林地では被捕食率が高いことが予測されたが、比較的大規模な樹林地でもっとも被捕食率が高く、その他の孤立樹林地と有意な差を示した。最も面積の小さい樹林地で捕食率は最低であった。生息密度の高さからハシブトガラスが主な巣の捕食者であると考えられるが、ハシブトガラスの密度は狭山丘陵の樹林地で最も高く、またハシブトガラスは樹林地周辺に限らず樹林地内部でも多数観察された。このことから、鳥類の巣における捕食は、主な捕食者の樹林地内外の分布状況によって大きな影響を受けていることが示唆される。


一ノ瀬友博・加藤和弘 (1996) 埼玉県所沢市の孤立樹林地における越冬期の鳥類分布と植生構造との関係について. ランドスケープ研究 59, 73-76.

孤立樹林地内部の植生構造が鳥類の分布にどのような影響を及ぼしているかを明らかにするために、埼玉県所沢市の比較的面積の大きな孤立樹林地において鳥類の分布と植生構造の対応関係を調査した。樹林地を植生によっていくつかの林分に分け、それぞれの林分において点センサス法による鳥類群集調査を行った。既往の研究の多くは鳥類の繁殖期に調査を行っているが、本研究では越冬期に調査を行った。植生構造は各階層の植物体量と胸高断面積によって把握した。その結果、越冬期においても鳥類の種数は植物体量と有意な相関が見られた。鳥類の分布は、全階層の植物体量と低木・草本層の植物体量、枯れ木の胸高断面積と関係があることがわかった。


一ノ瀬友博・永石文明 (1995) 越冬期の狭山丘陵における鳥類標識調査. 日本鳥類標識協会誌 10, 76-87.

1995年11月から1996年4月にかけて、狭山丘陵の比較的面積の大きな樹林地と2つの孤立樹林地(鳩峰公園・八国山緑地)において、鳥類標識調査を行った。その結果、合計376羽を捕獲し、環境庁の番号入り金属足環と捕獲地点を示す色足環1個を装着した。コゲラ、ヒヨドリ、ルリビタキ、シロハラ、ウグイス、ヤマガラ、シジュウカラ、メジロ、アオジは15個体以上捕獲された。比較的大規模な樹林地では、シロハラ、ヤマガラ、メジロが孤立樹林地よりも多く捕獲され、シジュウカラとアオジは孤立樹林地の方が捕獲数が多かった。1日あたりの捕獲数は1月に最も多かった。これは、この時期に越冬していた個体数が多かったためか、狭山丘陵の樹林地の管理されていない場所で低木層に一般的にみられるヒサカキの果実が、多くの鳥類のこの時期の主要な食物となっているためであると考えられる。
 長距離の移動(300m以上)はヤマガラとエナガで数例確認された。特に、エナガ1羽は孤立樹林地からもう一方の孤立樹林地への移動が確認された。
 標識された376羽のうち60羽が同じ捕獲地点で再捕獲された。再捕獲率が高かった種は、ウグイス、シロハラ、ルリビタキで、これらはすべて主に低木層を利用する種である。一方で、捕獲数が多かったにもかかわらず、シジュウカラとメジロの再捕獲率は低かった。この結果から、越冬期においてはウグイス、シロハラ、ルリビタキは、限られた場所に定着しており、シジュウカラとメジロは樹林内を移動していると考えられる。


一ノ瀬友博・加藤和弘 (1995) 広域的な環境整備のための生物相の分析方法に関する研究. ランドスケープ研究 58, 117-120.

生物群集に配慮した環境整備のためには、生物相を広域的に分析し、保全のための指針を作成することが必要である。本研究ではそのための方法を提案する。生物群集の分布のメッシュデータを群集生態学的な観点から多変量解析し、分布に影響を及ぼしている環境要因を識別し、生物群集にとって主要な生息地を抽出する。その結果を用いることによって、保全上重要な地域を指摘できる。この方法の実効性を埼玉県所沢市の鳥類分布のメッシュデータを用いて検証した。同市域の鳥類にとって繁殖期・越冬期ともに樹林地が主要な生息地であり、狭山丘陵のみならず市北部に残存する平地二次林が生息地として重要であることが示された。


一ノ瀬友博・加藤和弘 (1994) 埼玉県所沢市の孤立樹林地における鳥類群集の分布に影響を及ぼす諸要因について. 造園雑誌 57, 235-240.

孤立した樹林地において鳥類群集を調査し、その分布に影響を与えている要因を検討した。埼玉県所沢市西部の1ha 程度またほそれ以上の樹林地20ヶ所を対象とした。鳥類群集調査は、越冬期の1993年の1〜2月と繁殖期の同5〜6月に行った。樹林地やその周辺の土地利用は空中写真より読み取った。分析の結果、鳥類群集に最も強く影響を与えている要因は、樹林地の面積であることが確認された。さらに、 TWINSPAN によって樹林地と鳥類を分類し、鳥類出現パターン模式図を作成した。樹林地は4つのタイプに分類された。樹林地のタイプごとの鳥類群集について分析するとともに、鳥類群集の生息に配慮した樹林地の管理について検討した。


加藤和弘・一ノ瀬友博 (1993) 動物群集保全を意図した環境評価のための視点. 環境情報科学 22(4), 62-71.

生物群集の保全や回復のための計画や施策の対象となる空間には、大きく2つのスケールが考えられる。一つは、生態的に(ほぼ)均一な空間的まとまりである。現時点までに行われた生物群集の保全と回復のための試みは、ほとんどがこの空間スケールで行われている。もう一つ、生態的に異なった様々なタイプの空間(ランドスケープ・エレメント)を含む、より広範囲な空間(地域、ランドスケープ)を対象とし、個々の生息地の質の向上のみならずそれらの配置や組合せを工夫して、全体としての生態的な質の向上も図るというありかたもある。こちらについては、欧米諸国では検討が進みつつあるもののわが国においては今の所十分には議論がなされておらず、従って地域レベルの環境計画等にもこのスケールでの生物群集保全の考え方は反映されていない。そこで、本論文では、生態的に異なった様々なタイプの空間を含むより広範囲な空間(地域)を対象とした、生物群集の保全と回復について考察を行い、議論の体系化とそれに基づく指針の提示を試みた。


一ノ瀬友博・加藤和弘 (1993) 都市及び農村地域における鳥類の分布と土地利用の関係について. 造園雑誌 56, 349-354.

本研究は、埼玉県狭山市において、鳥類と土地利用の分布を比較し、鳥類の分布を規定している要因を検討したものである。その結果、鳥類は樹林型、水辺型、中間型の3つのグループに分けられ、樹林型と水辺型の鳥類の種数は、その生息地の面積比の増加とともに増えることがわかった。中間型の鳥類は、いくつかの空間要素にまたがって生息していることが示唆された。また、鳥類の分布からみた狭山市の空間区分を行い、鳥類保全の視点からの生態環境管理計画の可能性について検討した。