ビールのページ


 ドイツは、ベルギーやオランダと並んでビールがおいしいことで有名です。ミュンヘンでは、9月の下旬から10月にかけて、オクトーバーフェストという世界最大のビール祭りが開かれます。ドイツ人にとって、ビールは日本人にとってのお茶と同じように欠くことのできないものです。ドイツ国内には、千を越える醸造所があるそうです。しかし、オランダやベルギーと違ってあまり大きな会社がないので、日本にはそれほど輸入されていないようです。ここでは、そのドイツのビールについて紹介しようと思います。

 私が住んでいたフライジングには何と世界最古のビール醸造所があるのです。私もここに来るまでは知らなかったのですが、上のWeihenstephanというビールは、創業1040年の世界最古の醸造所であるということを売り物にしています。もちろんビールの歴史は紀元前何千年にもさかのぼるのですが、醸造所として歴史的に確認できてかつ現存するものとしては最も古いものだそうです。このWeihenstephanのビールについては、'97〜'98年版地球の歩き方ドイツでも1ページをさいて紹介しています(p.209)。現在はこの醸造所は州立となって、ミュンヘン工科大学農学部の敷地に隣接してあります。

 以下に紹介するビールは、私がドイツに来てから飲んでみたものの一部です。いまのところは、ドイツ国内のものだけに限っています。いくつか独断と偏見でカテゴリーをつくって紹介しようと思います。


私のお気に入りベスト3

第1位

 このErdingerが今のところ私がもっとも気に入っているビールです。ここのWeissbierは格別です。あまりドイツ国内でも知られていないWeihenstephanとは対照的に、Erdingerはドイツの各地で飲むことができます。ちなみに、Weissbier(白ビール)とは小麦の入ったビールで、日本で一般的に飲まれるラガー(ドイツではPilsとよばれる)と比べると、炭酸がきつくなくて、さっぱりしています。日本ではたぶんつくられていないと思います。ちなみに、この会社は専らWeissbierだけを専門につくっているようです。

第2位

 やっぱり地元のWeihenstephan。これはWeihenstephanの中でもOriginalと呼ばれている定番のラガーです。ドイツのラガーは日本のに比べるとコクがあるような気がします。

 たいていの醸造所にはビアホールが隣接してあるのですが、もちろんWeihenstephanにもあります。地球の歩き方には、フライジングの駅よりバスで行くと紹介されていますが、歩いても15分ぐらいです。もし、ミュンヘンを訪ねる折りには、是非世界最古のビール工場まで足を延ばしてください。

第3位

 私は、特にWeissbierが好きなのですが、このOberdorferはなかなかいけます。このOberdorferは独特の形の瓶に入っていて少し他のビールより高めですが、多少お金をかける価値はあります。

 ちなみに、ドイツのビールには「何とかer」というビールが多いのですが、そのerの前に付いているのはたいてい地名です。つまり、このOberdorferというビールは、Oberdorfというところの地ビールということです。


ドイツのビール事情1

 始めにも書いたように、ドイツ人にとってビールは非常に大切な飲み物です。よって、当然ドイツ国内ではビールは安く買えます。ドイツでは、500mlの瓶が一般的なのですが、中身が1マルク、保証金が0.2マルクといったところが相場です。つまり、70〜80円ぐらいで一本飲めることになります。安売りをしているものですと、一本0.6マルクぐらいからあります。ビールが結構高い日本と比べるとまるで夢のようです。この値段の差は、もちろん消費量やまた原料の価格にもよるのでしょうが、税金の制度によるものもあります。日本では、ビールは価格の約半分が税金ですが、ドイツでは付加価値税(日本でいう消費税、ただし内税)の7%しかかかっていません。でも、もし倍にしても150円ぐらいですから、それでも安いのですが。


家内のお気に入りベスト3

第1位

 私がさっぱり系のビールが好きなのに対して、家内はねっとりコクが強いビールが好みです。その家内が第1位に選ぶのは、このWeltenburger KlosterのBarock-Dunkel、ねっとりした舌触りの黒ビールです。これはいわゆる修道院ビールです。ヨーロッパでは数多くの修道院でビールが造られていたようですが、このWeltenburgの修道院は醸造所を持つ修道院としては、その中でも最古だと銘打っています。その創業は1050年です。

第2位

 これはその名も、ルートビッヒ王の黒ビールというビールです。このルートビッヒ王という名前は適当につけられているわけではなくて、何と王家の末裔が経営しているビール会社から発売されているそうです。実に由緒正しいビールというわけです。この黒ビールもWeltenburgerに負けず劣らず、ねっとりとしたビールです。どうも私は、後味が残りすぎてこの手のビールは苦手なのですが。

第3位

 家内があげたのは、最後まで黒ビールでした。これは、ミュンヘンの南約100キロぐらいに位置するEttalというところの修道院ビールです。村民総出の劇や壁絵で有名なOberammagauのすぐ近くにあります。バイエルン州内にはあちこちに修道院が現在もありますが、その多くで独自のビールが造られています。そしてそれらの多くが昔からつくられていた黒ビールなのです。


ドイツビール事情2

 ドイツのレストランでは食事の注文をする前に、飲み物の注文をしておいて、それからゆっくりと食べるものを選ぶようになっています。よって、テーブルにつくとたいていすぐに"Zum Trinken?"(何をお飲みになりますか?)と聞かれるのですが、その時しばしばメニューを持ってきてくれません。日本人はメニューを見て注文することに慣れているので、最初は戸惑ってしまうのですが、こちらの人はたいていもう好みの飲み物が(というか好みのビールが)決まっていて、"Pils"(いわゆるラガービール)とか"Hefeweizen"(白ビールをこのようにも呼びます)とか注文します。だからメニューを持ってきて欲しいと頼んでも、ないこともしばしば。ところで気になる値段ですが、通常一杯が5マルクです。一杯は500mlであることが普通ですが、北部の方ではよく300mlの小さいグラスもあります(その分少し安いのですが)。ドイツのレストランは、外にメニューを掲示する義務があるのですが、そのお店が高いのか安いのかを見極めるには、このビールの値段が結構頼りになります。普通のラガービールが5マルクでしたら普通でしょう。それ以上でしたら結構高級な店か、それとも観光客相手の店です。大学の近くにある学生相手のレストランなどでは、3.5マルクというところもあります。いずれにしても、ドイツのレストランではたいていその土地のビールを飲めるので、食事の際には是非試してみたいものです。


今まで飲んだかわりものビール

第1位

 これは変わっています。それもそのはず、何しろ麻からつくったビールだそうです。ハノーバーの近くの友達の実家に行ったときに見付けました。有機農業など環境にやさしい農業のお祭りをしているところで見付けました。でも、味の方は、何となく薬臭いような感じでいまいちでした。まあ、このビールはドイツだからというものでもないんでしょうが。

第2位

 これは最近近くのスーパーで見つけました。下の方に書いてあるように、ビールとコーラを混ぜたものです。ドイツ人は意外に色々な飲み物を混ぜるのが好きなようですが、これはレストランでも見たことがありませんでした。日本でも比較的なじみのあるKarlsbergから出ています。味の方はというと、どうもコーラの匂いにビールの風味が消されてしまっていて、うーんいまいちという感じでした。

第3位

 ビールとレモネードを1対1で混ぜたRadler。でも実はこのRadlerはドイツではかわりものではないのです。大きなビール会社ではたいていこれを出していますし、またたいていのレストランでは飲むことができます。Radlerとは自転車に乗る人という意味で、 あるビアガーデンで夏のある日にあまりにビールが売れすぎてビールが無くなりそうになって困った店の主人が、ビールを節約するために編み出したとか、夏に自転車で遠くまで行った人が一休みの時にビールを飲んでしまうと帰れなくなってしまうけど、でもやっぱりビールを飲みたくてつくられたとか色々な逸話があります。軽くてアルコールも低いので車の運転がある人、アルコールに弱い人には最適。でも、そういう人に限らず夏にはドイツ人みんなが楽しんでいます。


ドイツビール事情3

 ドイツには、大きくわけて3種類のビールがあります。つまり、「ラガービール系」「黒ビール系」「白ビール系」です。ラガービール系では、定番のPilsあるいはPilsnerとあっさりしているHellesあるいはExport、さらにはホップが利いて苦味が強いBockなどがあります。黒ビール系では、通常のDunkels以外には、たぶんホップが強いものなのだと思いますがDoppelbockと名前がついたものもあります。白ビールには、通常のHefeweizenbierあるいはHefeweissbier以外には、白ビール独特の濁りがないKristalweizenや白ビールでありながら濃い茶色であるDunkelsもあります。これ以外にも、例えばケルンで有名なKoelschbierやバンベルクのRauchbierなど、たくさんのビールの種類があるそうです。最近では、日本でも話題になったアイスビールも見られます。私は、ビールの醸造については何も知らないので、これらがどのような分類が本来なされるべきなのか知りません。もし、詳しい方がいらっしゃいましたら、是非教えてください。


季節ものベスト3

第1位

 日本でもそうですか、ドイツにもある季節限定のビールがいくつかあります。特に、ビール祭りがあちこちで催される8月から9月には、Festbier(その名も祭りビール)といわれる季節限定ビールが発売されます。これは、WeihenstephanのFestbierです。たいていのものはPilsnerのようですが、普通の時期に販売しているものより、コクがあるような気がしました。秋にドイツを訪れる方は、是非Festbierを試してみてください。

第2位

 これもビール祭りの時期に発売されるビールですが、これは世界最大のビール祭りであるOktoberfest用のビールです。ミュンヘンの大きなビール会社の一つであるPaulanerのラベルです。バイエルンのビアホールのウエイトレスのおばさん(お姉さん?)一度にいくつものジョッキを運ぶことで有名ですが、このラベルにはその様子がかわいらしく書いてあります。

第3位

 これはクリスマス限定ビールの一つです。クリスマスの時期にも各社から限定ビールが出されます。これは、ニュルンベルクのもので、有名なニュルンベルクのクリスマス市にちなんだものです。寒くてもやっぱりドイツ人はビールを飲むんですね。


ドイツビール事情4

 ドイツ人はたくさんビールを飲むという話を先にもかきましたが、普段はあまり量は飲みません。日本人のいわゆる飲み会の方がきっとたくさん消費していることでしょう。普通の食事の際には、だいたい1杯、飲んでも2杯です。その1杯を食前、食中、さらには食後にわけて飲んでいます。つまり、食後のデザートの時もコーヒーなどを注文せずに、ビールを飲みながらケーキを食べている人もいます。本当に日本のお茶のようなもので、よく平日の昼食時にも彼らはビールを飲みます。その後にまた仕事をするのも普通のことのようです。パーティなどで結構な量のアルコールを飲むときには、ビールではなくてワインになってしまうのが通常のようです。要は、ビールはあまりお酒と思われていないようです。そのドイツ人が大量にビールを飲むのはビール祭りの時期です。8月から9月にかけては南ドイツのあちこちでビール祭りが開かれるのですが、そのビール祭りでは、1リットルのジョッキが普通の大きさです。彼らはそのジョッキを何倍も飲み干していきます。日本のビールに比べて少しアルコール度数も高いので、私たちは2杯でもかなり酔います。まあ、酔って飲めなくなるというよりは、おなかも一杯になってしまうのですが。でも、初めてビール祭りを訪れる人は飲み過ぎには注意してくださいね。


番外編

 去年一時帰国したときに、何と実家の近くのアルコール類のディスカウントストアで、先程紹介したOberdorferを見付けました。日本でWeissbierが売られているのを見たのは初めてでした。早速買ってみて試したところ、味はまさにOberdorferそのものでした。日本でWeissbierがのめるとは思わなかったので感動ものでした。しかし、お値段の方は何と540円。遠いドイツから輸入するといっても、実に5倍ぐらいです。これではいつものビールというわけにはいきそうにありません。でも、もしどこかで見掛けたら是非試してみてください。ドイツを旅行したことがある人には懐かしい味かも。