2000年度淡路棚田研究会活動報告
(これは、淡路景観園芸学校の学校報ALPHA2000に掲載されたものです。)


一ノ瀬友博・山野浩嗣

淡路棚田研究会について
 淡路棚田研究会は、淡路島を中心とした兵庫県内の農村地域に特徴的に見られる棚田景観について総合的に明らかにするために、1999年6月に淡路景観園芸学校教員が中心となって発足した。淡路景観園芸学校には、様々な専門分野を持つ多彩な顔ぶれの教員がいるので、棚田といった学際的な研究対象は、実にふさわしい研究対象であろうということで有志が集まった。
 1999年度の終わりには、教員の他にも景観園芸専門課程学生、兵庫県職員などを加え、合計15名で研究活動を始めた。研究会の代表には、斉藤庸平氏が就任し、事務局は一ノ瀬友博が努めることとなった。
 淡路棚田研究会では、棚田研究にアプローチする切り口として、以下に挙げる5つの研究グループを組織することとなった。(括弧内はグループ責任者、敬称略)
 生物グループ(岩崎寛)
 景観・観光グループ(山本聡)
 技術・計画グループ(斉藤庸平)
 社会・歴史グループ(望月昭)
 地図作成グループ(一ノ瀬友博)
主に、研究活動は上記のグループごとに進めていくこととした。また、具体的な研究対象地を津名郡北淡町周辺に設定した。

2000年度の研究活動
 2000年度に入って、新たに景観園芸専門課程の2期生やその他の新メンバーを加え、総勢27名の大所帯となって活動を始めた。2000年度のメンバーは以下の通りである。
斉藤庸平(代表) 姫路工業大学/淡路景観園芸学校
一ノ瀬友博(事務局)(姫路工業大学/淡路景観園芸学校)
望月昭(姫路工業大学/淡路景観園芸学校)
山本聡(姫路工業大学/淡路景観園芸学校)
沈悦(姫路工業大学/淡路景観園芸学校)
岩崎寛(姫路工業大学/淡路景観園芸学校)
森田年則(淡路景観園芸学校)
Sheauchi Cheng(Unversity of Calfornia, Berkeley/淡路景観園芸学校)
浅田増美(淡路景観園芸学校)
松村俊和(兵庫県洲本農林水産事務所)
井澤宏美(兵庫県洲本土木事務所)
三瓶由紀(兵庫県洲本土木事務所)
荒美紀子(淡路景観園芸学校)
宇高美佐子(淡路景観園芸学校)
河原田愛(淡路景観園芸学校)
鳥飼寛子(淡路景観園芸学校)
山本祥子(淡路景観園芸学校)
荻本真由(淡路景観園芸学校)
小森ひとみ(淡路景観園芸学校)
新田佳代(淡路景観園芸学校)
羽生田朋子(淡路景観園芸学校)
原恭子(淡路景観園芸学校)
藤田八千穂(淡路景観園芸学校)
山野浩嗣(淡路景観園芸学校)
吉田さくら(淡路景観園芸学校)
 各グループごとに進めてきた研究成果は、関係学会や景観園芸学校紀要(景観園芸研究)などの場で発表を行った。研究成果リストは以下の通りである。
浅田増美 (2000) ため池台帳から見た淡路島北淡町のため池の実態. 平成12年度日本造園学会関西支部大会プログラム研究発表要旨, 47-48.
松村俊和 (2000) 淡路島北淡町におけるため池の植生. 平成12年度日本造園学会関西支部大会プログラム研究発表要旨, 49-50.
森田年則 (2000) 淡路島北淡町の農村地域のため池におけるトンボ類. 平成12年度日本造園学会関西支部大会プログラム研究発表要旨, 51-52.
Cheng, S., Asada, M. and Ichinose, T. (in press) Topography and the Tazu system of Awajiユs Rainwater Storage Pond (Tameike) - a comparison study of the farming social structure in Hokudan-cho and Mihara-cho, Hyogo Prefecture. Landscape Planning and Horticulture 2.
森田年則・山野浩嗣・山本祥子・一ノ瀬友博 (印刷中) 淡路島北淡町の農村地域のため池におけるトンボ相の特徴. 景観園芸研究 2.
なお、まだ成果の公開を行っていないが、2000年度には岩崎寛氏がため池周辺の微気象について調査を行い、一ノ瀬友博・浅田増美氏・S. Cheng氏のグループがため池の水質についての調査を行っている。

棚田勉強会について
 2000年度から加入した景観園芸専門課程学生の提案により、新たに勉強会を始めることとなった。このような勉強会を始めることになったきっかけは、棚田を対象とした研究といっても、学生にとってはどのようにアプローチして良いか難しく、研究よりも前にまず棚田についてもっと知りたい、という希望があがってきたからである。当初は月に2回、後に月に1回、通常の授業が終わった後の午後6時から景観園芸学校の会議室で行うこととした。毎回2名の発表者がそれぞれ独自のテーマに沿ってまとめた資料を紹介し、その内容について参加者全員で議論を行った。議論が白熱して9時過ぎまで勉強会が終わらないときも多々あった。棚田勉強会の開催日時と発表者、テーマは以下の通りである。

2000年
第1回(7月4日)
新田佳代 「湿地のビオトープ教室」
吉田さくら「農業の多面的機能について」
第2回(7月11日)
山本祥子 「北淡町の棚田等について」
宇高美佐子「棚田における体験学習について」
第3回(9月12日)
鳥飼寛子 「中山間地域直接支払制度について」
河原田愛 「イネ Oryza sativaについて」
第4回(9月26日)
荒美紀子 「国営明石海峡公園 神戸地区 棚田ゾーンにおける棚田復元・保全事業について」
原恭子  「お米の勉強会」
第5回(10月24日)
山野浩嗣 「来年のトンボ調査にむけて」
藤田八千穂「農の美学」
第6回(11月14日)
羽生田朋子「農村の魅力」
荒美紀子 「棚田保全活動をしている団体について」
第7回(12月12日)
新田佳代 「農に学ぶ景観」
河原田愛 「農業の将来を明るくするために」
2001年
第8回(1月9日)
鳥飼寛子 「農業の新しい担い手」
山本祥子 「淡路島の棚田」
第九回(2月13日)
Sheauchi Cheng メThe Tazu system and its impact on farming social structure in Awajiモ
山野浩嗣 「淡路夢舞台近辺について」
第10回(3月21日)
原恭子  「圃場整備あれこれ」
藤田八千穂「田毎の月」

研究会の今後の活動
 1999年度は研究の準備や対象地設定などで具体的な研究成果を出すには至らなかったが、2000年度には研究成果を関係学会などで公開することができるようになった。今後も研究活動を活発に続け、学会等で成果の発表を続けていく予定である。また、いわゆる研究活動だけではなく、棚田保全などの実践的な活動についても積極的に展開していきたいと考えている。
 また、棚田勉強会は2001年度も同様に月に1回開催していくことが決まった。それぞれの研究グループは独自に活動を行っているので、この勉強会は良い情報交換の場にもなっている。
多角的に活動を展開するためにも、さらに多くの方々の参加を期待したいと考えている。
 最後に、この淡路棚田研究会の活動は淡路景観園芸学校のメンバー以外の皆さん、さらには北淡町や三原町の地域の皆さんのご支援、ご協力の下に成り立っている。この場をお借りして、深くお礼を申し上げたい。