2002年度淡路棚田研究会活動報告
(これは、淡路景観園芸学校の学校報ALPHA2002に掲載されたものです。)
一ノ瀬友博
1.大きな2つの成果
2002年度で4年目を迎えた淡路棚田研究会であるが、今年度は大きな成果を上げた年となった。まず、4月の農村計画学会春期大会で、研究会メンバーである三井氏をはじめとしたポスター発表が農村計画学会ポスター賞を受賞した。この研究発表自体は、1年次後期の景観計画演習と景観園芸技術演習の成果として作成されたものであるが、共同研究者全員が研究会メンバーであり、なおかつ研究テーマも洲本市内の農村地域のため池のトンボ相についてであった。今年度の農村計画学会ポスター賞は、3点選出されたが、三井氏をはじめとしたポスターは常勤の研究者と肩を並べての堂々の受賞であった。
2つ目の大きな成果は、研究会発足以来初めて研究助成を受けたことである。これまでは個々に教員が研究助成を受けて研究を続けてきたが、研究会として助成を受けたのは初めてである。研究テーマは、「淡路島の農村地域のため池群における生物多様性保全に関する研究」で、日本自然保護協会と自然保護助成基金で実施されているPro Natura Fund 研究助成を受けることとなった。研究会内に、「淡路棚田研究会生物多様性研究グループ」というものを設定し、筆者が代表者となり申請した。本研究助成は、2002年10月に始まり、2003年9月までである。2003年12月には東京で成果報告会が開かれる。
2.2002年度の活動
2002年度の研究会の活動内容は以下の通りである。
2002.5.2 第1回棚田研究会
共同研究対象地の選定
2002.6.11 第2回棚田研究会
「ニホンアカガエルの非繁殖期における空間利用について〜神奈川県内の谷戸を事例として〜」
発表者 片野準也
2002.7.31 ため池合同調査
北淡町黒谷地域における合同調査
調査参加者 一ノ瀬友博、岩崎寛、藤原道郎、森田年則、片岡美和、石田真奈美、I Gusti A.A.Rai Asmiwyati、三井雄一郎、伊藤休一、前田敦子、片野準也、水門輝美
2002.8.21〜2002.9.12
棚田研究会バリ島調査
調査参加者 一ノ瀬友博、Nurhayati H. S. Arifin、片岡美和、松村俊和、片野準也
2002.10.21 第3回棚田研究会
「写真集による棚田の景観構造分析」
発表者 大澤由紀子(東京農業大学)
2002.11.22 第4回棚田研究会 バリ島調査合同報告会
「Introduction and the traditional culture at the terraced rice paddy field of Belimbing village, Bali, Indonesia」 I Gusti A.A.Rai Asmiwyati
「バリ島の棚田を見て」 片野準也
「バリ島の棚田周辺の鳥類」 片岡美和
「バリ島の棚田の植生」 松村俊和
「バリ島・ロンボク島の棚田」 一ノ瀬友博
2003.1.21 第5回棚田研究会 ProNaturaファンド共同研究の経過報告
発表者 一ノ瀬友博、藤原道郎、岩崎寛、松村俊和、片野準也
2003.3.18 第6回棚田研究会 ProNaturaファンド共同研究の経過報告
発表者 一ノ瀬友博、藤原道郎、岩崎寛、浅田増美、片野準也
3.2002年度の研究成果
・論文
一ノ瀬友博・森田年則 (2002) 兵庫県北淡町の農村地域のため池におけるトン ボ類の分布とそれを規定する要因について. ランドスケープ研究 65, 501-506.
松村俊和 (2002) 整備方法の違いが水田畦畔法面植生に与える影響. ランドスケープ研究 65,595-598.
山野浩嗣・片岡美和・一ノ瀬友博・美濃伸之・平田富士男 (2002) 兵庫県北淡 町の小規模ため池におけるトンボ類の分布と環境要因の関係について. 農村計 画学会誌 21(別冊), 25-30.
一ノ瀬友博・Arfin, N. H. S.・片野準也・片岡美和・松村俊和・Asmiwyati, I. G. A. A. R.(投稿中)インドネシアバリ島の棚田と水利システムに関する基礎調査. 景観園芸研究 4.
松村俊和・一ノ瀬友博・Arfin, N. H. S.・片岡美和・片野準也・Asmiwyati, I. G. A. A. R.(投稿中)インドネシアバリ島における水田周辺の植生. 景観園芸研究 4.
岩崎寛・三井雄一郎・一ノ瀬友博 (投稿中) ため池周縁部に生息するクズ Pueraria lobata Ohwi の光合成特性. 景観園芸研究 4.
・学会発表
山野浩嗣・一ノ瀬友博・平田富士男 (2002) 兵庫県北淡町における小規模ため 池の環境とトンボ生態の関係について. 農村計画学会学術研究発表会要旨集 (2002.4), 7-8.
三井雄一郎・伊藤休一・美濃伸之・一ノ瀬友博・斎藤庸平 (2002) 農村地域に おける土地利用分布に着目した生物生息環境の評価手法. 農村計画学会学術研 究発表会要旨集(2002.4), 11-12.
←農村計画学会ポスター賞受賞
一ノ瀬友博 (2002) ため池が卓越する農村地域における動物相. 平成14年度日 本造園学会シンポジウム・分科会講演集, 94-95.
Fujihara, M. and Kikuchi, T. (2002) Changes in the landscape structure in the Nagara River Basin. Proceedings of the VIIth International Congress of Ecology. p.46(Seoul, Korea).
Fujihara M., Hara, K., Da, L., Yang, Y. and Qin, X. (2003) Landscape structure in a hilly agricultural area, Zehjiang Province, China. Proceedings of International Symposium on Environment, Culture and Information in Asia, 112p.
岩崎寛・三井雄一郎・一ノ瀬友博 (2003.3) ため池周縁部に生息するクズの光 合成特性と推移の関係. 第50回日本生態学会大会, つくば国際会議場, 茨城県 .
三井雄一郎・岩崎寛・藤原道郎 (2003.3)ため池における環境要因の違いが植物相に与える影響−兵庫県津名郡北淡町の事例−,日本生態学会第50回日本生態学会大会,つくば国際会議場,茨城県.
藤原道郎・原慶太郎・達良俊・楊永川・秦祥抻 (2003.3) 中国浙江省の農村域における二次林の林分構造. 第50回日本生態学会大会,つくば国際会議場.
・雑文
一ノ瀬友博 (2002) 淡路景観園芸学校における中山間地域研究. 公園緑地 63, 43-47.
一ノ瀬友博 (2003) 農村計画における生物多様性保全の必要性とその研究動向 . 農村計画学会誌 21, 388.
・講演、その他
山本聡(2002.7.13)棚田交流人育成事業現地研修会講師,「棚田の意義、役割について」,財団法人ひょうご農村活性化公社,兵庫県日高町山宮.
一ノ瀬友博 (2002.7.19) 淡路島の地域資産の再発見パネルディスカッションコーディネータ. 自然環境ゼミナール公開セミナー, 淡路景観園芸学校, 兵庫県.
山本聡(2002.7.19) 淡路島の地域資産の再発見パネルディスカッションパネラー,自然環境ゼミナール公開セミナー「淡路島の農村景観の特徴」, 淡路景観園芸学校, 兵庫県.
Ichinose, T. (2002.9.16) Rural landscape in Awaji Island, Japan. ボゴール農科大学大学院農学研究科特別講義, Indonesia.