国際環境論   第7回、第8回             1998年11月30日
「国際環境」の理論(3)
・アジア的価値の発信 アジアの目覚しい経済発展と経済危機
  欧米的価値の普遍性への反発
   アジア的民主・人権の主張・・シンガポール、マレーシア、中国からの発信
   アジア的市場経済の主張・・国際投機筋への規制強化
                中国の資本取引規制、マハティールの投機規制 
  開かれた地域主義
  経済発展の開放性・・貿易・投資の自由化、多国間協力
           APEC,AFTA、EAEC、ASEM
 ASEAN Way
  ASEAN・・1967年8月8日に創設
    タイ、マレーシア、フィリピン、インドネシア、シンガポール
     ベトナム戦争に対する反共組織として創設
  コンセンサス重視主義
   多様性の中の共存
    サバ州をめぐるフィリピン・マレーシア対立
   弱者の連合
    域外大国との等距離外交
     1971年の東南アジア平和・自由・中立地帯(ZOPFAN)構想
     1974−75年のマレーシア、タイ、フィリピンの対中国交正常化
     1973年の対日合成ゴム交渉での勝利
   政治的役割
    安全保障への積極的関与
     東南アジア友好協力条約・・開かれた地域主義でインドシナへ対応
     カンボジア紛争への調停・・ヘンサムリン政権の事実上承認の国際化
        建設的エンゲージメントへの発展・・ミャンマーへの干渉
      東南アジア大共同体へ・・カンボジア以外の大連合


・ 「国際環境」の視角(1)
アジアの経済
 低開発国からの出発
  植民地経済・・農業、モノカルチャー
         一人当たりGNPは100ドルから出発
  冷戦の熱戦化・・国家分裂
           インドシナ戦争―>ベトナム戦争
           国共内戦、朝鮮戦争
                発展の玉突き現象・・経済発展の構造連鎖
   第1段階・・雁行型発展の構造連鎖
    日本―>アジアNIES−>ASEAN−>中国・インドシナ、インド
    30年の10%成長
          日本の供給力と吸収力
     アジアの輸出志向型工業化・・労働集約+輸出
     円高とドル安
   第2段階・・東アジアの自律発展メカニズム
         域内の貿易、投資が域内発展を促進するまでに拡大・40%を超える
          日本の資金・技術に依存しない体質の強化
          中国の目覚しい経済発展・・1兆ドルGDP
          韓国の先進国入り・・6000億ドル
          2020年にはG8の半分以上はアジアが占拠
     主役の交代・・日本から中国・華人ネットワークへ
            日本は先頭の引っ張る機関車、中国は押し上げる後方機関車
             東南アジア・・李嘉誠、サリム、郭など華人財閥
   成長神話の解体?・・危機の構造連鎖・・危機の玉突き現象
    バブル(虚)が弾ける・・通貨下落をきっかけに株式、不動産市場の崩落
    実態経済も急落・・マイナス成長
    政経不可分の再確認・・タイVSインドネシア 
    崩落の構造連鎖・・「雁行型」崩落
     日本がカナメ・・430億ドル出せたのは日本だけ
             アジア通貨基金ができるのか・・宮沢構想
    タイ・バーツの下落―>ASEAN−>韓国、香港―>中国、台湾?
    通貨危機―>バブル破裂―>実体経済の破綻・・軒並みマイナス成長へ
    危機は韓国、香港、中国にも波及
     香港・・「繁栄と安定」の「一国両制」がすでに動揺
    台湾・・東アジア通貨危機の影響を受けるが堅調
         98年第1・4半期の成長率は97年の6・8%から5・9%へ
           96年は5・7%、98年の見通しは6・02%
  将来展望・・危機克服の要因のファクターとアクターは存在する
  アジア経済は構造連鎖・・発展も後退も玉突き現象にならざるをえない
                しかし長期的な成長のファンダメンタルズはあるはず
                 グルーグマンも成長持続を楽観
                 発展を促進した要因はそのまま
                     資本蓄積と高成長の原動力は存続
                      若い労働年齢
                      高い貯蓄率
                   相互依存関係の深化
                  域内貿易依存度は40%から60%へ
                         域内投資依存度はすでに50%
  問題その1・・安全保障と国内政治の安定
  問題その2・・日本の役割
          経済立て直し(市場開放・規制緩和)がカギ
   日本依存のアジア経済・・円安が新たなアジア経済の危機を
               アジア向け融資は97年6月で2714億ドル
    逃げ足速い日本金融・・40%(1995年)から97年6月末に34・3%
               12月末には30・1%へ
               香港からすでに半分引き上げ
     しかし依然として圧倒的であり、またアジア支援に公的資金協力は430億ドル
   問題その3・・中華経済圏
      逃げ足速い華人資本・・1996年から対中投資は激減(日米の投資激増)
     反華人傾向の顕在化・・インドネシアからの脱出―>経済危機
       香港・・1国2制はすでに後退傾向へ
      経済面で顕著・・ペッグ制は風前の灯火(日系企業は78%が維持に悲観的)
     両岸関係・・政治経済の構造連鎖
  問題その4・・最大のカギは中国経済に              
       中国・・デフレ経済化
          優等生の中国?
           経済安定への強力な意思とリーダーシップ
           香港でのペッグ(7・8香港ドル)死守に成功・・バブル弾ける
          危機構造を共有する中国経済
                 マクロの軟着陸、ミクロのデフレ、香港がダブルパンチ
                   「一つの確保」・・経済成長率8%、
                                             小売物価上昇率3%以下の抑制
                    人民元切り下げず・・すでに不透明
              8%成長はおぼつかない・・高速成長が前提の
                                                      「自転車操業」
               アジア経済危機の影響
                          対外依存の経済・・11%、12%、13%、40%、50%
             改革・開放の未解決問題の深刻化・・
                                            3年以内の解決を目指すが?
              金融体制改革・・不良債権の処理
               不良債権はGDPの35%、あるいは5、6%
              国有企業改革・・経済活性化、社会安定、政治支持
                      株式制導入、2400万の「下崗」
             改革20年の結果としての歪み 
              格差拡大・・貧困のユートピアー>「紅眼病」
               5百人の17億円資産VS
                                 年収9千元の農民5千万人、
                                 年収2万5千元の3千万都市住民 
               地域格差・・8600元収入の広東VS3600元の甘粛
               都市・農村格差・・78年2・4:1−85年1・7:1
                        97年の2・7:1
               漢族・少数民族格差・・頻発する少数民族の抵抗
              環境問題・・呼吸器疾病率は35%
              エネルギー問題・・石炭依存脱皮は天然ガス・石油枯渇
              食糧問題・・当面は大丈夫、2010年には?


国際環境論  第9回                   1998年12月7日
国際環境の視角(2)
アジアの政治
 政治とは何か・・国民国家の政治に限定しておこう
    政治の範囲――国家、国家に関連した舞台(国際政治)
    政治の目的――国家統一、国民統合の確立・維持
    政治の機能――外敵の防衛(国防)、国内治安、公共調整(経済発展、社会福祉)
    政治体制―――政治の目的と機能を果たす仕組み
 政治体制とは何か・・統治の仕組み
   経済体制・・市場経済――――私有財産権に立脚した分業システム
         自由な競争原理―>「神の見えざる手」
                  社会主義経済――公有財産権に立脚した分業システム
                                計画統制―>人間至上主義
  政治体制・・政治運営の仕組み
    国民国家の統合を維持するために政権が社会内で広範な服従を確保、
      安定的支配を持続する制度や政治組織の総体
   支配階級やパワーエリートを支える社会制度や政治文化の全体
   政治体制の構成要素    
      (1)体制を支える正統性原理
          マックス・ウェーバーの3類型・・カリスマ支配
                                          伝統支配
                                           合法支配
       (2)政治エリートとその補充システム
            政党制・・一党独裁
                    一党優位
                      多極共存
     (3)物理的強制力・・軍隊と警察の統帥権
    (4)国民の意思表出と政策形成にかかわる制度と機構
            凝集力の象徴・・毛沢東思想、主体思想、ブミプトラ、ゴルカル
    (5)政治システムもしくは国家による社会の編成化の仕組み
        国民の権利保障、中央・地方関係、産業、労働、政治社会化の仕組
                 剰余の確保で体制維持・・徴税、徴兵
   政治体制の類型化・・全体主義―権威主義―自由民主主義
        全体主義の6点症候群
      唯一の公認イデオロギー
      一人指導に収斂する単一の大衆政党
      秘密警察の恐怖支配
        コミュニケーション手段の独占
       武装力の独占
      経済にたいする中央の統制と管理
        自由民主主義(ロバート・ダール、Dahl)
       自由(多元化)・・さまざまな異論の自由
          民主(包括的参加)・・決定への最大多数の参加
        制度化・・・・憲法、選挙法、弾劾制、3権分立
       選挙と政権交替・・手続きの民主主義
                        政治権力をめぐる平和的、公正で自由選挙
                      複数政党制
      権威主義:全体主義と自由民主主義のグレーゾーン(ホアン・リンツ)
       制限多元主義・・・反対集団の排除、ただし全面的ではない
          メンタリティー・・イデオロギーではなく、曖昧な感情
        アパシー・・・・・・・・低い動員、脱政治化
        権力行使の予測可能性・・現実主義的な指導者と複数の政治          
                           利益集団の存在
  アジアの政治変容
  アジアのglobalization,regionalization, nationalization
      アジア地域の地域化・・国民国家を単位としたregionalization
     日本、タイを除けば、アジアはなお新興国民国家群
         統合基盤は国民国家・・インドネシア、インド、マレーシア、フィリピン、
                   ミャンマー、シンガポール
         統合・統一を目指す国民国家・・中国、朝鮮半島
  経済危機の政治コスト、政治危機の経済コスト
   東アジアにおける経済発展の構造連鎖・・成長ミラクルとそのメルト・ダウン?
    成長の玉突き現象・・国内政治の安定が保証
     開発独裁・・一元的統治で国家主導型開発
    危機の玉突き現象・・国内政治に波及 
  (1)経済危機の政治コスト――>政治危機の経済コスト
     インドネシア・・スハルト退陣とゴルカル権威主義体制の危機
      7選直後の暴動で退陣――ハビビ暫定政権
      33年のゴルカル軍部主導政権の腐敗
      1200ドルから400ドルへ国民所得の急落
     マレーシア・・マハティールの焦燥とプミプトラ権威主義体制の危機
      81年以来のマハティールのUNMO(統一マレー国民会議)体制の分裂
      後継アンワル副首相の逮捕
      IMF拒否の経済再建・・マイナス7%成長へ
     北朝鮮・・経済破綻と金日成全体主義の継承危機
      250億ドルから90億ドルへのGDP急減
      推戴による声無しの権力継承
     中国・・曲がり角の経済と 小平権威主義体制の危機
         改革・開放20年の成果とツケ・・国有企業、格差拡大
         経済多元化と矛盾する政治一元化・・村民委の直接選挙?  
  (2)政治危機克服による経済危機への取り組み・・経済発展と政治発展の連動
       経済成長による政治民主化によって危機に対応
     台湾経験  ・・経済発展と政治民主化(1986−)
             民主化で危機を回避
     韓国ケース ・・オリンピックと大統領直接選挙制へ(1987)
             野党大統領による経済再建への強力なリーダーシップ
     タイ型民主化・・国王調停による軍事政権の退場(1992)
             民主憲法下でIMFスキームの実施
     フィリピンケース・・マルコス政権打倒の軍民(米国)共闘(1986)
  政治と経済の構造連鎖?
   1人当たりGDP2000ドルで政治民主化?
    市場経済・・自由な共同原理による利益集団の多元化
          一元的政治では対応できない
          異なる利益集約機能の必要・・複数政党制
           政治の民主化・・包括的参加と異論の自由
                   公開性と説明可能性
    期待上昇革命・・政治変動
     経済発展(実績)と社会的動員(期待)のキャップ・・社会的挫折感
      社会的動員 ・・都市化、メディア接触・コミュニケーション・教育普及
              態度・価値観・期待の変化
      経済発展  ・・生活向上――>権利意識(環境保全・悪化)
      社会的挫折感・・生活向上――期待実現へのアクセスなし
     社会的挫折感と社会・経済的移動のギャップ・・政治参加
      移動・・都市への移動、階層移動
      参加・・政策決定への関与
     政治参加と政治制度化のギャップ・・政治的不安定
      制度化・・全体主義――権威主義――自由民主主義
           国民参加の手続き保証