「インベーダー」(著作「ゲーム少年の夢」より一部抜粋)


(序章より)

コンピューターゲームは私の青春だった。

私がコンピューターを専攻し、人工知能を研究するためにアメリカに渡り、
博士号を取ると言う道を歩く事になったきっかけは何を隠そう
「インベーダーゲーム」なのである。少年時代からゲームが好きだった私は、
大学二年生の時に大流行したインベーダーゲームのとりこになり、
想像を絶する量の時間とお金をつぎ込んだ。

やがて私は、こんな面白いインベーダーゲームの中身はどうなっているのだろう、
と興味を持ち始めた。これが私にとってコンピュータ科学との出会いになる。

(第三章より)

ルールは至極簡単。
インベーダーの群れが爆弾を落としながら空からゆっくり降りてくる。
それを左右に動く基地から対空砲を撃って一匹ずつ退治する。
基地が敵の爆弾に三回当たるか、
インベーダーが地上を降りて来てしまうとゲームオーバーになる。
インベーダーを全部やっつけるとめでたく1面終了で、
2面に進むことができる。2面は1面と同じだが、
インベーダーの群れが1面より低いところからスタートするので、
急いでやっつけなければならない。
また、たまにUFOが「ひよひよひよ」と音を立てて飛来するが、
これを撃ち落とすと50点から300のボーナスポイントがもらえる。
◇
私が友人にインベーダーゲームの「名人」と呼ばれるようになるまでは
長くはかからなかった。と言うより、私はブームになる前から
熱中していたので、私が「名人」と呼ばれるようになった頃から
インベーダーゲームがブームになった、と言うほうが正しい。
◇
「300点UFO」という技があった。UFOを撃ち落とすと50、100、
150、300点のいずれかがボーナス点としてもらえる。
これらのボーナスポイントは一見ランダムに決定しているように思えるが、
実は規則性がある。
◇
ゲームを開始してから何発目の弾で撃ち落としたかによって、
ボーナスポイントはけっていしているのである。であるから、
きちんと撃った弾の数を数えながらUFOが出てくるのを待てば、
常にボーナスポイントを300点にすることができる。
たしか、7発目、22発目、37発目、52発目、67発目が
300点であったと記憶している。
この技はタネを明かしてしまえば簡単なので、
後に広く一般に知れ渡り、誰でも駆使するようになったが、
初めは「神技」と呼ばれたものだった。
◇
インベーダーブームも後半になると、これらの隠し芸の種も
すっかり知れ渡り、「レインボー」や「化石」ぐらいでは
誰も驚かなくなってしまった。そこで私は、手を使わずに
足でプレイするという大技を開発した。
足だけで、普通の人が手を使って出す点と同じくらいの
点が出せるようになり、私のまわりにいつも大勢のギャラリーが
集まるようになった。