SFC 清水唯一朗研究室

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研究関係
2019年9月30日
公務員の人事管理、専門性(9月28日)


 働き方改革が叫ばれるなか、公務員、とりわけ中央官僚の超過勤務、キャリア形成について注目が高まってきました。
 そんななか、9月28日、慶應義塾大学産業研究所が主宰するHRM(Human Resource Management)研究会のウィークエンド・セミナー「公務員のHRM(Human Resource Management:民間企業と比較して)」 にお招きいただきました。西村先生(成蹊大)による身分保障の議論、増尾さん(人事院)による人事部局の詳説、今井さん(内閣府)による幹部公務員の人材育成、泉澤さん(浦安市)による地方公務員のHRMのお話に続いて、私からは公務員人事政策の歴史的形成についてお話しさせていただきました。
 会には主宰の八代充史先生(慶應・商)、ファウンダーの佐野陽子先生(同名誉教授)など、企業の人事管理の専門家がずらり。佐野先生からコメントのあった「公務」の範囲の議論は、さすがと感じました。
 https://www.sanken.keio.ac.jp/behaviour/HRM/
  
 私自身は、官僚の専門性と2年異動ルールの形成に重点を置いて論じました。公務員研修では、必ず「みなさんの専門性は何でしょうか」と伺います。公務員のみなさんが謙虚なこともあり、多くの方が「専門性はない」「政策を実現するための方法」といった回答をされます。もちろん、後者は専門性といえるものでしょう。しかし、それだけでよいのでしょうか。
 ジェネラリストを育成するという2年ルールの意義は後付けです。これは小熊英二さんの『日本社会の仕組み』(講談社現代新書、2019年)をお手伝いするなかでよくわかりました。この点については別稿にまとめようと思いますが、現状、政治主導の確立による代表性の強化に対しうる専門性の研鑽が必要だと感じています。
 今の学生は公共政策学をしっかりと学び、これから出会っていく政策課題を体系的に考える道具を持っています。団塊ジュニア世代が学んだ政治学とは大きく様相が変わりました。40代と20代のあいだにも大きな知的ギャップが生じています。このギャップは何を引き起こすのでしょうか。昭和初期の人事停滞が革新官僚を生んだのは、官僚となることに魅力があったからでしょう。現状では、もっと恐ろしいことが起こるように危惧します。