学部内専門基礎科目  1995年度春学期  火曜4限   

意思決定論

印南一路  (総合政策学部)

[主題と目標]

 個人的な問題から国際関係に至るまで、総ての事象は個人、グループ、グルー プ間の意思決定の結果・過程として分析できる。今日の一日の行動予定を決め るのは個人の意思決定の問題であり、会社の経営方針・戦略の策定は組織(グ ループ)の意思決定であり、また国連の安保理事会における経済制裁の決定は 国家間の意思決定(合意形成)である。これらは問題解決・選択・交渉・合意 形成などのさまざまな形をとっていても、またグループ、組織、政党、国家、 国際機関などのさまざまな主体によってなされていても、究極的にはすべて個 人の判断と選択を基礎にしている。
 本講義では最も基本的な個人単独レベルでの意思決定に焦点をあてる。まず 人間の情報処理(認識、記憶、判断、学習など)には、人間特有の限界と癖が あることを、コンピューターと比較しながら明らかにする。また、論理的完結 システムである統計理論と比べて、人間の判断・予測・選択がどう異なるかを 観察する。続いて、これらを克服し効果的な意思決定に至るための実践的なテ クニック・方策を諸分野から選び整理・検討する。最後にグループ・組織以上 のレベルでの意思決定(問題解決・交渉を含む)を扱う。

[授業・評価の方法]

 授業は講義に加え、原則として毎回エクササイズ、クラス討論などを行う。 したがって、毎回授業に出席することが前提になる。理解を深め学習進度の確 認を行うため、2回(予定)のレポート提出を課する。レポート課題の内容・ 形式・提出・評価方法などについては、授業時に指示する。なお、基礎的な統 計理論は高校で履修済みであるとの前提で授業を進める。復習したい人のため に、授業中参考書を指示する。
 評価の約70%は学期末試験の点数で、残りの約30%はレポートの評価で 行う。下から15%程度は、機械的にDをつける。

[テキスト]

なし。随時講義ノートを配布する。

[参考書]

Judgment and Choice (2nd Ed.). Robin Hogarth. Wilely & Sons. $25.95
Decision Traps. J.Edward Russo & Paul Schomaker Fireside. $9.95

[授業計画]

第1回 4月11日
イントロダクション(全体概観)
第2回 4月18日
合理的意思決定と診断論的意思決定
第3回 4月25日
ばらつきと予測・判断
第4回 5月2日
記憶の再構築
第5回 5月9日
決定バイアス(1)
第6回 5月16日
決定バイアス(2)
第7回 5月23日
決定バイアス(3)
第8回 11月18日
決定バイアス(4) (第1回レポート提出)
第9回 6月6日
不合理なエスカレーション
第10回 6月13日
創造的問題解決
第11回 6月20日
学習・倫理  (第2回レポート提出)
第12回 6月27日
グループ意思決定(1)
第13回 7月1日(11日分補講)
グループ意思決定(2)
第14回 7月4日
学期末試験

[レポート出題例]

参考までにレポート課題を掲げる(あくまでも例)。

例1
第6回までの講義で触れた人間の認知限界・決定バイアスを示す 実例を、日常生活の中からいくつかあげ、なぜそれらが実例となるのか、具体 的に説明しなさい。(自作よりも、出典の明確なものを高く評価する。)

例2
 実際に自分で適当な問題を見つけ、講義で触れた方策・テクニッ クをそれぞれ試してみなさい。どの方法が最も効果的であったか、明確な理由 をつけて評価しなさい。

例3
 効果的な個人の意思決定を妨げる最大の要素は何か、授業で学 んだことを踏まえ、かつ自由に考え説明しなさい。

例4
 授業で学んだことが、自分の将来の意思決定において有用かど うか評価し説明しなさい。有用と思うのであれば「なぜ」を説明し、有用でな いと思うのであれば何が欠けていたかを指摘しなさい。(結論自体は評価の対 象外。何故かという理由説明が重要である。)



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