うーん、やっとできたか、というのがまず何よりも口に出る言葉です。思えば あの昨年7月のプレゼンテーションの後、『やるぞー』といった、異様な雰囲 気の中で原稿を夏休みに書いてもらい、本来ならば秋口にはすべて編集も終る はずだったのですが、いつの間にやら一年経ってしまいました。
やはり、私の力不足を痛感致します。特に秋口に巻頭言をお寄せ下さった田中 一昭さんには非常に申し訳なく思っております。ここにすべての編集委員を代 表して、深くお詫びする次第であります。
また、「いつ終るんだ」と常にプレッシャーをかけ続けて下さった草野先生、 どうもありがとうございました。ようやく終えることができました。 結局1年間、これに付きっきりでした。
そして、この素晴らしいLaTeXフォーマットを提供して下さった総合政策学部 4年の道下和良さんにも、深く感謝致します。このフォーマットのおかげで、 LaTeXと格闘する時間をかなり減らすことができました。
さて、報告書の内容の方ですが、これは「時間をかけただけあり」各班とも大 変良くできていると思います。少なくとも、皆さんが春学期の間格闘していた グループワークの成果は良く発揮されていると思います。 しかし、1年が経った現在では行政改革や規制緩和が進み、かなり状況は変化 してきています。かなりの分野で規制緩和が進んできています。情報公開も、 基本法がようやく国民の間で認知され、議論されるところまでこぎ着けました。
しかし、行政改革は、いまだ遅々として進んでいないのではないでしょうか。 毎年、国家公務員の定員は着実に減少してきています。一括採用などが議論さ れ、人事システムにもそろそろ本格的に手が入る時期に来ていると思います。 橋本首相の行革案も提示され、省庁の統廃合も議論されるようになってきまし た。
ただ、財政との絡みで考えると、必ずしも行革はうまくいっていないことは明
らかであります。現在国の借金はを特別会計を含めて320兆円を超え、300万円
近い借金が、国民一人一人の肩に重くのしかかっています。
これは誰の責任でしょうか。官僚? マスコミ? 政治家? それ
とも国民自身??
「日本」というものに対しての抜本的な改革が、現在求められているので
す。これは、誰もが納得するところです。しかしながら、現状では、総論賛成、
各論反対という、良くあるパターンに議論が歪められてしまっています。
「誰が責任を問うのだ」的な安易な敵作りに(例えば、官僚をバッシングなど)終
始することや、必要以上の規制緩和絶対論は、必ずしも好ましい議論とはいえ
ません。そのような責任おしつけ論は簡単ですが、規制緩和、行政改革という問題は、
それだけでは決して真の解答には
達しないのです。つまり、誰が悪いとかそういう問題ではなく、国民全体で
この問題を考えていくことが必要なのです。
これには、国民一人一人が「日本」というものと真剣に向き合うことが必要に
なりますし、これまで私たちにとって直視してこなかった数々の問題、たとえ
ば先に述べた財政や高齢化への対応などにも向き合わなくてはならないでしょ
う。
改革を遅々として進ませないための手段と しては良くないことですが、やはりどの規制は必要で、どの規制が不要で あるか、これを、21世紀に日本がどのような姿の国家でありたいのか、とい うこととリンクさせながら、国民全体で議論していくことが、肝要でしょう。 諸外国の良いところを取り、自国のシステムをより良くしていくという手法は 平仮名の導入に見られるように、昔から日本にとって、得意な分野であること を忘れてはならないと思います。
そのためにも、私たち「未来からの留学生」は、このような、難 しい問題にも正面から対決する、覚悟が必要なのです。私たちの世代は、幸運 にも、現在のまったく閉塞した状況を肌で感じることができたのです。この体 験を今後の研究に活かさない手はありません。
規制緩和や、行政改革など、このグループワークで扱った諸問題をクリアする
ことは、日本が21世紀に向けて行なわなければならない「進化」
なのです。この報告書で、皆さんがすこしでもこの「進化」に向
けての問題意識を醸成して頂ければ、私としてはこの上ない喜びです。
(15th July,1996)
日差しがまぶしい昼下がりの研究室にて
今こうして原稿を書きながら、プレゼンテーションから一年が経過したこ
とを実感しています。履修者の方々の多くにとってはSFCに入学して初めて
の大きなプレゼンテーションだったようで、準備段階から大変な熱の入れよう
でした。そんな皆様にどのようなお手伝いをできるか、私自身最初は見当が付
かず、ただうろたえるだけでした。結局最後までどれ程お力になれたかは疑問
ですが、少しでもお役に立てていれば幸いです。プレゼンテーションが終了し
た瞬間の充実感は筆舌に尽くしがたいものがありました。行政改革、規制緩和、
情報公開など自国の抱える様々な問題を自覚し、理解し、いかに対応(解決)
するかを自分なりに考える。その結果、総合的な判断力を養ったり、今まで見
えてこなかった新たな視点を習得する。〜〜草野厚教授の政治学の授業を通じ、
このようなプロセスの重要さと面白さを知る機会が与えられたことを感謝して
います。
そして草野厚教授のご支援のもとに始まった報告書作り。先生に幾度と
なくご心配をおかけしたことをお詫び申し上げます。この報告書は草野先生の
ご協力とご尽力なくしては実現しませんでした。深くお礼を申し上げます。ま
たお忙しい中寄稿して下さった田中さん、適切な助言を頂戴したTAの野本さ
ん、池田さん、本当に有り難うございました。そして編集作業のほとんどをそ
の統率力で進めて下さったSAの渋川君、本当にご苦労様でした。最後に、班
毎の地道な編集作業をして下さった履修者の皆様、お疲れ様でした。この報告
書が履修者の皆様、そしてお読みになる方々にとって有意義なものとなること
を願いつつ、筆を置かせて頂きます。
1996年6月18日
21歳になりたての日に
総合政策学部2年
住田知与