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電気事業法の一月改正について

 一般電気事業者とは発電、送電、配電を通産省が定めた区域内で一括して行ってい る事業者のことである。 現在、これには東京電力、関西電力、中部電力、九州電力 、東北電力、中国電力、北海道電力、北陸電力、沖縄電力の10社(規模の大きい順) がある。
 今までは一般電気事業者が電気事業以外の事業に参入することは、安定供給を妨げ る恐れがあることから逐一通産大臣の許可をとることが必要とされていた。しかし今 回の改正によって、一般電気事業者以外の事業者が電気事業(主に発電)に参入する ことが可能になり、利益の減少も見込まれる。また、一般電気事業者が既に保有して いる技術、ノウハウを多方面の事業に活用することが、効率的なエネルギー供給の発 展に役立てられるとも考えられることから、その規制(従来の許可制度)の撤廃が行 われる予定である。  特定電気供給事業とは、改正前の電気事業法の中で既に設けられていた電気事業の 一つである。通常、売電は一般電気事業者だけに許されているが、この特例というべ きものが特定電気供給事業者である。その内容は、余剰電力を抱えた企業などが、同 じ敷地内の建物に限って電気を供給することができるというものである。

 改正後の電気事業法の中で、特定電気供給事業とは別に新たに設けられたのが特定 電気事業である。もちろん既存の特定電気供給事業は存続することになる。この二つ は名前もその内容も大変似通っていてややこしいので、ここでは便宜上以前から存在 する特定電気供給事業を特電A、特定電気事業を特電Bと呼び変えて説明することに する。
 AとBは基本的に、一般電気事業者を通さずに電気の小売りを企業などに行う、と いう性格は同じものであるといえる。ただ、新しく生まれたBの特徴として、小売り の相手と密接な関係を持つ必要がない、という点が挙げられる。密接な関係とはこの 場合、親子会社の関係とか、同じ企業グループの系列であるとか、またはジャスコ相 模原店のように土地を貸し借りしてテナント関係にある、といった状態を指す。Bは このような関係を求められることなく、電気の小売りを行うことができるのである。 例えば、KEIOという企業が、近くに住んでいるという関係しかない遠藤地区の草野さ んに余剰電力を売ることもできるのだ。これは極端な例かもしれないが、Bの誕生に よって、一般電気事業者の電気より安い電器を買うことができる。消費者の幅が広が ったということができるだろう。
 このように、特定電気供給事業者や特定電気事業者が増えることは、競争原理から 電気料金の低下につながるといえるが、問題がないわけではない。というのは、今回 の改定をしても一般電気事業者は特定電気供給事業者や特定電気事業者にバックアッ プ供給を行わなければならないのである。これでは一般電気事業者がストックしてお かなければならない電気の量が増えるばかりだ。つまり、一般電気事業者は無駄な電 気を発電することになり、そしてこのことは必然的に彼らが設定する電気料金を押し 上げることになる。これでは今回の改定の目的である料金低下が、消費者が実感でき ないものになってしまう恐れがある。よって、まず一般電気事業者に課されているバ ックアップの供給義務をなくすなどの、もっと踏み切った規制の緩和が必要だと思わ れる。

 1月から、一般電気事業者の合理化努力を電気料金に反映させるという「ヤードステ ィック制」の導入が予定されている。これは、設備投資の圧縮など各電力会社の経営 効率化の努力を点数評価して3段階の「格付け」を実施し、経営見直しが進んでいな い会社には通産省が料金引き上げ申請の際に減額審査するという制度である。また、 格付けを公表することによって各社間の競争を促すという狙いもある。  今までの一般電気事業者は、過剰とも言える設備投資を行ってきた。しかし、その 背景には円高による多大な利益、設備会社との癒着などがあげられている。そのため に政府は、先にあげた「ヤードスティック制」などの導入で改善をはかろうともして いるがっているが、安全性をまったく疎かにすることはできないので、今後さらなる 議論を重ねていく必要があるだろう。



Atsushi Kusano
Thu May 8 15:35:48 JST 1997