これまで規制緩和反対論を見てきて,「なるほど確かにそうだな。 規制緩和は慎重に行わなければ。」と思われたかもしれない。 だが,これら反対論のほとんどが官僚・業界団体など既得権益を守りたい 側から出てくる,本音とは違う極めて意図的なものなのである。 特に「安全」「雇用」という言葉は,各省庁が規制緩和に反対する際の·ね·た となっているのが実情である。規制緩和反対論を読む時は,これらのことを 大幅にさっ引かなければならない。更に,インタビュ−した新聞記者さんが おっしゃっていたが,規制緩和報道は規制の全体像を捉えるのが難しいため一面的に なりやすいということもある。 また規制緩和反対論を公平に見たとしても,それに対する反論はやまほどある。
しかし,それでも規制緩和反対論の中には ある一定のコンセプトが含まれているはずだ。 それはひと言で言えば「·安·定」だろう。 世界がネットワ−クにつながれ,金と物と情報が激しく動き回る時代にあって, 社会は素早く激しく変化していかねばならない。その変化についていけないものに 対して「安定」を与えるものが規制であり,規制緩和反対論のコンセプトは 安定つまり現状維持というところにあるのではないか。
「やはりこの世がどんどん不確実になっていくわけですから・・・・ 公的権力が不確実性から起こるいろんな不安定性とか混乱というものを チェックせざるをえなくなるはずです・・・・。」(西部 邁)