公正取引委員会の見解を引用する前提として、酒類販売に対する公正取引委員会の
対応を見ておく。
1990年3月、ビール各社は経費の増加を理由に小売価格を20円値上げした。
4社(アサヒ、キリン、サッポロ、サントリー)横並びの値上げに対して、公正取引
委員会は、価格カルテルの疑いがあるとして調査を開始。そして同年10月、
公正取引委員会は、ビールの価格自由化を指導。ビール各社に「ビールの価格は
卸売店と小売店が自由におつけ下さい」という新聞広告を出すよう強制した。
1993年、アメリカのビールメーカーであるアンホイザー・ブッシュ社(世界
第1位)とキリンビール(世界第5位)が合弁会社を設立し、日本において輸入ビ
ールのナンバーワンブランドとなっていたバドワイザーの販売を始めるに当たり、
公正取引委員会はキリンビールの出資比率を10%に制限するなど、酒類業界における
競争制限的な傾向を持つ動きを封じ、競争を促進しようとする強い
姿勢を見せている。
公正取引委員会の存在意義は自由競争市場形成・維持の促進であり、
それを妨げる規制は基本的に廃止すべきであるという態度をとっている。
しかし、自由にも際限はあり、適正な競争の害となる不当廉売については警戒・
規制を行っている。ここでいう不当廉売とは、「正当な理由がないのに、商品または
役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給し、その他不当に商
品または役務を低い対価で供給し、他の事業者の事業活動を困難にさせる恐れがある
こと」をその定義とする。
以下に公正取引委員会の見解を記す。
「政府規制に伴う流通の非効率化の温存は、物流と同様に当該分野のコスト・
アップ要因となるだけでなく、輸入品を含むあらゆる商品の広範囲な普及を妨げ、
価格競争の広がりを妨げることにより、商品価格の一層の低下を抑制するものである
ことから、流通分野における特に競争制限効果を有する政府規制は、基本的に
廃止すべきである」
「現行の小売販売地域における距離基準等の需給調整的参入規制は、小売業間の
競争条件をゆがめ、消費者の利益を侵害する恐れがあるとともに、一方では、
消費者の購買行動の変化に伴い規制の実質的意味がなくなりつつあると
考えられる」
「この参入規制は元来酒税の徴税確保を目的としているが、酒はメーカー段階で
納税するいわゆる庫出税であり、
また酒税の国税収入に占める割合の低下の状況に鑑みた場合、
行う必要性はかなりの程度低下してきていると考えられる。従って、酒
類小売業における免許制については、競争政策の観点からは、その在り方について
抜本的に見直すべきであり、特に、需給調整要件は撤廃すべきである」