27773 返信 Re:人質バッシングは小泉謀略か? URL inti-sol 2004/05/13 22:44
小林哲夫さん

まずバッシングという言葉の定義を確認しておいた方が良いと思われます。この言葉は国語辞典には載っていませんでしたので、人によって使い方が大きく異なる可能性があります。
私が考えるバッシングの定義は、非対称な立場から相手を威圧攻撃するような言動です。非対称な立場、というのは要するに強い立場から弱い立場へということです。たとえば、マスコミは一介の個人よりはるかに強い立場にあります。内閣総理大臣もそうです。また、一介の個人であっても、顔と名前、住所電話番号などが世に知れ渡ってしまった人を、知れ渡っていない人が攻撃する場合、それは対等な立場ではありません。
当然のことながら、威圧というのは、具体的な行動によって初めて成立するものであって、何も言わないけれど実は不快感を持っているんだ、というようなものは、バッシングとは言えません。誰も人の心の中をのぞき見ることなどできないのですから、心の中で何を考えている、というようなことは問題になりません。

> 先ず江角バッシングの原因はマスコミよりは、民主党だと考えた方が良いと思います。

さて、上記のような私の定義に基づいていうと、江角マキコに対して、マスコミはバッシングをしましたけれど、「大衆」がバッシングをした、とは私には信じられません。またマスコミによるバッシングの原因が民主党にある、とも思えません。民主党菅代表が江角マキコの証人喚問を要求したとき、私の知る限りそれを応援する「民意」などほとんどなかったし、マスコミも、総じて民主党に批判的だったからです。

> マスコミというのはまことに卑怯な言論機関ですから、責任を問われるような書き方はしません。

まさにそのとおりなのですが、しかしそれは「産経が謀略を行ったのではない」という意味ではありません。まあ、謀略というほど秘密めいておらず、事態は公然と進行していますから、キャンペーンと言った方が良いでしょう。(この場合「マスコミ」という抽象的表現にはかなり問題があるように感じます。今回の件に限って言えば、自作自演キャンペーン報道を繰り返したのは、決してすべてのマスコミではないからです。)
むしろ、何ら具体的根拠がないにも関わらず、「自作自演」を臭わすような報道を執拗に繰り返すのは、それ自体、世論を誘導しようというあからさまな意志が感じられます。
そして、重要なことは、産経新聞の記事は明らかに公安筋のリーク情報に基づいている、ということです。石井英夫の産経抄などは、あっけらかんと明言しています。

これもどこかで見聞きしたことがある発想と言葉づかいではないか。これまた警視庁の過激派専門のベテラン捜査員によると、このロジックは日本のマルクス主義者が多用しているものだそうだ。なるほどとひざを打った。

こういうリークが「警視庁の過激派専門のベテラン捜査員」個人の判断で行われたものでしょうか?私はそうは思いません。小泉の謀略というとき、それは小泉が公的な場で発言して報じられた言葉だけを指している訳ではなく、公安警察を使って行った、この種のマスコミ操作も「謀略」の中に含まれます。

> 世論のバッシングの気持ちを理解しようとする努力がinti-solさんたち左翼に無いことです。

小林さんは↓のように書いておられます。

> 世論の尻馬に乗って、未納問題を声高に非難するような左翼にはなりたくないと考えます。

ということは、「世論の尻馬に乗って、未納問題を声高に非難するような左翼」は「世論のバッシングの気持ちを理解」しているし、そんな左翼にはなりたくないという小林さんの方がむしろ「世論のバッシングの気持ちを理解」していない、ということになります。

> Inti-solさんの周囲にバッシングに加わった人は居ないということですが、これはinti-solさんの人付き合いの狭さの欠点を自白しているだけで、それでは困ると言う自覚を持って欲しいのです。

ということは、人付き合いの広い小林さんの周囲には、バッシングに加わった人がいるのですか?
私はそんなに人付き合いの狭い方ではありません。ただ、日常生活では、この掲示板でしているような政治的な話はあまりしません。しかし今回はバッシングが本当に「民意の大勢」なのかどうか、私もちょっと気になって、職場で何人かの人に聞いてみたのです。
私の印象では、
3人の家族の言動に対して、多少批判的な人はいます。
しかし、もし自分が同じ立場だったら、多分同じことをするだろうと考え、だから彼等のことをあまりに悪し様には言えない。
だいたいにおいてそんな考えの人が多いように思います。

実際問題として、バッシングの具体的行動、インターネットでの掲示板荒らしや嫌がらせメール、嫌がらせ電話、脅迫状、そして彼等が帰国した際の空港での「抗議デモ」などに、どの程度の参加者がいたというのでしょうか。
少なくとも小林さんが「世論の暴走」として好んで取り上げる宣言の戦勝を祝う提灯行列に参加した人の数より、桁がいくつか少ないと思われますし、イラク反戦運動のもっとも盛り上がった頃のデモへの参加者(東京だけで5万人、同時に行われた全国の行動を合計すれば、おそらくその倍)と比べても、かなり少数でしょう。
確率から言って、私が身近でバッシングに参加した人に会ったことがないのも当たり前であろうと思います。

さて、3人が帰国した空港で「抗議デモ」を仕掛けた連中はどういう連中なのか、報じられているところによると、「ぬるぽ」などの、一般社会ではあまりお目にかからない特殊な用語を並べたプラカードが目立ったようです。つまり、彼等はネットの一部に巣くっている特異な集団であり(ま、「左翼」もまた一般社会の中で「特異な存在」と見られているでしょうけれど^^)、その意見は必ずしも世間一般の雰囲気を反映しているとは限りません。
「ネット世論」と実社会の「世論」の間には、しばしば大きな乖離がみられます。ネット上の発言は、個人の同定が難しいため、少人数でも多数の発言を装うことができるからです。たとえば、昨年の総選挙の際ヤフー・ジャパンと共同通信が共同で実施した支持政党調査が、当初民主党が6割を越える支持率を得たことから、民主党を嫌う一部のネット住民の攻撃にさらされ、保守新党の支持率が自民党の支持率を越えてしまう、という事件がありました。
現実の選挙では、もちろん泡沫政党保守新党の得票は自民党とは比較にならないほど少なかったし、民主党の得票も6割には遠く及ばなかったことはいうまでもありません。ネット上の「民意」は、かくも簡単に操作できてしまうのです。実際、多重投票を防ぐ手だてをしていない世論調査は、一人で10回でも100回でも、クリックした分だけ投票できてしまうし、IP可変のネット環境(99%の人がそういうネット環境にあると思われます)であれば、回線を切って入れなおせば多重投稿を防ぐ手だても役に立ちません。

思い返せば、2002年のワールドカップの際も、似たようなことがありました。ネット上では韓国に対すすさまじいばかりのバッシングが加熱していましたが、その後行われた世論調査を見る限り、これも一般社会の世論とはかけ離れていたようです。韓国対スペイン戦の審判をしたコスタリカ人の判定が不正だというので、在日コスタリカ政府観光局に抗議電話を殺到させた輩がいたようですが(コスタリカ政府観光局の日本語ホームページに、当時「多数のご意見をいただきました」というコメントが載りました)、これも現実社会の「世論」の動向とは無縁の出来事でした。
ネット上の「多数意見」から世論の多数意見を類推するのは危険なことです。


さて、話が変わりますが未納問題について

> 私は年金未納などは全然問題では無いと思います。
> いわんや役職辞任の必然など全然無いことです。
>
> だからこんな小さいことを大衆受けを狙って「未納3兄弟」などと問題にしたことが、喜劇の始まりです。

私の解釈は異なります。
江角マキコの未納問題などは、大したことはない。これは私もそう思います。この場合、問題なのは年金未納女優を起用した社会保険庁の馬鹿さ加減であって、起用された江角氏の問題ではない。従って、菅直人が江角マキコ証人喚問など主張し、自民党阿倍幹事長が損害賠償などに言及したことは、笑止千万だと私も思います。

政治家の未納問題は、いくつかの類型があります。
何ヶ月とか数年とかの未納期間のある議員は、「罪」という意味ではまったくたいしたことではない。
8年払っていなかったという福田前官房長官、国民年金義務化以降18年間一度も払っていなかった中川大臣は、ちょっと大したことはないとは言えませんが。
ただし、それは罪と罰という視点で見た場合です。政治家としての地位、役割を考慮に入れた場合、「政治家として許されるかどうか」は別の問題です。
今、年金制度の信頼性は大きく揺らいでいます。未納率は4割に迫る勢いです。その中で、年金「改革」法案が審議されている最中です。そのときに、国会議員が、閣僚が、こんなに年金を支払っていませんでした、というのは、批判されるに足る政治的ミスだと私は思います。
だって、あれを見て、年金保険料を支払いたいと思いますか?
思いませんよ。私も、民間企業にいたときは厚生年金、現在は公務員共済を源泉徴収で引かれ、拒否のしようもないけれど、そうでなかったら払いたくない気分になります。今後保険料未納率はさらに上昇するでしょう。

「年金制度反対、あんなものは解体せよ」という主張の議員ならば、それは正しい選択の望ましい結果でしょう。しかし、年金制度を守ろうという立場の議員であれば、それは自分の政治的主張を自分でぶち壊した無能な政治家である、と判断せざるを得ません。

自分も未納でありながら他者の未納を批判した菅直人の場合も、問題なのは未納ではなく、自分の未納を棚に上げて他人の未納批判に熱中した行為です。その菅直人の未納を批判して、自分も未納だった公明党の神崎・冬柴も同様です。