29554 | 返信 | Re:9月6日「百人斬り」裁判公判:その意味 | URL | 梶村太一郎 | 2004/09/20 00:08 | |
渡辺さま、 非常にご丁寧なご教示に感謝いたします。 勉強になりますので、保存しておきました。 ずいぶん前ですが、ドイツでの死者の名誉棄損の判例を調べたことがあり、それが頭に有ったことで間違ったようです。 名誉棄損については、戦後のドイツと日本では、どうやらかなり法的に違っているようです。「名誉棄損」についてはえらく込み入った広範な法的概念があるので、専門家でないと明確なことがわかりません。 > > 「親告罪」は刑事事件の場合ですね。梶村太一郎さんが書いた記事は読みました(^^; > その通りです。、ドイツ刑法では第185条以下、各種の名誉棄損罪が細かく分類されていますが、その最後の条に「死者」に関するものがあります。 死者の名誉棄損にあたる条項は簡単な以下の一条です。 刑法189条【死者の追憶の誹謗罪】 条文:「死者の追憶を誹謗した者は、二年以下の自由刑または罰金刑を科す」 Wer das Andenken eines Verstorbener verunglimpft,wird mit Freifeitsstrafe bis zu zwei Jahren oder Geldstrafe bestraft. ドイツでの死者の名誉棄損の争いはこの条項で行われるので、日本もそうだろうと思い込んでいたようです。で、親告罪だと書いてしまったのです。 つまり日本での学説: > 「エイズ・プライバシー訴訟第一審」判決についての『判例時報』1341号では、次のように3つの学説を解説しています。 > > (1)死者の人格権を認め、死者の名誉毀損そのものを不法行為として構成しようとする直接保護説 > (2)死者の人格権を認めず、死者の名誉毀損を遺族固有の人格権侵害と捉え、間接的に死者の人格的価値の保護を図ろうとする間接保護説 > (3)死者の人格権を認めつつ、その権利行使の規定の欠如から不法行為上の救済を否定して、間接保護説をとるもの > と比較すると、ドイツでは(2)に近い学説によるものと思われます。ドイツの法律辞典の解説には「憲法第1条1項の『人間の尊厳は不可侵である』からする名誉権の保護は基本的には生者だけに適応される云々・・・」とあります。間接保護説ですね。 そこで問題点: > それぞれの学説の問題点は、 > > (1)直接保護説に対しては、死後に権利能力の限定的存続を認める実定法上の根拠が明確でないことが難点 > (2)間接保護説に対しては、遺族の内心的・感情的利益が不法行為上独立して保護に値するか疑問 > の(2)の問題を解決するために「追憶・Andenken」という生者(遺族)の行為に対する犯罪としてあるのでしょう。 判例としてはハインリッヒ・ベルの死後に出された全集をある文芸評論家が専門誌でぼろくそに書いたところ、ベルの息子が訴えて勝訴したものがあります。つまり、この評論が「息子の父親への追憶を誹謗するもの」と判断されたのです。 |
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