30252 返信 Re:南京大虐殺の存在を否定する「論理もどき」のサンプル URL 五番街 2004/10/21 16:24
烏龍茶さんからgajiさんに対して的確ないくつもの反論が出されていますが、私からもひとこと。


>便衣兵になること自体、戦時下では犯罪的な行為なのではありませんか?(gajiさん)

このような主張はたびたび行われており、この主張があたかも正しいものとして受け止める者が多いようですが、正しくはありません。

まず、一般論として言えば、便衣兵は、都市攻防戦において一般市民が私服のまま敵軍を攻撃する場合と、兵士が私服を着用して敵軍を攻撃する場合の2種類があります。

前者の都市攻防戦において市民が私服のまま敵軍を攻撃するケースは、次にあげるハーグ法第2条において合法であると規定されています。

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【第二条】(群民兵)

 占領せられさる地方の人民にして、敵の接近するに当り、第一条に依りて編成を為すの遑なく、侵入軍隊に抗敵する為自ら兵器を操る者か公然兵器を携帯し、且戦争の法規慣例を遵守するときは、之を交戦者と認む。

ちなみに第1条は次のように述べています。

【第一条】(民兵と義勇兵)

 戦争の法規及権利義務は、単に之を軍に適用するのみならす、 左の条件を具備する民兵及義勇兵団にも亦之を適用す。
一. 部下の為に責任を負ふ者其の頭に在ること
二. 遠方より認識し得へき固著の特殊徽章を有すること
三. 公然兵器を携帯すること
四. 其の動作に付戦争の法規慣例を遵守すること
民兵又は義勇兵団を以て軍の全部又は一部を組織する国に在ては、之を軍の名称中に包含す。
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このように都市攻防戦では、第1条が適用されず、一般市民が私服を着用したまま、便衣兵となって敵軍を攻撃することが合法化されています。

一方では、同様に都市攻防戦において、後者の、私服を着用した兵士が敵軍を攻撃するケースに関してはハーグ法では規定がありませんが、彼らが上記に引用した、前者の便衣兵と、ウリ2つの存在であり、その敵軍あるいは一般市民に対する効果の点で全く相違はないため、犯罪視することはきわめて不合理です。

かりに後者の便衣兵が、規定外の存在であるという理由によって合法的存在ではないという主張を認めるとしても、前者の便衣兵が合法化されていることを考慮すれば、せいぜい微罪にしかなりません。

また、この2種類の便衣兵は、占領下におけるゲリラではありません。

南京事件に関する問題で、多くの研究者は南京の陥落を占領と同一視していますが、陥落は都市を攻撃する敵軍によって防衛軍が崩壊し、防衛能力が失われた状態を指し、一方の占領は、ハーグ法では次のように定義されます。

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【第四二条】(占領地域)

 一地方にして事実上敵軍の権力内に帰したるときは、占領せられたるものとす。占領は右権力を樹立したる且之を行使し得る地域を以て限とす。
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この定義からすれば、占領は、単に敵軍の攻撃によって防衛軍が崩壊した状態ではなく、敵軍による「権力の樹立」およびその「行使」が可能な状態であることが条件となっています。

したがって、南京の陥落後、南京内部で中国軍に対する掃討戦が行われている状態は占領状態ではありません。

こうした状態における便衣兵の存在を、占領下におけるゲリラと同一視することはできません。