| 30632 | 返信 | 『歴史の影――恥辱と贖罪の場所で』 | URL | 前田 朗 | 2004/11/06 16:57 | |
| 8月15日に出版された本ですが、見落としていて、最近入手しました。現代世界における戦争・虐殺・奴隷制、歴史と現在をめぐる記憶・責任・未来について考察するために重要な本です。 アーナ・パリス『歴史の影――恥辱と贖罪の場所で』(篠原ちえみ訳、社会評論社、2004年) 原著は Long Shadows: Truth, Lies and History,2000. <目次> 序章 打ちひしがれた国々への旅 記憶と第二次世界大戦 第1章 シーシュポスの石▼ドイツ 第2章 曇りガラスの向こうの真実▼フランス 第3章 歴史の抹消▼日本における虚偽と忘却 戦争、記憶、そして民族 第4章 奴隷制の影▼アメリカ 第5章 愛する国▼南アフリカにおける真実と和解 戦争、記憶、そしてアイデンティティ 第6章 ホロコーストは誰のものか? 第7章 ヨーロッパに再来した戦争▼ユーゴスラビアとボスニア 正義はどこに? 第8章 新しいジェノサイド、新しい裁判▼ニュルンベルクの遺産 最終章 記憶と忘却のあとで 訳者あとがき <著者紹介> アーナ・パリス(Erna Paris) カナダ・トロント生まれ。トロント大学、パリ・ソルボンヌ大学卒。1971年より執筆活動を開始。ジャーナリスト、書評、ブロードキャスターを経てノンフィクション作家に。著書に”The Garden and the Gun: Journey inside Israel”, “ Unhealed Wounds: France and the Klaus Barbie Affair” 他。 あとがきも含めて541ページの大著です。ちなみに定価は5600円+税。 著者はこれまでにイスラエル問題や、フランスのバルビー裁判についても本を書いているように、長期にわたってこの問題を追跡しています。そして、各章で取り上げた問題を調査するために各地を旅して、人に会ってインタビューし、歴史の現場に立ち、資料を収集しています。よくもこれだけ世界の問題を取り上げたなと感心してしまいます。内容を紹介することは到底できませんが、この主題について思索をめぐらそうとする人には必読書でしょう。 ちなみに、「私が本書をほとんど偶然的に書き始めるきっかけとなったのは一九九六年春の日本への旅であった。この旅は私の研究の目的で計画されたものではなかったが、日本に行くのなら二十世紀の歴史と想像力の源泉である広島と長崎を訪問することに決めた。・・・・/私はすぐに広島と長崎で見聞きしたことが、集団的記憶が形成される仕方、また、そのストーリーから排除されていると気づいた人たちはどうなるのかという、それまで私が長い間関心を持っていたこととぴったりと符合することに気づいた。」(10頁)とあります。 第3章では、靖国神社への訪問、南京事件、七三一部隊、東京裁判、広島への訪問、広島平和記念資料館、長崎への訪問、家永教科書訴訟などを描きながら、南京事件を記憶する試み、抹消し忘却させる試みについて紹介しています。戦争の悲劇を克服できないドイツ、フランス、日本の共通性と相違を探るのが著者の関心でしょう。 |
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