30896 返信 Re:アラファト議長は冥福を祈るけど URL 水原文人 2004/11/18 00:00
上海さん、

> 誰も話題にしないので、さびしい気もします。

いや、あまり話題にすると物議をまたかもすので、
またここのところとても忙しかったもので
(アラファトがいつ死ぬのかと、やきもきしながらenglish-aljazeera.netとかhaaretz.comとかlemonde.frをサーフィンする日々)

> 中東の和平に人生を賭けた好漢 アラファト議長が亡くなりました。
> 冥福を祈ります。

冥福は祈りますが、そこまでイノセントな存在ではなかったと思います。
(だから死人にむち打つような話になってしまってイヤなんだけど)
亡くなってからやっと日本のマスコミでも騒がれるようになった話題ですが、
公金横領をしていた疑惑がつきまとう巨大な遺産と、
個人的にとても気になるのは、かなり困った夫人の問題。

なぜマスコミは彼が死ぬまでこのことを報道しなかったの? なぜ死んだとたんに週刊誌ネタにまでなるの?

実は生前に報道されていたほど、
パレスティナでアラファトに人気があったわけではありません。
スーハ夫人のパリ豪遊生活、自分もロールスロイスを乗り回す趣味など、
こと第2次インティファーダ勃発でパレスティナ経済が疲弊してからは、
かなり厳しい視線がパレスティナ人たちからは浴びせられていたのです。

とくに貧困層にハマスが人気があるのは、外から見ればテロ組織ですが、
あれは医者が創始者だったりして、
貧民救済の福祉組織としての側面を持っていたのです。

それにしてもあのアラファト夫人のウワサはだいぶ前から聞いていたけど、
やっとテレビで本人の顔が見れた。

率直な感想;
「こんな女と結婚したなんて、バカだなぁ。結婚当時28歳の若さの色香に惑わされたのか?
 それにしてもこの女の下品さはなに?」


かつてアラファトが和平のパートナーと呼び、今も尊敬していると死の直前まで言っていたイツハーク・ラビンの奥さんの、今は故人のレア・ラビンはぶっ飛んだ迫力おばさんだったけど、気性は激しくともやさしそうな、気品のある女性だったのになぁ。

パレスティナのなかでも和平派の人々もまた、
人気取り的に強硬姿勢に走るアラファトに批判的な意見もあったようです。
あの戦闘服姿も、ねぇ。

確かCNNだったけ、電話インタビューに対して
「私はアラファト将軍だぞ! 誰だと思っている!?」
と激昂して電話を切ったことも・・・あなたは「議長」でしょうに。

> 「転向派」とか「利敵主義者」との罵声を浴びながらも

そういう批判は、必ずしもパレスティナ人自身のものではなかったようですよ。

> 現実的な中東和平に邁進した同氏の功績は、計り知れない大きなものでありましょう。

…どうかなぁ。率直な話、亡くなったおかげで和平が進展することもあり得ます。
ただ、アラファトは世界でいちばん有名なパレスティナ人でしたから、
その意味で国際メディアが過度に彼の死をとりあげることには一抹の不安がありました。
だからニュース・サイトをサーフィンし続けていたのだけど。

当事者であるパレスティナ人の多くが、実は比較的冷静に受け止めていても、
テレビカメラはやはりデモだとかを撮影して「これがパレスティナだ」と報道しますから、
その報道の仕方を観察してました。

意外や意外(では実は全くないけど)、もっともおもしろく、かつ冷静だったのは、やはりアルジャジーラでした。

> ファルージャに対する米国の大虐殺行為に、アラファト議長は静かに死によって
> 抗議しているように思えます。

そういう素直な思い込みも、ある意味で問題かも知れませんよ。

いろいろ有益なこともやったけど、失敗もした、その意味じゃただの人でした。不正蓄財疑惑も、パレスティナの現状を考えれば一概に批判だけはできないでしょう、なにしろ(少なくとも彼の頭の中と、国際メディアの圧倒的大勢なかでは)「アラファト=パレスティナ」だったのですから。

シャロンのくそじじいはえらく長生きでしぶとくて困りますが(アラファトの蓄財と違ってこちらは釈明の余地がない息子を通した収賄疑惑がウヤムヤになったし)、アラファトさんに関しては寿命でしょう。ことカミさんの関係では、かなり晩節を汚したともいえますが、それも含めて人間というものでしょう。

しかしなんで、ああいう下品な若い女に弱いのかな?>結婚した当時のアラファトの年齢の精力的な男性。

むしろ冷静な対応に邁進したアッバスやクレイの能力に、今後を期待したいところですが、ハマスが今度の議長選挙に参加するかしないかでもめ始めて、楽観は出来ません。

イスラエル側は東エルサレムのパレスティナ人(イスラエル国籍保有者も含むのかな?)の議長選挙への参加を容認する方針の模様。これは頭がいい。杓子定規に拒否すればイメージが悪くなるし、一方で東エルサレムには現実主義的な和平派がかなりいるので、実はイスラエル側にとっても有利に進む可能性がある。

イスラエルの国益も本当は、当然ながら極度の衝突が終わること以外ありませんから。がんばれシモン・ペレス!

しかしどうせならシャロンが錯乱してくれた方が、パラノイアな国民も目が覚めてシモン・ペレス復活で積極的和平路線に戻る可能性があるのに、というのは外野の勝手な妄想?

…と、かなりケナしておきながら、晩年は女に弱かったことも含めて、ヤセル・アラファトは人間臭いところが憎めない人でした。あの派手なパフォーマンスを今後見られないのも、寂しい。