31613 返信 Re:精神医学・医療と精神分析について URL あしな 2004/12/23 02:27
 全くの横レスです。

 発達障害や知的障害は、基本的には生まれつきであり、その点では「疾患desease」とは言い難いんだけど、生活していく上で一定以上の様々な困難が元々の障害に由来する不適応状態としてあり、まあ「病気illness」と言っていいと思う。実際にICDー10ではそれぞれF8とF7に入っているし、精神保健福祉法上の精神障害者の範疇にも入る。

 それ以前に実際に多くの精神科病院で長期に保護室使用を余儀なくされている者には知的障害がなにがしか絡んでいる人が多い。またある病院の入院患者全体をスクリーニングしたところ、約400名中20名弱が発達障害かその可能性のある者だったという報告があった。(確か2002年の児童・思春期精神医学会)その多くは分裂病と診断されれていたようだが、一方でアスペルガーの人と分裂病型人格障害(人格水準としては精神病レベルではなく人格障害レベルだが、幻覚・妄想などの症状もある点で分裂病質人格障害と区別されるらしい。)の人の横断像の区別はつかないという話もあります。そのため鑑別には生育歴や発達の問題、症状の縦断経過を見なければいけませんが、最終的には共感性というか、情が通じた感じがするかしないかと言う当たりが実は決め手になっている様な気もします。最初からICDに当てはめてどうか何つう人は極一部の大学を除いたらあまりいないんじゃなかろうか。

 と発達障害や知的障害が精神科的な治療対象となってしまっているという事実をおいた上で、 

進行麻痺(野口英世の出世の糸口)みたいにワッセルマン反応でプラスかマイナスかみたいなところで話が決まる疾患は実は稀でして、多くの病気は、何か症状があってそれが大いに不都合かどうかで治療の対象とするか否かが決まります。たまに時々幻聴が聞こえるという人がいますが、そういう状態が同じぐらいの程度で長期(数年とか)続いていて本人が生活する上で困っていなければ、「幻聴」と言ってもはっきりした空耳ぐらいの扱いで、治療対象の症状とはしないでしょう。なぜなら全ての薬は基本的に毒ですし、本人が自覚的にも他覚的にも困っていなければ、毒を飲んで得られるメリットがデメリットを上回るとは考えがたいからです。

 この辺の話は発達障害になるともっと顕著で、自閉症スペクトルという発想は、全ての人が大なり小なり自閉症的な傾向を有していて、それがたまたま不適応を来すか否かで臨床的な対象となるか否かが分かれるとされます。ニキ・リンコさんの書いたものなどは分かりやすくて面白いのでおすすめです。ニキ・リンコさんが福島県立医大の医者と対談してた本なども面白かった。

 ところで俗に三障害という言い方をして、それに関して知的や身体に関しては精神よりも例えば通所授産施設への補助の額が一桁から二桁多いという様な恨み言が良く出るのですが、一方で「問題行動」のある知的障害者は上記のように精神科病院で持て余されているという事もあります。厚労省は知的障害者の脱施設化を打ち出して、4年ぐらいで施設内にずっとおいといた人の4割ぐらいを外に出すそうです。長期的な適応改善のための施策と危機介入の体制がそれなりに準備されているのなら、脱施設化には大賛成です。しかし厚労省がそんな着実な事をやったためしがなく、どうもこの件も尻切れトンボで曖昧になるか、障害者・家族・近隣住民etcに困難を転嫁して終わるでしょう。
 その辺の話はきりがないのでそのうち気が向いたらまた。