31887 返信 Re:あけましておめでとうございます(人類史についての雑談) URL 武蔵の一住民 2005/01/04 18:45
inti-sol様

> そうですね。生物集団というのは非常にアナログというか、ファジーというか、もともと境界線などというものはありません。それに対して、分類というのは、ここからここまでの集団はA種、ここまではB種、この種とこの種はA属、こっちはB属と、人間の都合で境界線を引く、いわばデジタル化するようなものです。どう引いたところで必ず矛盾が生じます。

そういうものだと割り切ったうえで、より整合性の高い枠組みを提示する
しかないのでしょう。

ケニアントロプス・プラティオプスにしても、その位置づけが今後どうなるのか、
定かではありませんし、このような分類の曖昧さから、遺伝学系の研究者の
中には、形質人類学への不信感を持っている人もいます。

これはまあ直感にすぎないのですが、人類集団の長期にわたる多様性から
推測すると、400〜300万年前頃の現代人の祖先は、未知の(そして将来も
発見されるかどうか分からない)人類種なのではないかと思っています。



上海様
よろしくお願いします。

> 「人類の祖先」と「現代人の祖先」とは混同しがちですが、現代人の祖先は10万〜20万年前にアフリカに誕生、10万年前頃に中東に進出し、そこから世界に拡散し、西のヨーロッパでは先住のネアンデルタール人と交代し、また東のアジアでもホモ・エレクトスの子孫と入れ替わった・・・・・・というのが現在の定説です。

現生人類の起源という話ならばそうなのですが、現代人の祖先と
いう場合は、何十億年か前からずっと存在している一連の系統を
含む、との認識を前提に、現代人の祖先はアウストラロピテクス属か
他の人類種か、ということを述べたわけでして…
祖先という言葉に対する感覚の違いかもしれませんが。


> アメリカの研究者が主張していた「多地域進化説」は、中国の研究グループの遺伝子解析で大きく後退しました。その研究は東アジア、東南アジア、オセアニア、シベリア、中央アジアに及ぶ広大な地域に住む163民族の1万2127人の男性から血液を採取し、そこからとった細胞のY染色体を分析したという驚くべきサーベイでした。

この研究は、その標本数の多さという点で画期的で、多地域進化説に
深い傷を負わせたことは間違いありませんが、中国人研究者が主体だった
ことにも重要な意味があると言えるかもしれません。中国とオーストラリアは、
現在でも「多地域進化説」の盛んな数少ない地域ですから。

もっとも、中国とオーストラリアで「多地域進化説」が盛んなのには無理の
ないところもあって、相反する仮説である、「現生人類のアフリカ単一起源説」
の側も、化石証拠の点では中国とオーストラリアの説明には苦慮しています。

ただ、「多地域進化説」は、すでにこの研究以前に、

(1)アフリカの「解剖学的現代人」の新たな年代測定
(2)現代人のミトコンドリアDNAの分析
(3)レヴァントの諸洞窟で発掘された古人骨の新たな年代測定

といった発表により、支持者が激減していたように思います。


ところで、上海様はオーストラリアにお住まいとのことですが、「多地域進化説」の
代表的な論者である、オーストラリアの古人類学者アラン・ソーン氏の、地元
での知名度はどんなものなのでしょうか?