31973 返信 Re:中国特需と対米自立 URL inti-sol 2005/01/08 21:56
帽子屋さん

> いつから、アメリカが太平洋戦争をおこしたことになったのですか。いくらなんでもこりゃひどい。

米国が太平洋戦争を始めた、などとは私はひとっことも書いていないのですが。
ただし、米国は、対日制裁措置が日本の暴発を招く可能性があることは覚悟の上で、あえてそれをやったことは明らかです。

> 「貿易が多いと戦争がおきない」(当初)という命題と、「貿易の占める割合が少ないから、戦争がおきた」(今回)という命題は、こりゃまた全然違う命題じゃないの…少なくて戦争していない例など、こりゃまたいくらでもありますがな

「貿易が多いと戦争がおきない」からといって「貿易が少ないから戦争が起きる」とは限らないのは当たり前のことです。しかし、「貿易の占める割合が少ないから、戦争がおきた」事例の存在は「貿易が多いと戦争がおきない」という命題と矛盾しません。

ああ、それから、私は個別具体的に中国が日中貿易を危機に陥れてまで尖閣諸島に攻め込むことはできない、と述べたのであって、国も年代も超越した一般論として「貿易が多いと戦争がおきない」など主張してはいませんので念のため。だって、貿易は重要な問題ですが、それより重大かつ致命的な問題など何もない、とは限りませんからね。だから、尖閣諸島の問題にしても、「得られる利益と失われる利益の勘定があわない。」と書いたんですよ。もしも中国にとって、尖閣諸島を占領することが日本との総額1500億ドル以上の貿易よりもっと利益をもたらすものなら、あるいは尖閣諸島を占領しなければ中国政府が崩壊してしまうという事情でもあるなら、日中貿易をぶち壊してでも尖閣諸島に侵攻することがない、とは断定できません。でも、そんなことは考えられないのです。

戦前の日本について言えば、政府や海軍はともかく、暴走の当事者である陸軍は、途中までは中国に対する侵略が米国の怒りを買うなどということは想像もせず、米国に制裁されて戦争に追い込まれた場合の損得勘定などということは、まったく考慮の外で軍事行動を展開していました。で、米国との対立が不可避となったとき、彼等は米国との貿易よりも中国での権益の方が大事だ、と考えたんですね。あくまでも主観であって、事実として米国との貿易よりも中国での権益の方が大事だったかどうかは、また別の問題ですが。
政府や海軍の判断は明らかに異なっていたけれど、陸軍の暴走を止めることはできなかった。そして、そうこうしているうちに在米資産凍結、対日石油輸出禁止という決定的事態を招いてしまいました。
政府にとっては、米国との貿易が重要でなかったわけではありません。しかし、石油の8割以上の供給が絶える事態は(自ら招いたことではあるが)日本にとって破滅を意味しました。海軍にとっても、世界3大海軍国を自称する強大な艦隊が、戦わずして燃料切れの鉄の棺桶と化すことを意味していました。対米開戦反対派であった海軍が開戦に舵を切ったのはこのときです。
しかも、制裁がそのまま進めば貿易もまた絶えてしまうであろうことは明白でした。
ここで、中国への侵略の中止という当然の解決法を取れなかったところが、日本政府と海軍の決定的にダメだった点です。とはいえ、陸軍は政府のコントロールを受け付けない、出先の支那派遣軍や関東軍は東京の大本営のコントロールを受け付けないという状況では、政府が侵略中止を決めても陸軍が従わなかった可能性が高いことも事実です。つまり、1941年の日本は、権力の二重構造が極大化して、政府機構の意志決定システムが働かない状態になっていた。

これらの条件は、現在の中国にはまったく当てはまりませんから、現在の中国が当時の日本と同じような経緯で暴走する可能性はありません。

それから、貿易が多いか少ないかは相対的な問題です。貿易額1億ドルは、GDPが10億ドルの国にとってはとてつもなく大きくて重要ですがGDPが1兆ドルの国にとってはそれほどでもないでしょう。
現在の日本と中国を比較すれば、いうまでもなくGDP(便宜上GDPで比べていますが、要するに経済規模)は日本の方が大きい。日本が4兆ドル以上で中国は1兆4〜5千億ドルです。人民元の対ドルレートが不当に低いという立場に立てば、中国の経済力は実質的にはもっと大きいという見方もあるでしょうが、それでも日本を越えはしないい。しかも、国民一人あたりGDPでは差はもっと大きく開きます。
一方、太平洋戦争直前の日米ではどうでしょうか。言うまでもなく、経済規模は米国の方が圧倒的に上でした。当時GDPやGNPの統計はありませんでしたから正確な比較はできませんが、当時の日米の経済力は今の日中間の差よりもっともっと隔絶していたことは間違いない。(人口一人あたり、では今の日中間の方が差が大きい可能性もあるが)
ということは、当時の日米貿易は日本にとって大変重要でしたが、米国にとっては日本にとってほど重要ではなかった可能性が高い。
しかも、日本はほぼすべての資源・エネルギーを輸入に頼っており、それだけ経済が貿易に依存する割合が大きかった。それは現在の中国も基本的に同じです。それに対して、米国は戦前、ほぼすべての資源・エネルギーを自前で調達でき、経済が貿易に依存する割合は日本や現在の中国ほどに高かったわけではありません。

> なぜ「企業活動を妨害するような政策を取っていれば」「とっくの昔に破綻していた」といえるのですか??

旧態依然の社会主義経済体制の旧ソ連と東欧諸国はとっくの昔に破綻しましたから、そこから類推すれば、中国も、依然として旧態依然の社会主義のままであればとっくの昔に破綻していた可能性が高い。

> そもそも尖閣への武力行使が「企業活動を妨害する」行為である論証がぬけているでしょう。

尖閣諸島に侵攻するということは戦争です。戦争が自由な企業活動、特に交戦相手国との貿易関係を大きく妨げる要因であるということは、いちいち論証するまでもなく自明のことと思われます。

> そのうえさらに、中国の企業が共産党一党独裁政府のとる政策にいかなる影響をあたえているのか如何と、なんの関係があるのですか?

影響も何も、「改革・開放政策」とはすなわち資本主義であって、中国が資本主義を選択したということは企業の金儲けを経済の基本に据えた、ということを意味しているわけです。
もっとも、社会主義体制であろうと、外国との貿易が減少しても平気だ、という政権はまずないと思いますけれど。

> いつから「あり得ない」ことになったのですか??帽子屋は、「米国債が売れるのか」という純粋に金融技術的な点をお聞きしているのですが…。

いや、別に売れないなら売れないでも構わないんですけれどね。だって、私は米国債を売るべきだ、などとは一言も言っておらず、ただ、かつて橋本首相がしたようにそういうブラフをかけることも必要ではないか、と言っているに過ぎないのですから。
しかし、そうすると「米国債を売却したいという誘惑に駆られる」っていう橋本首相の発言は、物理的に不可能な願望を口にしただけのことであり、またニューヨークの株式市場は実行不可能な妄言に反応して暴落したと、そういうことですよね。
それが事実なら、凄いではありませんか。絶対に実行不可能なのに、脅し文句だけで外国の株式市場を操れるんですから、こんな強い武器を使わない手はありませんね。ま、あまり何度も使うとさすがに効き目がなくなってくるでしょうがね。

> つまりあなたのおもいえがく金融の世界には、「公開市場操作」「連邦準備制度理事会」という文字が存在せず、思うまま売れる世界なのですね。

米国債の売却などという行為は、もしやるとすれば超革命的・超冒険的・ほとんど無謀な所業なのですから、公開市場操作がどうの、FRBがこうの、などと考えている間は、そんなことは絶対行われない。しかし何としても断固として米国債を売却すると決めたなら、そんなものが何の歯止めになるでしょう。日本政府の保有する米国債を売却することを、なんで米国のFRBが阻止する権限があるのかな。

> A 暴落するのは既発債で、新発債の値段は利子率で定まるので、直接的にはなんの関係もありません。

既発債が大量に市場で投げ売りされているのに、誰が高い新発債を買うのでしょうか?よほど有利な(発行側にとっては不利な)利子率を設定すれば話は別でしょうが。

> B 公的機関のもつ国債資産価値がさがってどうして困るんでしょう??資産価値の短期的変動が公的機関にあたえる影響を解説願います。

確かに、一度も市場に出さないまま償還を迎える国債なら、資産価値が下がっても直接的にはあまり意味はないかもしれませんね。もっとも、米国債の大量売却による価格暴落が「短期的変動」で済む保障など、どこにもありませんけれど。

しかし、帽子屋さんもそういきり立って熱くならずに、もう少し落ち着いて議論したらどうですか。そういう攻撃的な文章は、書いている自分は気持ちいいかもしれないけれど、あまりみっともいいものではありませんよ。