32124 返信 Re:民衆戦犯法廷 URL inti-sol 2005/01/15 13:34
安倍晋三の弁明(?)のおかしさについては、水原さんが既に指摘をしていますが、その後復活した安倍のホームページには

記事に関し、事実と反している部分がありますのでこのHPにおいて明確化しておきたいと思います。
1)朝日新聞の報道では「安倍晋三自民党幹事長代理が…NHK幹部を呼んで…」となっているが、先方から進んで説明に来られたのであって、当方がNHK側を呼びつけた事実は全くない。
2)先方が説明に来たのは、番組放送の前日である1月29日のことであるが、朝日新聞の報道で指摘されている「民衆法廷に批判的立場の専門家のインタビュー」はそれよりも前に完了していたものであり、当方がこうしたインタビューをするようNHK側に求めた事実は全くない。


という弁明が追加されています。
基本的に安倍とNHK幹部の間でどういうやりとりがあったのかが問題であって、安倍が呼びつけたのか、NHKが押し掛けたのか、などということは本質的な問題ではないでしょう。
だいたい、「予算説明のため」の面会で、何で個別の番組について説明したりされたりしなければならないのか。NHKの予算決算を承認する権限を持つ国会の、与党・最大政党の議員で官房副長官という人物が、まさしく「予算説明」の中で個別の番組について「要望」をいう、これが圧力でなくていったい何なのか。
また、「民衆法廷に批判的立場の専門家(引用者注:秦郁彦のこと)のインタビュー」は、安倍が批判する当初の番組の中でも取り上げられる予定だったものですから、もともと収録されていたのは当たり前です。問題は、当初の予定ではインタビューのごく一部を取り上げるはずが、放送前日になって、このインタビューの取り上げ方を大幅に拡大するように編集し直したことです。そして、それは安倍とNHK幹部の「面談」と無関係ではあり得ないでしょう。


一方中川昭一の方はというと、
当初は、朝日新聞の取材に対して

NHK幹部と面談したことを認めた上で「疑似裁判をやるのは勝手だが、それを公共放送がやるのは放送法上公正ではなく、当然のことを言った」と説明。「やめてしまえ」という言葉も「NHK側があれこれ直すと説明し、それでもやるというから『だめだ』と言った。まあそういう(放送中止の)意味だ」と語った。

と答えています。更にその後の記事

この問題で、中川氏は10日、朝日新聞の取材に対し、放送前日に面会した事実を認めた

としています。ここまで明快に断定しているのは、中川昭一が確かにそうしゃべったという絶対確実な証拠(おそらく録音)があるからでしょう。ところが、その同じ記事によると、中川昭一は

「東京の事務所の総力を挙げて調べたところ、NHK関係者と番組の話を初めてしたのは放送後だと分かった。だから、内容を変えろとか中止しろとか求めようもない」

と、ほんの数日前に自分の口から言ったこととはまったく相反する「事実」を言い始めたようです。では、最初の発言はいったい何だったのか、「NHK側があれこれ直すと説明し、それでもやるというから『だめだ』と言った。」という具体的な記憶が、間違った記憶だったということか、それとも「東京の事務所の総力を挙げて調べた」ら、記憶が消えてでもしまったのか。
中川氏は「事実ではない報道で政治家としての名誉を傷つけられたので、訂正などの対応がない場合は断固たる措置をとる」と言っているそうですが、是非「断固たる処置」を取っていただき、このあたりの真相を明らかにしてほしいものです。


さて、安倍は女性国際戦犯法廷のことを

この模擬裁判は、傍聴希望者は「法廷の趣旨に賛同する」という誓約書に署名しなければならないなど主催者側の意図通りの報道をしようとしている
裁判官役と検事役はいても弁護士証人はいない
拉致問題に対する鎮静化を図り北朝鮮が被害者としての立場をアピールする工作宣伝活動の一翼も担っている


などと批判しています。この掲示板でも、批判派の主張はほぼ同様なので、この批判の是非を検討してみましょう。
まず、この裁判は、名前は裁判であっても本物の裁判ではありません。八木沢氏が、投稿32114の中で面白いことを言っています。

「件の裁判ごっこについても、どこが放送しようがほうっておいて黙殺すればそれでよかったのに(以下略)」(強調は引用者)

まあ罵倒オンパレードの投稿の中の一文だから、表現が野卑でどぎつい点にはいささか辟易しますが、にもかかわらず彼は本質的に重要なことを言っています。
裁判ごっこ。
そうです。「ごっこ」という表現にはいささか悪意が感じられますが、本物の裁判ではないという意味では本質をよく言い当てている。

本物の裁判は、判決に強制力が伴います。刑事裁判で有罪なら被告に刑罰が科されるし、民事裁判で敗訴すれば賠償支払いなどの義務が生じます。従って、被告側に弁護人が付かなければそれは人権上の大問題となりますが、女性国際戦犯法廷はあくまでも民間団体(国際的な広がりがあるとはいえ)による模擬的な裁判であって、判決によって被告人に刑罰を科したり賠償責任を負わせたりするものではありません。もちろん、どんな強大な権力をもってしても、墓の下の昭和天皇に刑罰を科したり賠償義務を負わせることは、物理的に不可能であることは言うまでもありませんが。従って、弁護人がいないから問題だ、などということはあり得ません。

もちろん、主催しているのは公的機関ではなく民間団体ですから、「傍聴」(参加)希望者を無制限に受け入れるか、何らかの制約を課すか、どのような制約を課すかは、主催者の裁量に任されることです。現実問題として、この「法廷」に対して右翼団体が反対を叫んでいましたから、彼等が傍聴席に入り込んで妨害行為を行うことを避けるために、「法廷の趣旨に賛同する」という誓約書に署名させるというのは、最善の策だったかどうかはともかくとして、選択肢として大いにあり得るものでしょう。

つまり、これは民間団体の主催する女性国際戦犯追及集会であり、そこで誰をどのように有罪と認定するか、というのは集会・結社の自由に属することであり、それを番組で取り上げることも同様です。日本国憲法も、その他のいかなる法律も、思想・心情の自由、出版の自由、集会・結社の自由などに、天皇を批判する自由は認めないという留保を設けてはいません。
だから、この民衆法廷を批判したいのなら、内容を批判すればいいのです。「天皇は有罪である」VS「天皇は無罪である」というのが、まともな議論のあり方でしょう。
弁護人がどうの傍聴券がこうの、というのは、「電車ごっこ」を「運転手が免許を持っていない、安全設備が整っていない、けしからん鉄道だ」と言ったり、「お店やさんごっこ」に「食品を取り扱うのに保健所に届け出ないのは何事だ」と言うのと同じぐらい無意味で馬鹿げた批判です。

また、北朝鮮は証人などを派遣していますから、女性国際戦犯法廷に対して好意的だったことは疑いありませんが、北朝鮮が女性国際戦犯法廷に好意的だからと言って女性国際戦犯法廷が北朝鮮に好意的だったとは限りませんし、まして工作宣伝活動の一翼などというのは、何の根拠もない。
参考までに、女性国際戦犯法廷の裁判官役は、
裁判長 ガブリエル・カーク・マクドナルド(米国・旧ユーゴスラヴィア国際戦犯法廷所長)
裁判官
 クリスティーヌ・チンキン(イギリス・ロンドン大学教授)
 カルメン・マリア・アルヒバイ(アルゼンチン・旧ユーゴスラヴィア国際戦犯法廷裁判官)
 ウィリー・ムトンガ(ケニア・ケニア人権委員会委員)
となっており、北朝鮮はおろか韓国・中国・東南アジアなど直接に日本軍の侵略を受けたことのある地域の国民は含まれていません。

それから、補足的にいくつかの意見に対してレス
しょうないさん

> まあ民間団体がどんなイベント、パフォーマンスをやろうがそれ自体は自由でしょうが、それをNHKで彼らの主張を垂れ流すような番組を流す必要があるのか?

必要があるかどうかはNHKが判断すればいいことです。

> そもそも逝去から10年もたった昭和天皇を一方的に指弾することは「死者を鞭うたない」という日本の文化に反します。

そのような「文化」があるかどうか、という点についてそもそも大いに議論の余地があります。そうすると、金日成を「一方的に」指弾することも「日本の文化に反」することになりますから。しかし、最大の問題は、あなたの定義する日本の文化から逸脱した番組を作ってはいけない、という根拠がまったく明確ではないことです。

> そもそも「不当な圧力」「報道の自由の侵害」を言うのであれば「人権」「マイノリティ」の「御印籠」を振りかざす人々はどうなるのか?

こういう言いぐさは、「拉致事件はけしからん」に対して「日本の強制連行はどうなるのか」と返すのと、まるで同じメンタリティーと言うべきでしょう。しかも、「人権」「マイノリティ」の「御印籠」を振りかざす人々なる者が、具体的にどのような圧力をかけたのかという検証がまったくありません。
> なぜ917までは一部のメディアを除けば拉致問題に関する報道はごく控えめに行われていたのか?
> なぜハンナン問題がタブーだったのか?
という問いだけでは何の検証にもならないですよ。どのような人物がどの放送局あるいは新聞社などにどのような「圧力」をかけたのか、それを具体的に説明しない限り、何の意味もありません。