32982 返信 米帝国主義こそ危機の根源、「不安定の弧」戦略と闘おう (労働新聞 社説) URL 森永和彦 2005/02/17 08:09
労働新聞 2005年2月15日号 社説


北朝鮮外務省の新声明とわが国の態度

米帝国主義こそ危機の根源、「不安定の弧」戦略と闘おう


 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は2月10日、同国の「核開発」問題をめぐる6カ国協議について、「十分な条件と雰囲気がもたらされるまで」、参加を「無期限に中断する」とする外務省声明を発表した。さらに、「ブッシュ政権による圧殺政策に対抗して核不拡散(NPT)条約から脱退し、自衛のために核兵器を製造した」と言明した。北朝鮮はこれまでも米帝国主義の核どう喝と侵略政策に対する自衛のための核抑止力の存在につて、数度にわたって表明してきたが、今回初めて核兵器製造を正式に発表した。
 これに対して、わが国御用マスコミは、「制裁を」と騒ぎ立てたかと思えば、「真意を見極めろ」「静かな無視を」と抑制するなど右往左往で、北朝鮮の核兵器製造声明を支配層がいかに深刻に受け止めているかを示している。
 しかし、第2次ブッシュ政権は1月20日の就任演説で、北朝鮮など6カ国を念頭に「専制政治の終えんが目標」と政権転覆の野望を隠さなかった。国務長官ライスも、北朝鮮などを「圧政の前線基地」と決めつけ、「世界の圧政を終わらせるのが目標」と挑発的宣言を行った。
 このような中、北朝鮮が国の独立と安全を確保するため、武装解除を拒否し、断固として帝国主義と闘おうとする限り、今回の決定は当然の措置である。

6カ国協議の狙いと北朝鮮の対応

 米帝国主義が、朝鮮戦争以降一貫して北朝鮮敵視を続け、核どう喝と戦争挑発を続けてきたことは周知の通りである。
 しかも、ブッシュ政権は02年、北朝鮮を「悪の枢軸」と決めつけ、ブッシュ・ドクトリンによる先制攻撃と、内政干渉の政権転覆まで公言するに至った。03年に始まった北朝鮮の「核開発」問題をめぐる6カ国協議は、イラクで侵略戦争に踏み出した米帝国主義が、二正面作戦を避けながら、北朝鮮を協議の枠に引き込み、現状を固定したまま、日、韓、中、ロという周辺国を動員して北朝鮮に圧力をかけ、核放棄・武装解除を促すことが狙いであった。
 米国の軍事・政治・経済にわたる圧力の中で、経済的苦難を抱えた北朝鮮が、6カ国協議に応じることで時間を稼ぎながら、米国に対して「安全の保障」を求めたことは、1つの判断であった。
 加えて、北朝鮮政府が自国の独立と政治体制を守るために侵略戦争に備え、核やミサイルを含むあらゆる手段で防衛力の強化を図ることは、主権国家としての当然の態度であった。これは、米国という核大国のどう喝下での、やむを得ぬ自衛権の範囲であり、通常兵器であれ核であれ、そこに本質上の違いはない。
 しかも、6カ国協議で米国は、北朝鮮が求める「不可侵条約の締結」にも「敵視政策の転換」にもいっさい耳を傾けず、一方的核放棄を求め、圧迫と干渉を強め、昨年6月の第3回協議以降、6カ国協議は完全に暗礁に乗り上げていたのである。

窮地の米国の新戦略「不安定の弧」

 だが、米国の没落のすう勢はとどめがたい。先制攻撃を掲げたブッシュ・ドクトリンは、早くもイラクでつまづき、占領は泥沼化、「有志同盟」が崩壊の危機に瀕(ひん)するなど米国の国際的孤立は急速に深まった。しかも米欧亀裂が顕在化し、独仏など欧州は米国の世界支配の重大な脅威として登場した。経済でも、「双子の赤字」が拡大し、ユーロの登場と存在感の高まりは米国ドル体制の足元を揺さぶっている。
 このような窮地の中、米国、第2期ブッシュ政権は、石油資源の集中する中東から中国、台湾、朝鮮半島を含む地域をにらんで、わが国の協力の下に米軍再編成を急ぎだした。米国はこの地域を「不安定の弧」としてどう喝し、軍事的支配を強めることで、石油資源を確保し、欧州を抑え込むだけでなく、列強の争奪の主戦場となったアジアでの争奪で有利な条件を確保しようとしているのである。これは、落日期にある米国の、劣勢を克服しようという意図が隠された新たな戦略で、「不安定の弧」はその戦略的表現である。
 「核」を口実にした北朝鮮敵視政策は、米国の一極軍事支配の源泉としての核独占(それは事実上崩れかけているが)を、何としても守ろうという無法な攻撃にほかならない。
 しかし、イラク支配の危機は米国の力の限界を満天下にさらしている。イランへの核開発を口実とした圧迫、介入も、欧州がいち早くイランの妥協を引き出して、指導権を奪われた。ライス国務長官の欧州、中東歴訪は、米国の力の限界と窮地を見せるものであった。米国は力不足。イラク、中東で足をとられた米国は、同時に朝鮮と事を構えることはできない。
 北朝鮮政府の今回の声明が、米国の足元を見てのものであることは、大いにありうることである。

米軍再編に追随し、戦場への道歩む小泉売国政権

 しかし、米国はこの戦略を、しゃにむにやり抜こうとしている。それ以外に米国が国際政治の場で力を回復することは不可能で、没落を避けることができないことをよく知っているからである。だから米国の悪あがきは避けがたく、朝鮮半島をめぐる緊張はいっそう高まらざるをえないであろう。
 このような中でわが国政府、小泉政権は、あくまで米国に賭(か)けて、「不安定の弧」、米軍再編に追随し、朝鮮敵視を強める、時代錯誤の選択をしている。しかし、その先に待っているのは戦争への道である。
 すでに政府は、「不安定の弧」戦略を前提に、北朝鮮だけでなく、中国をも仮想敵国と規定する「新防衛計画大綱」を策定した。2月19日には、外務・防衛閣僚による日米安全保障協議会(2プラス2)で「共通戦略目標」を発表、日米安保の再々定義にまでも踏み込もうとしている。
 北朝鮮の「声明」を逆手にとった制裁論の高まりや、ミサイル防衛など軍事大国化の動きも露骨であり、その先には核武装化すら意識されていると見ることができる。
 これは、アジアの軍事的緊張を高め、朝鮮半島の平和と民族統一を切実に願う韓国人民をも敵に回し、アジア諸国とわが国を敵対させる、孤立と亡国の道である。

米国を免罪し、朝鮮敵視強める野党の堕落

 ところが、与党はもちろん野党までもが、北朝鮮非難の大合唱に明け暮れている。
 「北朝鮮人権法」を画策するなど以前から北朝鮮の体制転覆と制裁要求を強めていた民主党が、今回を契機に「食料支援の凍結はもちろん、関係法令の適用も含めた強い圧力」「国連での取組みも含めた対応を模索すべき」(鳩山ネクスト外務大臣)などと騒ぎ立てたのは当然であった。
 共産党は、「東アジアの平和と安全に有害で北朝鮮自身の平和と安全にも逆行する」(市田書記局長)などと許し難い内政干渉を行っている。帝国主義との闘いでどのような政策をとろうとも、それは北朝鮮の存亡のかかった固有の権利であって、干渉すべきことではない。この党は長年、彼らのいう「国際共産主義運動」すら「内政不干渉」を党是にしてきたのではなかったのか。
 社民党もまた、「国際社会への背信行為」(又市幹事長)などという。国際社会とはだれのことをいっているのか。北朝鮮が自国を防衛するためどんな政策を選ぼうとも、それは固有の権利ではないのか。
 これらの野党は、つまらぬ中傷に努めるより、全世界の敵、米帝国主義と闘ったらどうなのか。
 これらの見解は、米国の核独占や北朝鮮への圧迫政策を隠し、全世界の敵である米帝国主義を免罪する、犯罪的なものである。
 アジア諸国と連携し、北朝鮮敵視政策に反対し、米帝国主義の危険な賭け、米軍の再配置に断固反対しなければならない。
 韓国政府は、民族和解政策を堅持し、北朝鮮と約束していた援助を継続することを米国にも通達している。われわれはこの南北団結の努力を強く支持する。また、中国もかねがね、米国の北朝鮮敵視政策に対し妥協を求めてきており、それはわれわれにも理解できるところである。

 わが党は、小泉政権が米帝国主義に追随した北朝鮮敵視政策を直ちにやめるよう、あらためて強く要求する。



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