33332 返信 ノムヒョン演説への「日本の知性」のリアクション URL クマ 2005/03/02 20:50

 熊谷です。
 ノムヒョン演説、このサイトにも書式を整えて全文を掲載してありますので、ご参照下さい。

 演説文中でノムヒョン大統領は「日本の知性にもう一度訴え」るとして、「真実なる自己反省の土台の上に韓日間の感情的なしこりを取りのけ、傷口が癒えるようにするため、先立ってくれなければなりません。それこそが、先進国であると自負する日本の知性的な姿」だと指摘しております。

 これに対する日本側の反応として、たとえば小泉首相の「あちらにも国内事情があるのだろう」といったシニカルな反応をあげるのは、自国の恥をさらすようで自虐的かもしれません。しかし、この人にそもそも知性があるのか疑問なので、呼びかけ対象外と考え、ここでは無視します。

 マスコミでは、社説で取り上げたのは朝日と東京の二社です。
 ノムヒョン大統領演説への日本の「知性」のリアクションとして興味深いので、それぞれ全文を紹介します。

【朝日新聞社説】日韓関係――大統領演説への戸惑い

 朝鮮半島が日本の植民地支配下にあった86年前の昨日、民族の独立を訴える声がソウルからわき上がった。「3・1独立運動」だ。いま国民の祝日となり、韓国民の民族意識が大いに高ぶる。

 そのことは十分わきまえたうえでも、盧武鉉大統領が記念行事で行った演説には唐突感が否めない。

 大半を日本との関係にあてた演説のなかで日韓関係の進展を評価しつつも、更なる発展のために日本側が「真の自己反省」を示すよう求めた。

 「過去の真実を解明し、心から謝罪し、反省し、賠償するものがあれば賠償し、和解する」ことが「過去清算の普遍的な方式」であって、日本にはそうした努力が足りないとも指摘した。

 ますます深まる経済関係。サッカーW杯の共催成功。「韓流」ブーム。日本人の韓国への親近感はかつてないほど増した。とはいえ、植民地支配の歴史をどう総括したらいいかをめぐる問題となると、日韓関係はまだまだぎこちない。

 小泉首相の靖国参拝が韓国の人々の神経を逆なでしているのは確かだし、植民地支配や侵略戦争の被害を受けた側の思いに日本人が鈍感でありがちなことも否定はできない。朝日新聞は社説で、自らの過去をもっとしっかりと総括し、教訓をくむべきだと主張してきた。

 その一方で、日本は95年の「村山首相談話」で植民地支配に「痛切な反省」と「心からのお詫(わ)び」を表明し、それを踏まえて3年後、小渕首相と金大中大統領が共同宣言で「未来志向」の関係構築を確認した。近年の日韓の緊密化はその延長線上にある。

 大衆の人気に支えられて政権の座に就いた盧氏が、国民の間にくすぶる日本の歴史認識への批判を意識せざるを得ないことは分からぬではない。自国の歴史の見直しを政権の実績にしようとしているさなかの国内向けの演説でもあろう。

 しかし、「謝罪」を言い、「賠償」という言葉をいたずらに使うことには、日韓の将来を真剣に考える我々も戸惑う。

 大統領は日本人拉致問題に同情を示しつつ「日本もまた日帝から数千、数万倍の苦痛を受けたわが国民の怒りを理解しなければならない」とも語った。拉致問題に多大な関心を寄せながら、過去の植民地時代に行ったことを忘れたかのような日本にクギを刺したかったのだろう。それは理解できる。

 だが、植民地支配という歴史と北朝鮮による拉致は同じ次元の問題ではない。北朝鮮の対日非難に通ずるかのような物言いは、日韓関係にとって逆効果だ。小泉首相は北朝鮮との過去の清算をめざして2度の訪朝をしたが、交渉の進展を妨げているのはむしろ北朝鮮である。大統領はそこを冷静に見てほしい。

 北朝鮮問題の解決には、まず日韓の協調である。日本は歴史をもっと見つめなければならないが、韓国がいたずらに違いを強調することも賢明ではない。

【東京新聞社説】日韓関係 反感をあおらないで

 日韓国交正常化から四十年、「未来志向」の関係を築くため、さまざまな行事も計画されている。過去を振り返る機会も増えそうだが、お互いに反感をあおるような言動は控えたい。

 韓国では、三月一日は植民地時代の独立運動記念日だ。盧武鉉大統領は記念式典で両国関係に触れた。

 「韓日両国は、東アジアの未来を一緒に切り開いて行かなければならない運命共同体である」

 日韓両国は、経済力の大きさもあって、二国間にとどまらず、東アジア全体の平和と安定を実現するために、重要な役割を担っている。

 特に国交四十年のことしは、「日韓友情年」と称して、さらなる友好親善の土台を広げるため、文化交流などの行事がすでに始まった。盧大統領の演説の背景には、そこまで進んだ両国関係がある。

 気になるのはその後だ。「それ以上の実質的な協力」のために、日本は「過去の真実を究明し、心から謝罪、反省し、賠償することがあれば賠償して和解すべきだ」という。

 日韓国交成立時に締結された「請求権・経済協力協定」には、「両国や国民間の請求権は完全かつ最終的に解決された」と記されている。

 先に韓国政府が公開した当時の外交文書には、日本からの「請求権資金」を一括して受け取り、「韓国政府が国民の個人請求権を補償する義務を負う」という文言も見える。

 また謝罪については、日韓首脳会談を行った歴代首相が過去を反省する意向を伝えてきた。

 もちろんこれをもって、過去が消えるわけではないが、同時にこの地域全体に大きな責任を持つ両国は「未来志向」の関係を強化することが不可欠である。その中で歴史認識も深めることができる。日韓首脳はこの認識を共有してきたはずだ。

 盧大統領も「過去の問題を外交的な争点にしないという考えに変わりはない」と念押しをしたが「謝罪、賠償」の部分はふに落ちない。

 東アジアの最大の懸念は北朝鮮の核だ。いま両国は北朝鮮を六カ国協議の席に着かせ、不安定要因をなくすため、さらに連携する必要がある。それがアジアの新しい秩序づくりにつながる。

 ことしは、国交四十年だけでなく、韓国にとっては植民地解放六十年でもある。過去についてもさまざまな発言、時には過激な内容も出てきそうだ。「反日」と「嫌韓」の悪循環にしてはいけない。

 とくに両国の為政者、政治家は、未来を見据えて、冷静な言動をするよう努めてほしい。