| 33492 | 返信 | Re:法感覚の欠如 | URL | 五番街 | 2005/03/09 12:37 | |
| > 五番街さんの説明では、「国際法はいまのところ不完全だから事後法も止むを得ない」というそれだけですよね。 > > 「どういう場合には事後法が止むを得ないのか?」という具体的検討が全くないままに、事後法でもなんでもその時の国際社会が認めれば何でもOK、という杜撰な考えです。 では説明しましょう。第一次および第二次大戦に適用されたハーグ法は、マルテンス条項と呼ばれるきわめて独自な規定があります。 マルテンス条項は次の通りです。 -------------------------------------------------------------- 一層完備したる戦争法規に関する法典の制定せらるるに至る迄は、締約国は、其の採用したる条規に含まれさる場合に於ても、人民及交戦者か依然文明国の間に存立する慣習、人道の法則及公共良心の要求より生する国際法の原則の保護及支配の下に立つことを確認するを以て適当と認む。 -------------------------------------------------------------- この条項を読めば理解できることですが、このハーグ法は、自らの規定の外にある戦争行為についても、「国際法の原則の保護および支配」を受けることを明言しています。 つまり、規定外の行為であっても、それが戦争の惨禍を拡大するもの、あるいは残虐な行為であれば、違法行為とされることになります。むろん、それが規定外にあるため、それを違法とするには事後法をもってする以外の方法はありません。 このマルテンス条項は、国際法の未整備さを補完する規定であり、時代的な制約から当時としては予見されず、したがってハーグ法で規定されなかった行為に対しても国際法が適用されることを示しています。 この条項が初めて適用されたのは第一次大戦におけるドイツの侵略行為に対してであり、武力をもって他国の領土、財産あるいは人員を奪い取る行為を「平和に対する罪」という事後法を設けて犯罪行為とみなしました。 この事後法によるドイツの前カイザルの訴追決定には日本も参加しており、その後の不戦条約や国際連盟における日本の中国侵略の認定によって、「平和に対する罪」は国際社会で認定されたのです。 さらに、第二次世界大戦におけるドイツのユダヤ人に対する迫害および虐殺を「人道に対する罪」という事後法を設けて断罪したことも、このマルテンス条項をベースとしたものであり、これらの罪は、「人道の法則及び公共良心」に反するものとして、その後の国連憲章やジェノサイド条約によって取り入れられ、今日の社会のいわば常識として定着しています。 このように、これらの事後法は、権力者が恣意によって制定する事後法とは異なり、ハーグ法の前文の「戦争の惨禍を減殺する」という目的を実現するための、未整備な国際法の武器として制定されたものです。 武力侵略や特定民族の大量虐殺という目を覆いたくなる惨劇を犯罪とみなし、再発を防止するためには、国際法には事後法という武器が必要であったことを理解すれば、事後法が適用された国際裁判を無効とする主張はきわめて空しいものと感じられます。 |
||||||
![]() | ||||||