33534 返信 Re:言葉に詳しいとんぷく君に質問:とんぷく君にヒント URL tpkn 2005/03/11 15:49
渡辺さん

>  円のローマ字表記 Yen が中国語と関係ないということは、とりあえず同意いただけたようです(^^)

これは冗談ですがな。

>  しかし、ヨーロッパ人が聞き違えたとでも?

聞き間違えるというよりも、ローマ字の綴りが当時の発音を忠実に表しているとは限らないということです。
それぞれの表記体型の範囲でしか表記できないわけですから。つまり、簡単に言うと、日本語の「え(e)」が当時の宣教師達の耳にyeと聞こえただけなのか、実際にyeと発音していたのかはローマ字だけからは判定できないということです。

>  少なくとも17〜18世紀には、江戸はイェドと発音されていたと考えられます↓当然、「ゑびす」は Yebisu になります。

江戸(えど)がyedoであったら、なぜ、「ゑびす」がyebisuになるのが「当然」なのでしょうか。
わけがわかりません(笑)。

こういう単純な話になるのだろうと思って、わざわざあらかじめ資料を挙げていたのですが…(笑)。
再掲しますね。
http://www.aurora.dti.ne.jp/~zom/Kyo-to/Shiryo-/eyeben.html


一般的に言って「え」と「ゑ」の発音上の区別は、少なくとも室町時代には崩壊していたと考えられています。これは、ア行4段目のEが、ひらがなでは「え」、カタカナでは「エ」となっていることなどから類推されているわけですね。ひらがなの「え」は万葉仮名の「衣」に由来し、カタカナの「エ」は万葉仮名の「江」に由来しているからです。万葉仮名では、「衣」はア行のeで、「江」は、ヤ行音のyeです。

ですから、仮に江戸時代に江戸をYedoと発音していたとしても、それはその他の「え」についても同様にyeと発音していたということであり、つまりすべての「え」と「ゑ」が、区別なく「e」あるいは「ye」のどちらかで発音されていたはずです。

>  さて、19世紀ですが、上の urlの表で問題となるのは Hepburn(ヘボン)の表記です。三坂隆三『¥の歴史学』(東洋経済新報社)によれば、幕末(1867年)に刊行されたヘボン編訳『和英語林集成』では、へ、え、ゑがすべて ye と表記されているとのこと。明治10年代になって ye に代わり e という表記が現れたようです。つまり、明治2年に円(ゑん)がローマ字で yen と表記されたのは、当時のローマ字表記からみれば当然といえます。[1]

なるほど。『¥の歴史学』は読みたいと思っていた本ですが、まだ読んでいませんでした。そこではそういう経緯が明らかにされているのですね。さて、ここで渡辺さんが言っていることは、ひとつ上の段落で言っていることと矛盾していることがおわかりでしょうか。ヘボン以外のものは、すべてのeをye(je)で表記していますね。江戸(えど)も蝦夷(えぞ)も越後(ゑちご)も、すべてjeです。つまり、ここでも「え」と「ゑ」の発音上の区別はなく、要するにヘボンは、慣習的に使われてきたye表記をeに改めたということでしょう。

すなわち、かりに「円」のかな表記が「えん」であったとしても、「明治2年にローマ字で yen と表記されたのは、当時のローマ字表記からみれば当然といえます」。

>  江戸時代に ye が e になったとの説があるのですが、短期間に全国で同じ発音になったとは考えにくいので、やはり、幕末にも江戸をイェドと発音していた人たちがいたのでしょう。
>  あえて言えば、yenというローマ字表記が決まった時点で、実際は en と発音していたのに、yen という表記だけが生きていたという可能性がないとはいえない、ということになるようです。
>  現在でも、「え」を「いぇ」と発音する地方があるようですが、古い発音が方言として残った可能性がありそうです。

そうです。つまり、日本では方言においても「え」と「ゑ」の発音上の区別などは絶えて久しいのであります。文字が違うから発音が区別されていたはずだという考えに引きずられすぎではないでしょうか?

>  ところで、私は子供の頃から、ゑは「イェ」と読むものと思っておりました。最近になって、パソコンでは「うぇ」を変換しないとゑの字が出ないことを知り、驚きました。確かに、五十音図でもゑはワ行になっています。
>  ゑが「イェ」であるということを私に教えたのは、明治生まれの神奈川出身の家族のひとり以外に心当たりがありません。その人は、えは「エ」、ゑは「イェ」と区別して発音していたのではないかと思います。

したがって、これもおそらくは違うと思います。その方は実際には「え」と「ゑ」については区別せずに発音し、「ゑ」とはyeであるということを知識として(つまり俗解として)渡辺さんにお伝えになったのではないかと思います。ちなみに、私の場合は、ずっとweだと思っておりました。なのに、なぜ恵比寿ビールはYebisuなのか、そういうわけで今でも不明です(笑)。

>  ちなみに、造幣局の外国人技師が Yenを思いついたとか、en はインと発音されるといけないので Yen にしたなどという巷説は、私にとって噴飯絶倒ものです。これらの説をまともに検討するのは、少なくとも資料らしきものが出てきてからというこになりますね。

上の渡辺さんの話も、「え」「ゑ」そのものについての資料の検討はあまりなされていませんから、同じようなものだと思いますが…。要するにわからないということであって、その意味では俗説を並べた上で「わからない」としている造幣局の説明が、いちばん真っ当ではないかと思います(笑)。