33735 返信 Re:言葉に詳しいとんぷく君に質問:とんぷく君にヒント URL tpkn 2005/03/20 03:46
渡辺さん…。


> tpknさんにヒントを出したつもりが、私が回答することになってしまったようです(^^)

というか、あまりにも行き当たりばったりすぎてわけわかんないんですが…(笑)。

>  ん?この時代には「え」「ゑ」が ye であったことは、tpknさん紹介のHPにも書かれていたはずですが...当時のローマ字表記は、実際の発音を表わそうとしたものと考えるべきでしょう。
>  そもそも、ご紹介のurl にある橋本進吉『古代国語の音韻について』では、平安時代のe,ye,weが室町時代にはすべて ye になったと推定する根拠に、「室町時代の西洋人がyeで写した」ことをあげています。(岩波文庫, pp.157-8)
>  しかし、外国人による表記は、政治・文化の中心地の支配者層のことばに基づくものとおもわれますので、発音が日本の津々浦々まで同じだったことを意味しているわけではありません。

よくわからないのですが、いわゆる天草本といわれるような文献の著者であった初期の宣教師にしろ、ケンペルのようなオランダ人にしろ、拠点は九州ですから、九州の発音がかなり混じっていたのではないでしょうか。だとすると、京都や江戸でも必ずしも同じような発音だったとは考えられないことがひとつ、そしてもうひとつは、以下の件に関してですが、

>  なお、母音のeが、外国人には(子音から始まる) yeに聞こえたというのは、iとyが、どちらも「イ」に聞こえてしまう日本人の発想です。

これなんですけども、日本人はiとyを区別しませんが、スペイン人もイタリア人も区別しません(たぶんポルトガル人も)。で、南欧語のeや英語のeと、日本語の「エ」の母音は、発音が違います。また、渡り音のiは、いま現在我々も普通に発音している場合があります。たとえば3円の「えん」は多くの人が実際にはsan' yenと発音しているはずです。

当時のye表記は主に語頭でye、語中でeとなるものがほとんどで、「エ」の音価としてその二種類が自在に交代していたか、英語やスペイン語の広いeよりも若干狭いe であれば、語頭に限ってyやjを補うということも考えられるのではないかと思います。もちろん、定説通り、実際にyeに近い発音であった可能性もあります。音韻変化というのは一般に、複雑な発音から単純な発音という方向に起こるものですから、定説通りだとすると日本語のエは「e→ye→e」と変化したことになり、実を言うとかなり不自然ではあります。したがって、ローマ字で表記されたyeそれ自体を疑いのないものとすることも、実はできないのです。

>  tpknさんのいう「後段」の、「え」を「え」、「ゑ」を「イェ」と区別していた人がいたのでは、というのは別の話題として挿入したものです。

であればですね、せめて最初のほうで「え」と「ゑ」には昔から区別がなかった、という話を書くべきでしょう(笑)。でなければ、江戸がyedoでゑびすがyebisuだから、当然「ゑん」はyenなどと言われてもわけがわかりません。また、もし「え」と「ゑ」を日常的に区別して発音していた人が明治期に複数いたとしたら、橋本進吉その他の定説は根底から見直しを迫られるということになりますので、この点でも不可解だったわけです。

たとえばですね、エビスビールの「ゑびす」をyebisuと発音していたとしても、江戸絵(えどゑ)をedoyeなどと発音していた人がいたとはちょっと考えられないのですね。そういう意味で、え」を「え」、「ゑ」を「イェ」と区別していた人がいたという話は、おそらく思い込みあるいは勘違いのたぐいではないかと考えるのが妥当ではないかと思います。明治23年から発売された「YEBISU-BEER」という商標に引きずられた俗解と考えるのが、いちばんありうる線ではないでしょうか。

>  余談ですが、江戸時代には江戸を「ゑど」とする表記があります。

この表記は混用から来る間違いでしょう。辞書も、通常は「えど」を採用しています。「ゑど」は一般的には「穢土」で、これは「浄土」の反対でよく使われる言葉ですから、通常は混用は避けられていたのではないでしょうか。

>  ところで、 url を書いて、こっちを見ろ、あっちを見ろというのは結構ですが、せめて、そのページの記述のどこを見ろというのか くらいは明示してほしいものです。ウイリー君を探そうみたいな、urlの紹介はやめましょう。

いえ、これはわざとです。最初の投稿に関しては、渡辺さんが「ヒント」など出しくさったので、こちらも資料の提示にとどめたまでのことです(笑)。このYenの話はUnited Statesの訳語の話にSONGさんがチャチャ入れしたもので、そもそも問答有用であれこれ論じるような話題でもありませんから、最低限の資料だけ提示すりゃいいや、どうせ答えなどわからんのだし、ということですね。前回の投稿に関して言えば、紹介したURLのあとにそのサイト全体の主旨(「え」と「ゑ」の違い)を私の言葉でまとめてありますから、どの記述を見るとかそういう問題ではないわけですね。

ちなみにこの件について他の方と少し話した記録がありますので、これもURLを挙げておきますが、別にどこを見ろというものではありませんので、全体を読んでください(笑)。ただ、今回の投稿の主旨を簡潔にまとめたものにはなっていますので、なんらかの補足になるかもしれません。

http://otd9.jbbs.livedoor.jp/983591/bbs_tree?base=5093&range=1

>  ヘボンも最初はyeとしていたことは前の投稿に書いた通りです。明治10年代から辞書において ye が e になった理由は分かりません。ですから、私も一応、そこは従来のyeという表記が、当時の発音に合わせて e となった可能性がないわではないと、しております。

というかですね。厳密に言えば「yeという表記が当時の発音に合わせてeとなった」としか、通常は考えられないわけです(笑)。渡辺さんが『¥の歴史学』の内容を紹介してくださったおかげで私としては初めて謎が解けた思いなのですが、これって要するにひらがなでも見られる発音と表記の食い違いの問題でしかなかったわけですね。幕末にはすでに「え」はeとなって久しかったが、表記はyeのままであった。そこでヘボンは、表記を改良して実際の発音に近づけた。

>  なお、橋本進吉『古代国語の音韻について』では、「エ音オ音は、室町末期には ye wo の音であったろうと推察したが、京都語では今日では e o をとなっている。これは江戸時代において変化したのであろうが、その年代はまだわかっていない(エ音は九州・東北等の方言では明治以後も ye の音として残っている)。(p.174)としています。

言語学の常識からすれば、こういう基礎母音がわずか十数年の間に変化するなどということは、まあ通常は考えられないわけです。したがって、ヘボンが最初にyeと表記していた幕末に発音がyeで、その後発音がeに変わったから表記もeに変えた、などという推定はほとんど成り立たないのですね。まして何百年もyeだったものが突然eに変わったのだとすれば、それこそ何か特別な理由がなければ論証たりえません。

>  我家で、「ゑ」は「イェ」という発音だという教育を受けたという私の”証言”は、一応、それも史料の一つだと思ってます。

もちろんです。しかし、それはYEBISU-BEERがどれぐらい売れており、どの程度文化に影響を与えていたかという論証のときに使えるものではないでしょうか。

>  ところで、五十音図に「やゐゆゑよ(ya,yi,yu.ye,yo)」とするものがあるのですが、ご存知でしょうか?これは、「ゑ」が ye とういう発音であることを前提としたものです。

はいはい。五十音図にはいろいろありますよ。「アイウエヲ」なんてのもありますし、ヤ行エ段に、今では使われていないカナを入れたものもあります。

>  ちなみに、なぜ上の2つの説が私にとって"噴飯絶倒"ものかといいますと、
> 1) 造幣局(貨幣を製造するところだよ)のエンジニアに貨幣単位の決定をまかせるほど明治政府はいいかげん、あるいは、おちゃめだった?まさか(^^;

「貨幣単位の決定をまかせ」たのではなく、その表記をまかせたかも、と言ってるわけですね。それから、エンジニアって、今でもインドとかではエリートですけども、明治期の日本における外国人技師に、いろいろと教えを乞うたり意見を聞いたりするのがはたして「いいかげん」などと言えるかどうか。少なくとも通常の歴史感覚からすれば噴飯(絶倒?)するようなことではないと思いますけどね。福沢諭吉の一行がアメリカに言っていろいろ珍しいことを見聞してきたものを、今の若者が笑ってたら、その感覚を疑われても仕方ないのと同じです。

> 2) endを「インド」、endeを「インデ」と発音する欧米人がいる?英語圏でもenは普通に読めば [en] にしかならないけど...ずぶん発音のなまった人が円のローマ字表記を決めたもんだと。まさか(^^;
> というか、英語の[i]は、日本語では「イ」と「エ」の中間の発音で、[in]は「イン」より「エン」に近い。 例えば、it is は、「イティイズ」ではなく、「エテエズ」に近いのです。en が「イン」となるというのは、子音[y]も母音[i]も「イ」としか認識できない日本人の想像の産物です。

上でも説明しましたように、「end」と「エンド」では母音の発音は違います。で、なぜここでiの短母音の発音の話になってしまうのか…またしてもわけがわかりません(笑)。

いろいろと知識があるのはわかりますが、いまいちバラバラでつながってませんね。

ちなみに最初に言ってた中国語説ってのは、円と元はもともと同じ圓という文字の略字であり、元のピンインはyuanで発音はユェン、だから¥もそれに合わせてYen。ってやつですね。