33786 返信 Re:Re:共同謀議について(訴因5について) URL 五番街 2005/03/21 12:06
なるほど、毒芋虫さんの読んだ訴因状の訴因5には、次のように書かれているため、小林哲夫さんの理解は間違っていない、ということですね。

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斯かる計画又は共同謀議の目的はドイツ、イタリア及び日本が自己特有の圏内に----日本は東アジア、太平洋及び印度並に右地域内の又は之に隣接せる凡ての国家及び島嶼に----夫々特別支配を有することにより全世界に亘る軍事的、政治的及び経済的支配を獲得するにあり。
(この全文は末尾に記載)
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ところで、問題になっている小林さんの発言をもう一度、引用します。

#東京裁判で被告とされた人達は、一連の戦争を、世界征服を目論んで、皆で話し合って、計画的に進めた(共同謀議)、という種類の犯罪という構成を取っているのです。(#33488)

この文章を読めば、東京裁判の被告は世界征服を目論み、被告全員で話し合って、一連の戦争を計画して実行した(共同謀議)、という意味に解釈されると思います。

私がこの小林さんの発言に反発したのは、このように解釈したからです。おそらく烏龍茶さんも同様に解釈したのであろうと思います。

つまり、小林さんが、東京裁判の被告は世界征服を目論み、ドイツおよびイタリアと話し合って、一連の戦争を実行した、とでも書かれているのなら、私も烏龍茶さんも、ドイツおよびイタリアとの日独伊三国軍事同盟(条約)の内容からすれば、このような解釈が成り立つ(かも知れない)と考えたと思います。

しかし、小林さんの発言中の「皆で話し合って」という部分を、「ドイツとイタリアとで話し合って」と解釈することはできず、おそらく小林さん自身も、「被告全員で話し合って」と考えていたのではないかと思います。

ただし、もう一つの大きな問題は、この小林さんの発言を「東京裁判の被告は、一連の戦争を、世界征服を目論んで、ドイツとイタリアとで話し合って、計画的に進めた(共同謀議)、という種類の犯罪という構成を取っているのです」に変更して、果たして、この変更された発言が正しいのかどうか、ということです。

この検討を行う前に、まず考えなければならない問題は、「共同謀議」という語の定義です。

この定義について検討するために、銀行強盗というサンプルを考えてみましょう。

5人組の者が銀行に押し入り、拳銃や武器を掲げて金品を強奪したという事件があったとします。そして、その背後で、3人の者がこの強盗を計画したとします。

このケースでは、強盗を実行した5人組が罪に問われる以外にも、それを計画した3人の者も罪に問われることになります。この3人組に対して適用される罪が、共同謀議です。

つまり、共同謀議は、実行された犯罪の背後で、その犯罪の計画や立案を行うことであり、単なる机上の計画では罪に問われません。したがって、今回の議論のテーマに戻って考えれば、実行された侵略戦争や違法な戦争の計画・立案を共同で行うことが共同謀議の罪になります。

さて、このことを念頭に置いて毒芋虫さんが挙げた訴因5の全文を読んでみると、次の3点に要約することができます。

1. 前述の計画実行の共通の計画または共同謀議に参加した者は、その責任を負う。
2. この共同謀議の目的は、日本、ドイツおよびイタリアの3国が全世界の軍事的、政治的および経済的な支配を獲得することである。
3.これら3国は、米国、英連邦などに対する侵略戦争や違法な戦争を行うために、相互に援助を行った。

この訴因5の全文では、これら3国の共同謀議の目的は、全世界の支配であると述べられていますが、全世界、すなわち世界の全ての国々に対して侵略戦争などを行ったとは述べていません。3国が侵略戦争などを行ったのは、ここであげられている米国、英連邦などにとどまります。つまり、全世界の支配は机上の計画、あるいは漠然とした目標に過ぎず、実際の侵略戦争などの犯罪行為は、特定の国々に対してのみ行われたものです。

また、これら3国が相互に侵略戦争などを援助したことは、犯罪の幇助あるいは参加として罪に問われ、かつ、共同謀議の罪も成立します。しかしながら、この援助は実際に行われた侵略戦争などに限定されるものであるため、ここで挙げられた国々以外の国々を含む全世界を対象としているとは言えません。

したがって、この本文が示すことは、私の要約の第2項の、これら3国の共同謀議の目的が世界支配であることは訴因ではなく、単なる説明に過ぎず、第1項の実際に行った侵略戦争などの共同謀議、および第3項のドイツおよびイタリアが行った侵略戦争などへの援助が訴因であるということです。

ここで、ちょっと視点を変えて考えてみましょう。ヒデさんが挙げた「東京裁判がよくわかる本」では、訴因5として【世界支配のための独伊との共同謀議】とされており、私が挙げた「東京裁判」では、【同右(訴因1の地域と訴因4の国に対して戦争を行うための日独伊三国の共同謀議)】となっています。

この2つの要約の相違ははなはだしいものであり、あたかも、異なった2つの文章を要約したもののように感じられるほどです。

しかしながら、こうした相違が発生する原因については明らかです。「東京裁判がよくわかる本」では、この訴因5に関して、「世界支配」という目的のための「共同謀議」を罪とする、と考えているのに対して、「東京裁判」では、あくまで実行された特定の国に対する侵略戦争などの共同謀議を罪と考えているのです。前者には、このような、実行あるいは未実行にによって罪が問われるか否かが決定されるという考え方がみられません。こうした共同謀議に対する理解の仕方の著しい相違によって、全くことなる要約になったと考えられます。

さて、私としては、この2つの異なる共同謀議の定義あるいは理解の仕方について、前者の「東京裁判がよくわかる本」の定義は、机上の共同謀議を(あるいは、この共同謀議も)罪と見なすことであり、後者の「東京裁判」では、実際に行われた犯罪の共同謀議を罪と見なしていることから、後者の定義あるいは理解の仕方が、極東国際軍事裁判所条例の「平和に対する罪」の定義と合致し、かつ、一般的な犯罪概念に適合すると結論します。

もっとも、後者の要約には、私が要約した第1項が抜けているという問題がありますが。

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参考:毒芋虫さんが挙げた訴因5の全文
訴因 第五
全被告は他の諸多の人々と共に1928年(昭和3年)1月1日より1945年(昭和20年)9月2日に至る迄の期間に於いて共通の計画又は共同謀議の立案又は実行に指導者、組織者、教唆者又は共犯者として参画したるものにして前述の計画実行に付き本人により為されたると他の何人により為されたるとを問はず一切の行為に対し責任を有す。
斯かる計画又は共同謀議の目的はドイツ、イタリア及び日本が自己特有の圏内に??日本は東アジア、太平洋及び印度並に右地域内の又は之に隣接せる凡ての国家及び島嶼に??夫々特別支配を有することにより全世界に亘る軍事的、政治的及び経済的支配を獲得するにあり。而して右三国は其の目的の為め苟もその目的に反対する諸国、特にアメリカ合衆国、全英連邦、フランス共和国、オランダ王国、中華民国、ポルトガル共和国、泰王国、フィリッピン国及びソヴェート社会主義共和国連邦に対し宣戦を布告せる又は布告せざる一回又は数回の侵略戦争並に国際法、条約、協定及び保証に違背せる一回又は数回の戦争を行う為め相互に援助を為すに在り。
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極東国際軍事裁判所条例の第5条 (有斐閣 国際条約集から引用)

第五条 人並に犯罪に関する管轄
(前略)
(イ)平和に対する罪 即ち、宣戦を布告せる又は布告せざる
侵略戦争、若は国際法、条約、協定又は保証に違反せる戦争
の計画、準備、開始、又は実行、若は右諸行為の何れかを達
成する為の共通の計画又は共同謀議への参加。