| 33947 | 返信 | グランサコネ通信05−05 | URL | 前田 朗 | 2005/03/26 22:22 | |
| 2005年3月26日 *この通信は「報道」ではなく、時に伝聞・推測・未確認情報や感想を含むことをお断りします。 (1)3月24日 午前中は議題9の審議の続きでした。午後は「1503手続き」の秘密会議でした。政府委員以外は入れないので、午後は資料の整理と作成をしていました。イラク国際戦犯民衆法廷ICTIの最終判決をコピーして、人権委員会ロビーで配布しています。コピー、帳合い、配布を一人でやるので結構大変です。今週は100部配布しました。 議題9は世界中の重大人権侵害問題なので、次から次と各地の問題が取り上げられますが、やはりイラク、パレスチナ、イラン、スーダン、キューバなどが多く取り上げられます。アメリカ、カナダ、ニュージーランド、EUは連携を取り合っているのでしょう。 アメリカ政府は、世界を4つに分類しました。第1は、アメリカを中心とする自由で民主的で人権をもっとも大切にする国。第2に、アメリカが邪悪なテロとの戦いによって自由を回復しつつあるアフガニスタン、イラク、レバノン、サウジアラビア、エジプトなど。第3に、権力集中が懸念されるロシア、西サハラ、ベネズエラ。第4に、人権無視のキューバ、ベラルーシ、スーダン、中国、朝鮮、ビルマ、イラン、シリア。以上が現在の国際社会です。最後に、これらの国で抑圧されている人民に対して国際社会は、あなたたちは決して孤独ではない、自由と民主主義を必ず送り届けるというメッセージを送る必要がある、と。 これに対して、キューバや中国を先頭に猛反発したのは言うまでもありません。たいていキューバが切り込み隊長です。アメリカにおける人権侵害と、キューバに対する経済制裁の犯罪性を訴えていました。キューバ発言のときはよく拍手が起きます。 中国も「アメリカこそ人権侵害のチャンピオンである」と始めて拍手を呼んでいました(昨年も同じ言葉を使っていました)。中国は、アメリカの暴力犯罪は深刻であり、市民は安心して暮らせないと述べた上で、第1に、刑事裁判の誤りが多く、過去15年で10年以上の刑罰に関して320件の誤判があった、第2に、人種差別が激しく、刑事施設にいる70%以上が有色人種である、第3に、被収容者に対する虐待や拷問が絶えない、と批判していました。 (*320件の根拠は示していませんでした。私は、そんな少なくないよ、と思いますが・・・笑) フランスとドイツは沈黙しています。EUとしての発言にもちろん名前は参加していますが、議題9では存在感がありません。というか、ロビーにいってコーヒータイム。非難合戦には加わりたくないのでしょう。 NGOでは、パレスチナ、イラクのほか、トルコ・キプロス問題、ネパール、フィリピンなども取り上げられていました。国連のための国際青年学生同盟のヤン・レーンさん(WTIスウェーデン)は、アメリカ政府発言の直後の発言で、イラクのアブグレイブとファルージャを取り上げました。人民解放同盟のLIDLIPのヴェレーナ・グラフさんはトルコのキプロス占領を非難していました。 (*余談ですが、LIDLIPの議長はフランソワ・ウタさん(リューベン大学名誉教授、WTIブラッセル法廷裁判長)です。初めて知りました。私の無知も結構・・・(笑)。そういえば、日本でFrancois Houtartをフランソワ・ホウタートとか書いてあるのを見た記憶があります。ご本人がウタと言っていたし、みなそう呼んでいるし、スペルが頭にありませんでした。) (2)朝鮮・日本・中国 A 日本政府の反論 「昨日、朝鮮政府が拉致問題は解決したと述べたことに反論したい。この問題には満足の行く説明がなされていないし、全く何も解決していない。これ以上遅れることなく被害者を返すよう促す。過去の問題については日本政府はすでに見解を明らかにしているので繰り返さない。」 (*23日に、日本政府の発言があり、朝鮮、日本、朝鮮と応酬がありましたが、その続きで、日本政府の2回目の、最後の反論です) B 朝鮮政府の反論 「(前半はアメリカ批判)。次に、日本政府が言う拉致問題は基本的に解決した。過去の問題について、日本政府は戦争犯罪や人道に対する罪を隠蔽しようとしている。」 (*ここで議長が朝鮮政府の発言を止めました。「朝鮮政府の日本政府への反論権の行使は昨日2回行なっている。反論権は2回までと決まっているので、今の発言は記録から削除する」と述べました。各国政府やNGOもみな「当然」と思っていました。反論権は2回までとはっきり決まっていますし、たしかに朝鮮政府は23日に2回反論権を行使しています。私の近くにいた白人女性たちは「3回なんてルール違反よ」と大声で話していました。 ところが、朝鮮政府が「ポイント・オブ・オーダー(議事進行に関する発言)」を行ない、次のように述べました。 「同じことが2年前にもあったが、その時のことを説明したい。反論権の行使は、同じ日には2回までと決まっているし、同じ議題でも2回までと決まっている。しかし、2年前には、2日目になった場合には反論権が認められた例がある。われわれは同じルールの適用を要求したい」。 議長は驚いて「2年前は私はいなかった」とか、どうでもいいことを述べてバタバタした後、人権委員会事務局に確認を求めました。すると、事務局が即座に、「2年前にそういうことがありました。2003年の文書**番と**番と**番に記録が残っています。同じ日の反論は2回まで、議題ごとの反論は2回までと決まっていますが、日を超えての反論権行使の回数は決まっていなかったので、そのときには反論権行使が認められています」。朝鮮政府の指摘があってから30秒とたたないうちに3つの文書を示して回答したのには驚きました。凄い。 というわけで、朝鮮政府の主張が認められました(このあたり、もう何年もジュネーヴにいるキム・ヨンホさんならでは。毎年のように大使が入れ替わる日本政府だとこうはいきません)。しかも、議長が途中で中断させたという理由で、最初からやり直しとなって、朝鮮政府はまた次のように述べました。 「拉致はすでに基本的に解決した。過去の犯罪については、日本が犯したジェノサイドや性奴隷制や拷問は全く解決していない。歴史に前例のないような明らかな犯罪であり人道に対する罪であるのに、日本政府は責任を果たしていない。国際社会はこうした犯罪を許してはならない。」 C 日本政府の反論 「朝鮮政府の説明とは異なって、すでに述べたように拉致は全く解決していない。誠実に解決するように強く促す。過去の問題については述べる必要がない」 (*上の経過で日本政府の反論も1回増えました) D 朝鮮政府の反論 「拉致は基本的に解決した。歴史的に重大で巨大な犯罪を行なった国は反省するべきなのに、日本は戦争を正当化し美化しようとしている。教育でも戦争を美化している。いまや他国に軍隊を送り、ミリタリズムが復活している。日本のこういう行為を放置しておくと危険であり、新たな破局(カタストロフィとハザード)を招く。わが国がこの問題を提起し続けているのは、このためである。日本政府はすでにその見解を明らかにしたと述べているが、それはまた犯罪を続けるという姿勢を明らかにしているという意味である。」 (*日本政府の反論で終わりと思っていたら、議長が朝鮮政府の再反論を認めました) E 中国政府の反論 (*日本政府が「過去の犯罪については述べる必要がない」と言った瞬間に中国政府が挙手して発言を求め、朝鮮政府のすぐ次に、次のように述べました) 「日本政府は過去の問題について述べないというので指摘しておきたい。日本では首相が戦争神社に参拝している上、歴史教科書をとりつくろっている。アジア太平洋で被害を受けた人民は、日本に対してこの問題を提起し続けるであろう」 (*それまでずっと朝鮮と日本の応酬で、昨年と同様でしたが、中国が発言したときには会場が静かになりました。短いけれども、ゆっくりと、響くような声で話していたのが印象的です。日本政府は反論権があるのに、何も言いませんでした) (3)中東フォーラム 24日の昼には中東問題の2つのNGOフォーラムがありました。 国連ウオッチ主催の「国連と中東:バランスのとれたアプローチ」 国際法律家委員会主催の「占領下パレスチナにおける壁建設に関する世界法廷勧告的意見:合法性と現実」 前者はアメリカ系(イスラエル系?)のミーティングということで、「バランスのとれたアプローチ」という名称一つである程度中味を推測できます。そちらの方が面白いかとも思ったのですが、やはり国際法律家委員会の方に行きました。同じ時間に2つのフォーラムがあったため、掛け持ちで行ったり来たりしている人が多かったようです。しかも、前者にはアラブ系のNGOが押しかけて論戦を挑んだということで白熱だったようです。後者には国連ウオッチの男性がひとり来て批判的な発言をしていました。国際司法裁判所の手続きが公平さを欠いていたという趣旨の発言。これにはパネラーが「意見は全員一致で出されている。アメリカの判事でさえも壁建設には批判的である」と答えていました。後者の議論は最終的に、「イスラエルにおいて平和と民主主義を求める人々との連帯・協力を再構築しなければならない」というものでした。勿論永年にわたってそうした努力をしてきたわけですが、徐々に弱まっているという認識を共有しているようでした。Al-HaqやSave the Childrenなどを中心に、イスラエルの民主化の努力を続けるので協力して欲しいと。中東問題については、日本では「あれか、これか」の二者択一的な話になりがちですし、私もそのレベルを超えていないので、実に様々な立場があるのには驚かされます(当たり前なのに)。このため私には、議論の様子を伝えることができません。 ************************* このところ朝方は曇り空で、霧が出ます。先日は霧で真っ白でした。もっとも、昼前から晴れます。25日はBig Fridayのため休日です。26日(土)、27日(日)をはさんで、28日がイースターですから、4連休です。ちょっとした春休み。人権委員会も勿論お休みです。26日の夜、27日の朝からサマータイムに変わります。これまで日本との時差は7時間でしたが、27日から8時間になります。議題9は29日に再開です。 |
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