34055 返信 韓洪九の韓国現代史 韓国はどういう国か 韓洪九著 高崎宗司監訳 URL inti-sol 2005/04/02 01:36
タイトルの本を「左翼かつ国粋的」なハンギョレ新聞に近い内容だと称する方がいます。それが事実かどうか、まああえてコメントは避けましょう。以下の内容を読んでみなさまの判断に任せます。事実として、この本は韓国でベストセラーになりました。
また、問答有用での議論に示唆を与えるものとなれば幸いです。

以下すべて引用

日本語版への序文P5

隣国の歴史はしばしば時刻の歴史を照らす鏡になる。韓国と日本は、世界史でも珍しい隣国間での「植民地」と「植民地宗主国」という特殊な経験をした。その負の遺産は、何度も繰り広げられた日本の教科書問題や、日本の極右政治家の「植民地期」を美化する発言に対する韓国人の激しい反応に見られるように、今も消えてはいない。この本に掲載された文章は日本の読者のために書かれたものではないので、韓国の近現代史と関連して日本の読者にぜひ考えてもらいたい枢要な主題であるにもかかわらず、取り扱えなかった問題がたくさんある。特に金正日政権が日本人拉致を認めた後で日本に起こった在日朝鮮人に対する攻撃を見れば、太平洋戦争期の朝鮮人に対する強制連行問題などを思い浮かべないわけにはいかない。

韓国人はしばしば韓国社会が抱えている多くの問題が日本の植民地支配に由来すると恨む。私もまたそうした考えから免れないでいるというのが率直なところであるが、解放以後60年近い歳月が流れたにもかかわわらず、日本のせいだけにするのは正しくない。日本人が残していった否定的な遺産を精算できなかったのはまさしくわれわれ韓国人であり、ときにはわれわれ自身がそうした否定的な遺産を再生産してきたためでもある。日本軍が大韓帝国時代(1897-1910年)の義兵に対してほしいままにした虐殺、間島(今日の中国延辺)での朝鮮人移民に対する虐殺、関東大震災当時の朝鮮人虐殺は、もちろん批判されて当然な行為である。しかしこうした問題に対して日本人を非難するだけで、朝鮮戦争前後の一時期、朝鮮民族内部で行われた残酷な民間人虐殺や、朴正熙政権当時にヴェトナムに派兵された韓国軍がヴェトナムの民間人を虐殺したことに対して目をつぶるならば、韓国人も、自分たちが非難してやまない日本の軍国主義者やその後裔たちと同じになるのである。日本軍慰安婦問題も同様である。この残酷な歴史が長い間埋もれていたのは、日本人によって隠蔽されてきたからだけではない。韓国人が「民族の恥」として、この問題に目をそむけていたばかりか、朝鮮戦争期−もちろん規模や動員の性格は日本軍慰安婦と同じ次元で比較することはできないが−韓国軍も慰安婦を動員し兵士たちに供給したし、ヴェトナム派兵のときには慰安婦を一緒に送ることを考えたためでもある。「清潔で安全な性」を国家の管理下に軍人に提供するという行為は、朴正熙政権時代の在韓米軍基地周辺でのいわゆる「基地の村浄化運動」にそのまま再現された。多くの韓国人が在日韓国人・在日朝鮮人に対する不当な差別に対して怒っている。しかし、日本と同じように「単一民族」を標榜する韓国で、華僑は「在日」とまったく同じ立場におかれている。日本が残していった長い軍国主義時代の遺産は兵営国家と化した韓国でそのまま生き続けてきたし、軍隊式の文化は今も韓国社会のすみずみで猛威を振るっている。

もちろん、韓国国民がこうした過ちを繰り返したからといって、日本の軍国主義に免罪符が与えられるわけではない。私を含め多くの歴史学者や市民運動家が韓国で韓国現代史の暗い側面を提示しているように、日本でも多くの友人たちが日本の歴史の暗い側面を洗い出している。ヴェトナム戦争真相委員会の活動を通して、どこの国でも自分たちの行った間違いを直視し、反省することがどんなに難しいことであるかを実感した私は、日本で日本軍慰安婦問題を提起し深化させた方たちの労苦に対して心の底から敬意と連帯感を覚える。(以下略)

原版の序文(P16)
おそらく私たちの社会の大多数の人々はテロリズムに反対でしょう。あの遠いヨーロッパや中東で、名もないアラブの武装勢力によるテロ行為が起こると、例外なく新聞や放送はテロリズムを批判します。しかし、安重根「義士」はどうでしょうか。汽車を降りた武器も持たない政治家(伊藤博文)を拳銃で暗殺した行為は、まさに典型的な個人テロ行為ではないでしょうか。テロリズム一般が悪いことだとすれば、安重根「義士」の「義挙」だけが立派な行為だと言えるでしょうか。安重根義士の行為が正しいことだったとしたら、どんなテロ行為も正当化できないという命題が間違いになり、テロリズム一般が悪いことだとすれば、安重根義士の行為はいかなる理由でも正当化できないのです。
(中略)
問題は、観点と基準なのです。起きた出来事は明らかに一つです。安重根義士は、明らかに伊藤博文を撃ち殺しました。(中略)否定することのできない事実です。しかし、どんな立場に立つかによって、その行為の意味が違ってくるのです。安重根義士は、大韓帝国の義兵将として、我が国を侵略する日本国の首魁・伊藤を殺したと主張しました。彼の立場に立つのか、日本帝国主義者の立場に立つのか、でなければ日帝の立場と一部重なりますが、個人テロ行為を批判する立場に立つのかによって、その行為の意味は完全に違ってくるのです。だから歴史はやっかいなのです。(以下略)