| 34230 | 返信 | グランサコネ通信05−12 | URL | 前田 朗 | 2005/04/12 16:20 | |
| 2005年4月12日 *この通信は「報道」ではなく、時に伝聞・推測・未確認情報や感想を含むことをお断りします。 休日はシュヴィーツに行って来ました。スイス中央部にある小さな田舎町ですが、「スイス」の語源になったところです。1291年の盟約者団結成時のシュヴィーツ、リュットリ、そしてウィリアム・テルのアルトドルフ。私の好きなルツェルンの近くなのに、今回初めてシュヴィーツまで足を伸ばしました。 このところ寒波襲来で、9日はどかんと雪。真っ白なリギ、シュヴィーツ、アルトガウでした。10日は抜けるような青空で観光日和とばかりに歩き回りましたが、気温は上がらず、とても寒い一日でした。11日も強風。 シュヴィーツは1642年の大火事で半分焼けたそうで、中世の町並みは残っていません。市役所と聖マルティン教会を中心にした町の構造は変わっていませんが、古い建物は市役所以外は、あちこちに散在しています。町の真ん中に国立スイス歴史博物館があります。ベルンやチューリヒではなく、この小さな町につくられているのですが、それもスイスの発祥地だからです。ただ、展示は充実とは言いがたい。スイス各地にたくさんある歴史博物館と比べても見劣りします。 スイス発祥の地として売り出せば観光財源を補えるのですが、中世の町並みが残っていないため、観光化は進んでいません。周囲は山ばかりですが、スキー場開発もしていないので、観光客はルツェルン、リギまでで止まります。テル伝説に関心のある人はアルトドルフに行ってしまいます。シュヴィーツで一日を使ってしまう観光客は多くはないようです。住民にとってはその方がいいかもしれませんが。 1)4月11日 国連人権委員会は11日朝から議題15(先住民)に入りました。他の議題と違って、議題15は最初から11日の午前にやることに決まっています。先住民のNGOが財政的困難から短期間しかジュネーヴにこれないため、議事進行の遅れで日程が変化しないようにしています。先住民は日曜に来て、月曜に人権委員会に参加して、火曜に帰る人が多いのです。他の議題に関心のあるNGOには不公平感が残るのですが、「先住民世界協議会」というNGOが発言するときは、毎回、「委員の皆さん、NGOの皆さん、私たちのために日程調整をしてくれてありがとうございます」と丁寧な挨拶をしています。 議題15では、カナダ、アメリカ、ラテンアメリカ、北欧の問題が多く扱われました。いつもは「人権優等生」のように振舞っているカナダやスウェーデンもこの日ばかりは様子が違います。 議題15が終わって、議題13(子どもの権利)の残っていた分をやり、その後、議題14(移住労働者、少数者など)に少しだけ入って11日は終わりました。12日はほとんど議題14です。 A)国際人権活動日本委員会(JWCHR) JWCHR(前田朗)は、議題13で次のように発言しました。 第一に、2002年9月以来、在日朝鮮人に対する暴力と差別が起きている。民族衣装のチマチョゴリを引き裂く事件である。これまで何度も国連人権機関に報告されているが、日本政府は防止策を講じていない。第二に、先週韓国の性奴隷被害者シム・ダルユンさんが証言したように、日本軍は12歳の少女まで性奴隷にした。驚いたことに、日本政府は先週この人権委員会で、20万という性奴隷被害者の数について「根拠がない」と発言した。1991年以来我々は日本政府に被害者数を明らかにするように要求してきたが、日本政府は調査することも資料を公開することも拒否して責任逃れをしている。第三に、東京都は枝川朝鮮学校の土地を収用しようとしている。東京都は、なぜ朝鮮人が枝川に住み学校を作るようになったのか、在日朝鮮人にとって朝鮮語教育がなぜ必要かを考えるべきである。 B)アジア女性資料センター(AJWDC) AJWDCは、議題13で次のように述べました。 日本政府は第二次大戦時の資料を隠蔽し、子どもたちの目を歴史の事実からそらそうとしている。教科書問題は1950年代から続いているが、先日検定を通過した教科書は、アジア諸国からの強い批判にもかかわらず、「慰安婦」記述を削除している。ある教科書は戦争を正当化し、アジアの人民を解放しようとしたかのように描いている。中国、朝鮮半島、日本の市民社会では共通の教科書をつくる取り組みがなされている。この取り組みは欧州の例に学んだものである。 *********************************** 1)被害者の数については、日本政府は昨年の人権委員会で初めて「20万には根拠がない」と述べました。その時はそのまま終わったのですが、今回また同じ発言をしたので、私の発言で触れておきました。 この問題は1990年の国会質問から始まっています。キム・ハクスンさんが証言したのは1991年です。国連人権委員会に報告されたのは1992年です。クマラスワミ報告書が出たのは1996年。日本政府が「自責の念。お詫び」と公表したのも同じ時期です。当時から私たちは日本政府に真相解明を要求して来ましたが、政府は未だにまともな調査をしていません。 一方で「アジアの女性たちに苦痛を与えたことに自責の念。お詫びする」などと言ったすぐ後に「数には根拠がない」と述べている遠藤大使は、本当に何を考えているのかと不思議に思います。15年間調査もせず、資料は隠蔽したまま、「お詫びする」が、「数には根拠がない」。こうして日本政府は恥の上塗りをするのです。反省も謝罪もせず、ごまかしてばかりと思われるのは当然です。自責の念とか、お詫びとか、道義的責任を果たすとか言うのであれば、自ら調査して数を明らかにするのが最初の責任です。 政府だけではありません。南京大虐殺が典型ですが、正確な数が不明であることをいいことに、数をめぐるニセ「論争」をでっち上げて事実をごまかし、責任逃れを図る日本人もたくさんいます。そのことで恥の上塗りをしていることにも被害者にさらなる苦痛を与えていることにも気づかない愚かさ。果てしない無責任。 2)AJWDC発言は、メンバーがすでに帰国したため、私が代読しました。昨年夏の人権小委員会では「代読は認めない」とのことで、ばたばたしたのですが、今回念のために事務局に聞いてみたところ「代読でもいい」とのことでした。人権委員会と人権小委員会とで異なるのか、それとも国連事務局メンバーによって対応が異なるのか、わかりません。ともあれ、今回はOKとのことで、無事代読しました。 3)昼休みは、「中国の人権状況」というフォーラムに参加しました。自分の発言を控えていたので参加予定はしていなかったのですが、直前に在日中国人がやってきて、「魏京生の中国民主化グループがフォーラムをやるのでぜひ」と誘われました。「魏京生基金」というNGOもできているのですね。フォーラムで発言したのは、フランス在住、アメリカ在住、スウェーデン在住、ドイツ在住の中国人です。政治囚に対する拷問、宗教に対する弾圧(法輪功)、天安門事件の被害者家族の証言、ジャーナリストに対する弾圧など当事者やNGOの発言が続きました。このテーマは、すでに終わった議題9や議題11のテーマなのですが、都合がつかなくて11日になったそうです。11日は海外在住中国人がたくさん来ていました。 4)議題9や10の決議案は11日締め切りでした。これまでEUが提出してきた「朝鮮の人権状況」の決議案も出ていますが、今回はそれに日本政府も相乗りしたようです。すでに日本でも報道されていますね。 以前、死刑に関する決議案(死刑廃止を求める内容)をイタリアが提出したときに、正式の議論の前に決議案が回覧されたことが手続き違反だとして揉めた事がありましたが、そんなことにはお構いなしに、自分に都合のいい決議案をマスコミに流す政府と、それをそのまま報道するマスコミが日本にはある、ということです。拉致問題がからんでいますから、取り上げる政府、報道するマスコミ、それ自体は正しいのですが。 マスコミの特質は、フジモリ問題も、性奴隷制問題も、朝鮮人差別問題も、日本政府にとって都合が悪いテーマは報道せず、都合のいいテーマだけ報道していることです。こういうところは、日本、アメリカ、中国は実はそっくりだったり。 ちなみに、ジュネーヴの国連欧州本部には、NHK、朝日、読売、毎日、日経、共同、時事が常駐しています。国連だけではなく、人権高等弁務官事務所、難民高等弁務官事務所、ILO、WHO、WTO、国際赤十字など多くの国際機関があるため、ジュネーヴは国際ニュースの主要発信地のひとつです。その情報が日本にどのように流れるか、NGOももっと注目するべきなのですが。 5)国連人権委員会では、本会議以外にも多数の会議が行なわれています。本会議は毎日10時から1時と、3時から6時です。たまに昼休みも続けたりします。それ以外に、第一に、決議案を準備している政府がその決議案に関する会議をします。多くは提案する政府だけの会議ですが、時に公開の会議もあります。第二に、人権高等弁務官事務所が各種テーマでセミナーを開きます。第三に、NGOがそれぞれのテーマで会議を開きます。たくさんありすぎて、どこに行くか悩むような状態です。ですから人権委員会の様子を把握するには、チームで行動しないとどうにもなりません。 こうした会議は、以前は、事務局に行って確認するか、チラシを見るかして、会場に行く形でした。しかし、昨年から、「パラレル・ミーティング」ということで事務局がアナウンスするようになりました。そして、今年からは「非公式会議情報」というニュースを国連事務局が出すようになりました。そのニュースを見れば、いつ、どこで、誰が会議を開いているかすべてわかります。その意味では便利になりました。チラシよりも、ニュースを見れば一目で分かりますから。 例えば4月11日には、政府や国連事務局が主催した会議は28、開かれています。カナダ政府は言論の自由の決議の会議を開きました。ポーランド政府はHIV、スイス政府はネパールの人権、カナダ政府はさらに先住民の権利、デンマーク政府は拷問の権利など、決議案を担当している政府はそのテーマで会議を開きます(多くは非公開で、われわれは参加できないのですが)。日本政府は「カンボジアの人権」決議案を担当しているので、何度か会議を開いています(非公開)。 政府とは別に、NGOも部屋を借りてフォーラムを開きます。11日には、例えば、上に紹介した「中国の人権状況」のほかに、NGOウーメンズ・コーカスの「女性の人権」、国際人権情報の「グアテマラの人権」、ヒューマン・ライツ・ウオッチの「テロ容疑者に対する拷問」(本当はここに出たかったのですが)などがありました。 4月12日にも決議案担当政府は同様の会議を開きます。さらに、国連事務局は「人権擁護者の人権保護」の会議、オーストラリア政府は「各国の国内人権委員会」、メキシコ政府は「反テロにおける人権侵害」などを開きます。NGOは、「地球の正義」というNGOが「人権と環境」、アジア人権発展フォーラムが「人権擁護者の保護」、トランス・ナショナル・パーティが「アメリカとアフリカの死刑」などを開きます。このところ「人権擁護者の人権」というテーマが増えています。特に紛争地において、ジャーナリストや、国際赤十字や「国境なき医師団」などの活動にも困難を生じているためです。 |
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