34262 返信 グランサコネ通信05−13 URL 前田 朗 2005/04/13 16:26
2005年4月13日


*この通信は「報道」ではなく、時に伝聞・推測・未確認情報や感想を含むことをお断りします。

1)4月12日

12日午前は「特別討論」が入りました。コフィ・アナン事務総長が提案している人権委員会改革をめぐる議論です。各国政府が続々と発言していましたが、すべて改革に賛成の発言です。誰もが、人権保護の重要性、人権委員会が果たしてきた役割の重要性を強調し、それにもかかわらず世界中で重大人権侵害が起きていることに言及し、効果的な人権保障のためには、人権委員会を改革して、「人権理事会」に「格上げ」することに賛成しています。人権理事会として、権限を強化するということです。アムネスティ・インターナショナルなどいくつかのNGOも発言しましたが、改革に賛成したうえで、NGOの役割をこれまでと同様に保障するべきと主張していました。

しかし、そう簡単な話ではないと思います。

第1に、国連憲章を改正しなければならないのですから、「人権委員会改革」だけの範囲に留まりません。その他の国連改革と関連する話になってしまえば、困難がたくさん生じてきます。

第2に、安保理事会改革との関連が問題になります。12日の発言ではみなこの問題に触れたがりませんでしたが、先行している安保理事会改革と、人権委員会改革が必ず関連します。となれば、国連総会におけるロビーでの取引材料にされることは目に見えています。

第3に、人権理事会の構成、所在、理事の選任など具体的な問題に入れば、「総論賛成、各論反対」が続出することも明らかです。アフリカ諸国を代表して発言したエジプトはこうした点に踏み込んでいました。人権委員会は53カ国で構成されていますが、人権理事会として安保理事会並みにするとなると、構成国を減らすことになります。総会での選挙によるのか。地域バランスはどうするのか。理事会ならニューヨークに移すのか、それともジュネーヴなのか。

第4に、人権委員会よりも効果的な人権理事会といっていますが、果たしていかなる意味で効果的なのか。人権委員会は人権基準をつくりはしますが、いつも議論してばかりで、実際に重大人権侵害が起きても抑止能力がないから効果的ではないといえばその通りですが、「だからこそ意味がある」ともいえます。ルワンダ、スーダン、コンゴ民主共和国のような重大人権侵害が起きているときに効果的な措置を取る人権理事会となると、そこでの効果的措置は、安保理事会やNATOによる「人道的介入」という武力による強制措置になりかねません。それで人権保障ができるとは思えません。武力でないとすれば、経済制裁ということになるでしょう。これも人権保障にはつながりません。人権理事会に強制力を持たせて効果的な人権保障を、という考えには疑問があります。

韓国政府は「アジア諸国を代表して」発言しました。これには一瞬驚きました。これまで、EU諸国が典型ですが、すべての政府が発言すれば時間ばかりかかってしまうので、EU諸国の一致が見られる場合には、オランダとかイタリアが「EUを代表して」発言してきました。今回はルクセンブルクが何度もやっています。最近は同様に、「アフリカ諸国を代表して」「アラブ諸国会議を代表して」「ラテンアメリカを代表して」「フランス語を公用語とする諸国を代表して」といった形での発言をよくしています。「フランス語を公用語とする諸国を代表して」の部分はフランスが意地でつくりだした感じがしないでもありませんが。こうしたやり方ができなかったのがアジアです。それが今回、韓国が「アジア諸国を代表して」発言しました。このためには日本や中国の了解を取っているはずです。私が記憶するかぎりでは、10年来、日本が「アジア諸国を代表して」発言したことはありません。それどころではなく、「性奴隷の責任を取れ」と言われている始末ですから。中国も「アジア諸国を代表して」発言したことはありません。それが韓国によって実現したのです。今後にどう影響するのか興味深いところです。

12日午後は議題6と7に関する決議を一つずつ採択しました。

決議案12「宗教の中傷との闘い」

イスラム会議機構を代表してパキスタンが提案しました。9.11以後、世界各地でイスラムに対する差別と偏見が蔓延していることへの対策を求める決議です。「世界のいくつかの地域で、宗教に対する否定的なステレオタイプや、宗教や信念に関連する不寛容と差別の現象が起きている」「宗教への中傷キャンペーンが行なわれ、ムスリムの選別が行なわれている」といった指摘が多数続き、国連加盟国、人権高等弁務官などに多数の施策を要請する内容です。キューバ、中国が支持発言をし、EUを代表してオランダ、そしてアメリカが反対意見を述べました。投票の結果は、賛成31、反対16、棄権5で採択。

決議案9「発展の権利」

非同盟諸国会議、中国、ロシアによる決議案で、マレーシアが提案しました。発展の権利宣言を踏まえて、作業部会の任務を延長し、人権小委員会や人権委員会で発展の権利を検討するのを財政的にも支援する内容です。アメリカが反対意見を述べました。投票結果は、賛成48、反対2、棄権2で採択。

今年から投票方法が変わり、押しボタン式になりました。議長がコールすると、52カ国の代表がいっせいに賛成、反対、棄権のボタンを押し、それがパネルに表示され、一瞬で結果が判明します。すべての政府の投票内容がわかります。昨年までは、52カ国順番に口頭で「賛成」「反対」を表明していたので時間がかかりました。

12日午後、2つの決議の後は、議題14の一般討論に戻りました。

毎日のように「イラク国際戦犯民衆法廷判決」と「日本軍性奴隷制発言集」をコピーして配っています。「判決」のほうは3月からずっとこまめにコピーしていました。持って歩くのは重いのでたくさんはコピーできません。毎朝20部ほどつくっていました。「発言集」は8日から、6日と7日の発言をまとめてコピーしています。知り合いにはすべて配ったので、あとは本会議場の外のテーブル(NGOのチラシ置き用)に置いておきます。