35272 | 返信 | アヘン戦争と植民地主義について/小林さんへ | URL | タラリ | 2005/05/25 22:39 | |
小林さんの主張は 1.「当時はアヘンはたばこと同じように単なる嗜好品と見られていた」 2.「イギリスは中国の一方的アヘン焼却に怒って戦争をしかけた」 3.「だからイギリスの気持ちも理解しなければならない、泥棒にも三分の理がある」 です。 1.たばこと同じような嗜好品と見られていたとすれば、なぜ、議会で道徳的な非難がおきたのでしょう。アヘンが依存症を起こし、心身を冒す危険な薬物であったことがすでにイギリスで知られていたからではないですか。 2.清朝政府はすでにアヘン禁止令を出したが、イギリスはこれを冒してアヘン密輸出をしました。中国が国内法に基づいて密輸業者を罰したり密輸品を没収するのは中国側の専管事項であり、イギリス側と相談するようなことではありません。これを「一方的」と表現したことによって小林さんは中国の主権侵害を正当化したことになります。 #小林さんがアヘン戦争を肯定しないといいつつ、その舌の根の乾かぬうちに「イギリスの立場から」アヘン戦争を擁護してみせることは複眼的とはいいません。主張の分裂です。 3.「イギリスの気持ち」というのがさっぱりわかりません。そもそも、小林さんはイギリスのアヘン戦争開始の理由をまったく説明していません。どういう主張をしたと認識しているのですか。そのどこに三分の理があると言うのですか。 特異な主張を展開されるのは構わないのですが、小林さんにおいてはその主張を支える例証を【常に】欠いていることが最大の欠陥です。 同様の誤りは植民地化の議論にも見られます。 小林さんの主張は ・・・イギリスはインドを文明化しようとした、これはイギリス人が当時そう考えた、ということである。イギリスの海外侵略は悪意だけではなく善意もあった。 植民地主義は異民族支配という点で決定的に否定されるべき思想です。 しかし、植民地主義の功罪を冷静に計量して、歴史の教訓とすべきだ、ということです。功罪の「罪」の方は既に充分強調されていますから、私は「功」の方を強調しているだけです。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 植民地化は本国の経済的な欲求に基づくものでした。文明化とは西洋が持っていた知識、学問、技術を伝播することに他ならないでしょう。しかし、西洋諸国で植民地に対してそのような事業を積極的に行った形跡はありません。 もちろん、植民地の産業をおこしたり、交通を整備したり、支配システムを完備するために植民地支配下の住民の政治組織を整備したりすることは行われました。これはあくまで宗主国の経済的要求を満たすための措置であり、その目的の範囲内の措置です。植民地を「文明化しよう」という善意に基づく行動とみなすことはできません。 歴史において自己の利益のためにのみ行動した結果、図らずも他の国、他民族の発展に利するということはあります。したがって、植民地化の功と罪というものは必ずあります。 植民地主義がもたらした歴史的な「功」は西欧諸国、帝国主義列強の経済発展をもたらしたこと、西洋的価値観を世界に広めたこと、アジア・アフリカ・ラテンアメリカの民族意識を育て、民族国家の成立に寄与したこと、市場を通じて世界をひとつに結びつけたことであると思います。列強自身の経済的利益を除けば、これらは意図して行ったことでも、善意で行ったことでもありません。 しかし、問題は西欧諸国が【善意から発して植民地化をした】という小林さんの主張の当否です。宗主国の人間の中に「文明化してやった」とか「善意でした」と思いこんだり、主張するものはいたでしょう。そういうものがいたことと、善意から発して植民地化をしたという事実認識は別のことです。「善意でした」とはリターン以上のことを施したというのでなければ、言えません。 そもそも小林さんは例証をしていません。 特異な主張を展開するにもかかわらず、その例証がまったくない、自らの思いこみによる判断だけを唐突に示す、これは小林さんの議論においていつの場合にも見受けられる事象です。 |
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