35913 返信 2005年03月18日 穀物袋を巡っての騒ぎRe:援助食糧「横流し」疑惑とタンゴさんの論理思考能力 URL 森永和彦 2005/07/08 22:46
http://www.hanknet-japan.org/current/

_世話人の上野です。

_北朝鮮の民衆の「救済」だの「解放」だのを名目に、日本の北朝鮮憎悪を煽っているある日本の団体が、「外国から支援された穀物の袋が市場で使われている。横流しの証拠だ」と喚いており、先月、日本のマスコミがそれを報道した。あまりに馬鹿馬鹿しいので全く気が進まないのだが、見解を聞かれる事も多いので、一応ここで私の知っている事を簡単に記しておく。

_この団体は同じ事を一昨年もやっており、その時も、人道に関心はなくともゴシップには目がない日本のマスコミは一斉に報道した。そもそも袋がそこにあるからといって、別に元の中身も一緒にあるとは限らない。もしそれが「横流し」だと言い張るのなら、それがどこから来たものか追跡していなければ、話にならない。ハンクネットとも交流の深い、新潟NGO人道支援連絡会の河村邦彦代表は一昨年に北朝鮮を訪問し、袋がごく普通に再利用されていることを明らかにした。朝鮮新報が河村氏へのインタビューを詳しく報じている。

_日本は既にワンウェイ型経済の大量消費社会となり、使い捨てが当たり前になっているが、北朝鮮は物資が不足しているだけでなく、旧来の循環型社会を維持している。ものは大切にする習慣がしっかりと残っている。従って、河村氏が指摘しているように外国からの丈夫な袋であれば、修繕してでも、使えるものは使い回すのは不思議でも何でもない。

_私も昨年10月に訪朝し、ピョンヤン市の大きな公設市場で様々な国の穀物袋が再利用されているのを確認した。またADRAスイスが支援をしている子ども用パン工場を訪問したとき、オーストラリア政府からの小麦粉が山積みになっているのを見た。我々ハンクネット一行は、袋の中身はそっちのけで、使用済みの袋をどう処分しているのかなどを工場の責任者に質問した。別に袋を厳重に管理する義務など誰にもないのだが。責任者は「何故そんなにみんなで袋、袋というのか」と逆にこちらに質問した。そこで日本の騒ぎを説明すると、「馬鹿馬鹿しい」とあきれられてしまった。

_私自身はそれで目が覚め、袋の事は阿呆らしくなってその後の日程では考えない事にした。しかし我々と同行した伊藤孝司氏はジャーナリストだ。どれだけ下らない事でもしっかり取材しよう、と思われたのだろう。その後も一連の取材の中でこの「袋の再利用」について追っていた。その成果が「月刊現代」2004年12月号や「週刊金曜日」2004年11月19日号に掲載されたルポで紹介されている。ピョンヤン市のチョンドン共同農場での実態を報告した部分を「月刊現代」から引用する。

_(農場の)管理委員長に外国からの穀物袋について聞いてみた。

_「この農場ではたくさんのブタを飼っているため穀物を自由市場に出すことはないが、穀物があまった農場では出すこともある」

_穀物袋は、自国の物と食塩壌助で使われた物とを区別して使うのかと訊いたところ、「どうしてそんなことを訊くのか」と大笑いされてしまった。

_そしてその場から、一つの作業班の精米所へ案内された。かなり老朽化した施設で中は薄晴い。その中には相当古い精米機と、米がすでに入った穀物袋が並んでいる。それらの袋には、WFPのマークとともにオーストラリアから送ったことが記されたり、EUのマークが描かれたりしている。畳んだまま積まれた袋にも同じものがたくさんある。

_穀物袋の中には、統一通り市場で見たのと同じ黒っぼい米が入っている。WFP や外国政府からの食糧援助で使われた穀物袋は、日常的に反復使用されていることは明らかだ。管理委員長に撮影許可を求めたら、彼は少し考えてからうなずいた。

_日本では「北朝鮮の民衆が食糧を奪われて云々」とまことしやかに「告発」され「懸念」されていることが、実際には当の北朝鮮の民衆には呆れられ、只でさえ信用されていない日本人の、僅かばかりの信頼を更に失墜させているだけである。

_さて今回の喧伝によると、「開封されていない袋もあった」 (2月15日朝日新聞など) とのことである。しかし、開封されていないことをどのように確認したのかということについては、一切触れられていない。再度口を綴じる事は全く不可能な形状だろうか?いずれにせよ、袋の広範な再利用の実態には一切触れずに、ただ市場にそういった袋が出回っているというだけで「横流しだ」などと決めつける連中が、上記のように反論された後、ろくに証拠も示さずそのように主張したからと言って、何を信用できるだろうか。

_更には、上記引用文中で管理委員長は「自由市場に出すこともある」と認めている。すなわち、支援穀物に余剰がある場合、市場で売る、と公にしているのだ。ピョンヤン市近郊の共同農場の責任者という、決して軽くはない肩書きの方が、である。

_豚用の穀物とは全く別の話だが、「北朝鮮政府が政策的に支援物資を横流しすることはない」と明言し、月に百回以上のモニタリングを行っているというWFP自身も、こうした末端での物資の流用については認めている。OCHA(国連人道調整局)の2004年8・9月情勢広報(原文・翻訳)のなかで、WFPはこのように報告している。

_更に米は朝鮮人に何より好まれる主食であり、食糧に困っている家庭は、配給の米をより多くの玉蜀黍など、人気のあまりない主食に物々交換することができる。家族は自分達の食糧を増やすことが出来るわけである。

_WFPなどが再三訴えているように、「最も食糧を必要とする弱者」に必要十分な食糧を無駄なく提供する事が、最も望ましいのは言うまでもない事だ。だが実際には様々な事情で余剰や不足が生じる。それを自分たちで調整するのは、単なる有効利用だ。2月19日にも書いたとおり、「必要な量」を計測する為、自己消費しているかを確認する為と言って、徒にモニタリングを強化することは、信頼関係を損ねる。あまりあれこれ介入されると「どこまで我々を疑う気だ」と反感をもたれても、おかしくない。モニタリングの徹底も結構だが、信頼関係無くして人道支援はあり得ないという事を忘れてはならない。

_またマスコミの論調は「横流しされるから送るな」と言っているようだが、これも全く破綻した理屈である。横流しがあろうがなかろうが、食糧難が続いているのは間違いない。どんな事情があるにせよ、そこで支援をやめてしまえば、確実なのは状況が悪化する、という事だけである。支援に不透明なところがあるというのは、受け入れ側に説明を求めたり、調整をしたりする理由になっても、支援をやめる理由にはならない。こんなことはあまりに自明な事だが、「北朝鮮憎し」でものを言っている連中は、本当は人道問題がどうなろうが、どうでも良いのだろう。まあ、国連機関の説明よりもどこかの政治団体の得体の知れない映像を信用するという慧眼をお持ちのマスコミ諸氏の考える事は、私のような凡人には高尚すぎて理解できない。