35946 返信 Re:戦争犯罪の責任 URL タラリ 2005/07/10 20:15
管理人さまへ、すみません。ミスで別ファイルを投稿してしまいました。前投稿を削除して下さい。


小林哲夫さんへ

inti-solさんが35922のレスで軍隊の教育についての問題があったことを明瞭に指摘されており、その面ではあまりつけ加えることはありません。

実際、南京大虐殺においては、上海派遣軍の参謀の飯沼守少将だったか、上村利通大佐だったかが、戦前まで陸軍大学校で国際法の講義を担当しており、捕虜の取り扱いを教えていたので、南京攻略部隊の人道無視について、いつからここまで軍の資質が低下したのだろうと驚いたことが記されています。

しかしながら、単に軍の教育の問題か、というとすべてをそれで片づけるのも説明不足と思います。国際法が示す民間人、捕虜の保護ということがある時期から軍の内部で教育されなくなったという背景を考えて見る必要があります。

第一は国際法に対する日本、日本軍の態度の変化です。

日露戦争のときまでは日本軍の捕虜の扱いは丁重を極めましたし、北清事変においては他国の兵が中国民衆に乱暴狼藉を働いたのに対し、日本兵はそういうことがなく、賞賛を集めたものでした。

日清、日露戦争では日本の国際法の専門家がよく研究し、日本軍の戦い方が方にもとるものではないことを海外メディアに対してアピールしていました。日清戦争においては旅順大虐殺という戦争犯罪を起こして一時、欧米の非難を浴びたのですが、これに対して徹底した欧米のマスコミに対する工作を行い、批判を鎮めました。つまり、国際法違反を起こしてしまったとしても、海外からの批判に対しては非常に敏感であったが故にマスコミ工作をしたわけです。これらの振る舞いは日本が先進国と認められたいがために、模範的な戦争を行うよう努力したためです。

ところが、満州事変以後においては国際法自体も米英などの作った国際秩序の一部として、これを軽視・無視する姿勢を強めていました。欧米に認められたい、国際法を守る文明国だということをアピールする姿勢が不要になったと感じたときから、日本の戦争犯罪が発生する素地ができたというのが原因のひとつになっています。

ところで、戦争犯罪、残虐行為を問題にするときは単に国際法に関する軍隊教育だけが問題になるのではありません。たとえば、日本軍は毒ガス・細菌兵器、731部隊、中国人強制連行、慰安婦などの戦争犯罪を犯しています。これらの戦争犯罪は日本軍・政府の中央が中国人の命はどうでもいい、と考えていたことを示します。

つまり、残虐行為が発生する第二の条件として、他国民に対する蔑視・憎悪ということが必須です。このうち憎悪については激しい戦争を行うだけで生じるものですが、蔑視は戦争前において他国民のイメージがすでに形成されています。

中国・中国人に対する蔑視はある意味で明治期以降日本の社会で潜在し、次第に主流となったた思想・文化の問題であるとも言えます。ですから、小林さんが文化の問題と指摘したのは、今のところその内容不明ながら、一応当たっていると思います。

文化の問題としてとらえるという試みはともすれば、責任の所在の不明確化につながりかねないテーマですが、戦争責任の全体を見るときには避けて通れない課題であると思います。今回のresはその入り口に過ぎません。


おっちゃんへ

>しかし、強姦や略奪や幼児殺害の犯罪性までことさらに「教育」せねばならないかというと・・・「より大きな責任」はその行為をした兵隊の「個人的資質」の問題となっていくのです。

>「命令によって敵のスパイか民間人かさだかでない人間を処刑した」というのと「赤ん坊を銃剣で血祭りにしてやった」というのはあきらかに違うでしょう。

潜在的に残虐な資質を持つ個人的が、意外に多数にのぼることは南京大虐殺など日中戦争における残虐行為の事績を研究して知りました。確かに残虐な犯罪行為が戦争という環境下において、その個人的資質が露呈したものであることは疑いをいれません。

一般社会において残虐な犯罪が行われたとき、それは個人の資質が問題にされます。しかし、ある時代や地域、集団において残虐な犯罪が多発するときは、その社会の犯罪に対する姿勢そのものが問題にされるのです。

当時の日本軍の犯罪に対する姿勢を一般社会と比較しますと明らかな違いがあります。
1.それらが一般社会の警察・検察に相当する憲兵・法務部によって拘束・処罰されることが非常に少なかったこと、
2.特に残虐な行為が周囲の一般的な日本将兵によって制止されるということがなかったこと、
3.さらに、平均的な日本の将兵の多くもまた、戦争行為から逸脱した犯罪行為に程度の差こそあれ、少しずつ手を染めていたことが特徴です。

おっちゃんが挙げている、「強姦や略奪や幼児殺害の犯罪性」などの際だった残虐行為も上記1-3の条件下で発生しているのです。すなわち特に残虐な行為は日本軍の戦争犯罪一般と切り離して存在するのではなく、つながりを持っているのであり、その氷山の頂点として目立っているだけなのです。その氷山の一角だけを削りとって、この部分だけは個人的資質であって軍の責任ではないと主張するのは誤りであり、対策をしなかった軍当局を免罪する言い訳に過ぎません。

個人の資質・責任ですべてを説明しようとするおっちゃんの思考態度の限界が出たな、と感じます。