36123 返信 グランサコネ通信05−16 URL 前田 朗 2005/07/26 18:30
2005年7月26日

*春の国連人権委員会に続いて、夏の人権促進保護小委員会(7月25日から8月12日まで)に参加していますので、3ヶ月ぶりに「グランサコネ通信」をお届けします。グランサコネとは私が宿泊している地域で、ジュネーヴ北側の丘の上にある地区の名前です。

*この通信は「報道」ではなく、時に伝聞・推測・未確認情報や感想を含む場合があることをお断りします。


(1)人権促進保護小委員会57会期

7月24日、人権促進保護小委員会(以下では「人権小委員会」)57会期が、国連欧州本部の18会議室で始まりました。ご挨拶の後、カルタシュキン委員(ロシア)が議長に選ばれました。そして昨年暫定的に決めてあった議題を採択しました。

人権小委員会は、人権委員会のもとに置かれた専門家委員会です。人権委員会は国連憲章に基づいて経済社会理事会に置かれた委員会ですが、53カ国の政府が委員となっています。これに対して、人権小委員会は選挙で選ばれた専門家委員が個人の立場で活動することになっています。条約に基づく委員会の場合には、委員は自分の国の報告書の審査の時には発言しないのが慣例になっていることは良く知られていますが、人権小委員会は逆で、ここ数年、わたしがこの通信で詳しく報告してきたように、一部の委員は自国の利権代表者として懸命に頑張ってきたのが実情といってよいでしょう。とはいえ、人権委員会のシンクタンクとして優れた議論を行なってきたことは確かです。人権小委員会は、人権問題の駆け込み寺ではなく、人権基準の調査・研究の場で、人権条約の草案や各種の人権ガイドライン草案を作成してきました。最近のものでは、子ども売買・買春禁止議定書、女性差別撤廃条約選択議定書、拷問等禁止条約選択議定書などの草案を作成しています。

人権小委員会委員は26人です。他に副委員(代理委員)が置かれる場合もあります。委員は次の通りです。

Mr. Alfonso Martinez (Cuba)
Mr. Alfredson (Iceland)
Mr. Bengoa (Chili)
Mr. Biro (Hungary)
Mr. Bossuyt (Belgium)
Mr. Chen (China)
Mr. Cherif (Tunisia)
Ms. Chung (Republic of Korea) 鄭鎮星
Mr. Decaux (France)
Mr. Dos Santos Alves (Mozambique)
Ms Hampson (UK)
Mr. Kartashkin (Russia)
Ms. Koufa (Greece)
Ms. Motoc (Romania)
Ms. Oconnor (Jamaica)
Mr. Pinheiro (Brazil)
Ms. Rakotoarisoa (Madagascar)
Mr. Rivkin (USA)
Mr. Salama (Egypt)
Mr. Sattar (Pakistan)
Mr. Sorabjee (India)
Mr. Tunon Veilles (Panama)
Ms. Wadibia-Anyanwu (Nigeria)
Ms. Warzazi (Morocco)
Mr. Yokota(Japan) 横田洋三

今年の議題は次の通りです。
E/CN.4/Sub.2/2005/1

議題1 議事運営
議題2 すべての諸国における人種差別・隔離政策などの人権と基本的自由の侵害問題
議題3 司法運営、法の支配、民主主義
議題4 経済的社会的文化的権利
議題5 差別予防
 (a)  人種主義、人種差別、外国人嫌悪
 (b)  先住民族差別予防と保護
 (c)  少数者差別予防と保護
議題6 特別の人権問題
 (a)  女性と人権
 (b)  奴隷制の現代的諸形態
 (c)  新しい優先事項、特にテロリズムと反テロリズム
議題7 暫定議題草案と報告書の採択
 (a)  人権小委員会58会期のための暫定議題草案
 (b)  57会期の報告書の採択

3週間の間にこの議題を順次こなしていくわけですが、人権小委員会は単に人権問題を一般的に議論するわけでもなく、駆け込み寺でもありません。人権委員会からの委嘱に応じて、人権基準の定立をめざして実践的かつ理論的に研究する場なので、議題のタイトルを見ただけでは何をやっているのかはわかりません。

上記の議題のもとで何を議論するかは、議題の注釈書が公表されています。
E/CN.4/Sub.2/2005/1/Add.1

例えば、議題4は経済的社会的文化的権利ですが、国際人権規約A規約そのものを議論するわけではありません。今年は、この議題では、さらに区分された以下のテーマを議論します。

・社会フォーラム
・多国籍企業の活動が人権享受に与える影響
・住居と適当な補償
・腐敗(汚職)が人権享受に与える影響
・経済的社会的文化的権利に関する国際規約の非差別の意味
・極貧との戦いにおける現行人権規範の履行
・発展の権利
・債務の人権への影響
・飲料水・衛生の権利

これらのテーマについて、作業部会や専門家委員のたくさんの報告書が提出されています。その報告書へのコメントや情報提供や提案をするのがNGOの役割ということになります。

なお、人権小委員会は特定の国家を対象とした決議は出せないことになっています。ただし、人権委員会から事前に了解の得られている諸国については、人権小委員会も決議を出すことができます。こういう点は非常に政治的であって、人権小委員会が人権のフォーラムではなく、外交フォーラムであることがよくわかります。この制約の中で委員が様々の工夫をして議論を積み重ねているということです。

(2)バルビーさん

24日夜、クリストフ・バルビーさんと会いました。スイスの弁護士で、「脱軍事化と軍隊のない国家」の筆者です。春の人権委員会のときに「27の非武装国家」というセミナーのメインスピーカーでした。

セミナーでの彼の報告は、雑誌「法と民主主義」399号に紹介しておきました。
http://peace.cside.to/blog/archives/2005/06/30/index.html
http://peace.cside.to/

7月30日・31日に横浜で開かれる「全交(平和と民主主義のための全国交歓会)」に招待されていて訪日予定なので、事前にジュネーヴで会いました。日本の無防備地域宣言運動の状況と、非暴力・非武装の研究状況を少し説明しました。フレンドルという町に住んでいますが、地図で見つけられなかったので教えてもらいました。スイスの中央少し西より、フリブールの南の山の中で、高級リゾート地グシュタードの近くです。

本日の飛行機で成田へ向かいますが、日本では最初に八王子の知人に会いに行くそうです。私が八王子からジュネーヴに来たのに、彼はジュネーヴから八王子です。

私が「軍隊のない国家を順にまわって歩くつもりだ」というと、「それはおもしろい。まわって歩く最初の人間だろう」とのこと。彼はリヒテンシュタインやアンドラには行ったそうです。