36158 返信 グランサコネ通信05−18 URL 前田 朗 2005/07/29 16:42


(1)7月28日



28日は午前中に議題2の続きを行い、午後から議題3「司法運営、法の支配、民主主義」に入りました。ラコトアリソア報告書、デコー報告書、ハンプソン報告書の紹介と議論が行なわれて、そのまま進むかと思っていたところ、午後5時に突然NGOの発言となりました。予想外に早く順番がまわってきて、ばたばたしましたが、無事発言を終えました。NGOの発言が10ありましたが、その8番目と9番目が日本関連です。



<国際人権活動日本委員会JWCHR、前田朗>発言の概略



2005年は第二次大戦60周年である。日本政府に歴史に向き合い、戦争犯罪について謝罪と補償をするよう促す。女性の人権に対する最も悪質な侵害は戦争手段として性暴力を用いることである。朝鮮、中国、台湾、フィリピン、オランダ、インドネシア、マレーシアの20万もの女性が「慰安婦」を強いられたと推定されている。その大半は生き延びることができなかった。被害者証言が始まり、その結果、ICC規程などに強姦や性暴力を犯罪とする規定が設けられるようになった。しかし、日本政府は、クマラスワミ「女性に対する暴力」特別報告書、マクドウーガル「戦時性奴隷制」特別報告書や人権小委員会決議を無視している。この点で、「国内法における効果的補償を受ける権利の履行」に関するハンプソン報告書を歓迎する。社会権委員会やILO専門家委員会も同様の勧告をしている。しかし、日本政府は「戦時強姦は戦争犯罪ではない」という不合理な主張をして、「アジア女性基金」の償い金を渡して済まそうとしているが、アジア女性基金は「セカンド・レイプ基金」である。日本政府は国家責任を否定し続け、歴史教科書から「慰安婦」記述が削除され、「A級戦犯」を「国民的英雄」としている。政治家は被害女性を「売春婦」と侮辱し、首相は「戦争神社」である「靖国神社」を公式訪問している。完全に被害者補償しない限り、日本には安保理事会常任理事国の資格はない。



<国際民主法律家協会IADL、斉藤久枝>発言の概略



IADLは、2005年の重大人権被害者の補償に関する国連人権委員会ガイドライン、および「国内法における効果的補償を受ける権利の履行」に関するハンプソン報告書を歓迎する。1925年から1945年にかけての治安維持法による重大人権侵害の謝罪と救済を求める。1931年から1945年にかけて日本帝国主義はアジア諸国を侵略し、戦争遂行のために治安維持法をつくり、言論・表現の自由を抑圧した。ドイツのゲシュタポのような「思想警察」が思いのままに支配した。数万人が検挙され、1600人以上が拷問されて亡くなった。ドイツ、イタリア、フランスではレジスタンス戦士は名誉回復し補償を受けている。アメリカとカナダは日系人に補償した。対照的に、日本政府はいかなる補償も拒否している。戦後補償訴訟は60を数える。治安維持法被害者の運動に加えて、アジアの被害者も補償を求めている。731部隊や南京大虐殺の被害もある。今日、被害者は高齢である。彼らの心の傷は、日本政府が謝罪しなければ癒されない。この問題は現在イラクや世界各地で行われている軍隊による重大人権侵害と繋がっている。人権小委員会が、日本軍国主義による重大人権侵害問題を調査し、重大人権侵害や人道に対する罪の被害に関する謝罪と補償のためのガイドラインを確立するよう求める。



*発言の準備はしてありましたが、金曜日には回ってこないで土曜の朝になるだろう、だから手直しして差し替えることができると思っていたのに突然まわってきたので、準備していた原稿と少し違った内容を話しました。例えば、「センカンドレイプ基金」という言葉は原稿にはありません。前方の席に座っているセカンド・レイピストが見えたので、アドリブで入れた言葉です。



*日本関連が2つ続いたので結構目立ちました。発言用紙を取りに来た人も、他のNGOのときよりもずっと多かったので、100部用意した原稿がすぐになくなりました。近年は50部程度だったのですが、100部作っておいて良かった。



以上に加えて、もう一つ日本関連がありました。NGOのミネソタ人権擁護団Minnesota Adovocates for Human Rightsが提出した文書「ペルーの真相和解調査委員会」(E/CN.4/Sub.2/2005/NGO/24)です。1980年から2000年にかけてのペルーにおける内戦に際して行なわれた重大人権侵害の調査に関する報告です。単に被害調査の内容だけではなく、調査委員・被害者・証言者の生命身体の保護も含めて議論しています。フジモリの犯罪とその調査も含まれています。





(2)7月27日



遡って27日です。



27日の人権小委員会は、午前中は、議題2の続きでした。20を超えるNGOが続々と世界各地の重大人権侵害について報告しました。イラクの戦争被害、カシミール(インド側とパキスタン側の両方が非難合戦)、ハワイやアラスカの先住民族の権利、マルク(マラッカ島)、チリのマプチェ、モロッコと西サハラ問題、スリランカなど各地の問題が取り上げられました。政府は、パキスタン、ナイジェリア、アルゼンチンが発言しました。



昼休みに、CONGO(Conference of non-governmental organizations)のNGOブリーフィングがありました。CONGO議長のレノート・ブルームさんが司会。人権小委員のフロリゼレ・オコーナーさんとピンヘイロさんが」発言。他にNGOからセシリア・ゼメネスさん(弁護士)、ジョセフ・ラジクマールさん(Pax Romana)、ペニー・パーカーさん(ミネソタ人権擁護団)が発言しました。今回の人権小委員会はやはり最初から最後までこの話題といった方がいいのでしょう。国連改革、そして人権委員会改革の流れの中で人権小委員会がどうなるのかに焦点があてられています。主な発言は、第一に、人権小委員会自身が改革案を提出しないと、人権委員会改革の中で忘れられてしまう恐れがあること、第二に、人権小委員会のシンクタンクとしての位置づけをもっと鮮明に打ち出す必要があること。そのほかに、NGOが果たすべき役割の再確認。



一番注目されたのは、国際法律家委員会(ICJ)の発言です。ICJは、人権小委員会のような独立専門家委員会は国際人権基準定立に重要な役割を果たす、国家が中心となる集団的討議と意思決定に際しては、独立専門家委員会がチェック機能をもつと切り出した上で、これまでの人権小委員会の仕事を評価し(人権擁護者に関する宣言草案作成、少数者権利宣言草案作成、重大人権侵害被害者補償ガイドライン草案作成その他)、改革の方向性に言及しました。例えば、公平性と独立性を維持するために、委員は、政府の代表や政府の職務にあってはならないこと。第二に、新しい委員の適用のための適正な手続きの採択。人権高等弁務官の関与(つまり政府だけで決められない)。第三に、人権小委員会委員の任期の制限。あまりに長期の委員は組織として不健全であるし、新しい考え方が入らなくなるので、同じ委員の長期留任に反対(ちなみに、ICJは名指しはしませんでしたが、現在の委員で長期といえばワルザジ委員や横田委員)。



CONGOのブリーフィングでも同じような意見が出ていました。それに加えて、CONGOブリーフィングでは、当然のことながら、NGOは何をするべきかが主題となりました。もっとも、従来やってきた情報提供と健全な対話なるものを強調しただけで、そう目新しいことが出ていたわけではありません。地域レベルの強調も従来から言われてきたことですし。