36507 返信 戦後責任を問う二冊の本を刊行しました URL クマ 2005/08/28 21:00

 こんにちは、熊谷伸一郎です。残暑お見舞い申し上げます。
 この夏、刊行しました自著の案内です。

 これまで約五年間、日本軍の元兵士たちの聞きとりを行なってきました。敗戦から60年目の夏、その成果の一端を以下の二冊の本にまとめましたので、ご興味のある方はご一覧ください。感想などを寄せていただければ幸いです。m(_ _)m

●『なぜ加害を語るのか』(岩波ブックレット)

 自らの戦場での加害行為を,被害者への謝罪と反省の気持ちをこめて語り続けてきた元兵士たちの一群.かつて中国で戦犯として抑留された体験を持つ人々の集まりである中国帰還者連絡会の戦後史は,戦争の被害の側面が語られることの多かったこの国で,特異な輝きを放っている.

  1957年の結成から2002年の解散まで,45年間にわたる贖罪の歩みの末に,直接の被害者からの赦しを得るまでにいたった彼らの存在は,過去の過ちに目を閉ざさず,向き合っていくことの意味を,これ以上ないほどに具体的に,明確な形で示している.本書は彼らの後半生を概括している.

  私が彼らの存在を知ったのは解散の2年前の2000年.石原都政の誕生や小林よしのりの「戦争論」の影響で,「南京大虐殺はなかった」,「慰安婦は商行為」といった言説が,それまでのアンダーグラウンドから社会の表面へ這い出しはじめたころだった.これまで行なってきた百数十人からの聞き取りの一端を本書に記した.被害者側からの呼びかけや批判に対して逆ギレするのではなく,相手の痛みに共苦する,そういう戦後がこの国にありえたことの意味を共に考えたい.


●『金子さんの戦争』(リトルモア)

 金子安次さん、85歳。2000年12月に開かれた女性国際戦犯法廷で、慰安婦問題に関する加害者として証言台に立った人物です。中国の侵略戦争の実体を、性暴力の当事者として伝えていこうと証言しています。

 喧嘩っぱやい漁師町・浦安で生まれ、屑鉄屋で働き、大型バイクを乗り回した戦前。中国人へ略奪、虐殺、強姦を繰り返した戦場体験。敗戦後のシベリア抑留と、撫順戦犯管理所での生活。16年ぶりの帰国と、それにともなう実社会とのズレ。

”べらんめえ調”で語る金子さんの話の数々は”言葉”でしか認識できなくなった戦争をひとつの”行為”として蘇らせる。一人の人間の軌跡をたどることで、加害者としての戦争の側面にはっきりと光を当てる力作です。(リトルモアHPより)


▼私が編集長を務めている二冊の雑誌でも、この夏、戦争と抵抗、被害者側の声などを伝えています。こちらもあわせてご一読いただければ幸いです。

●『自然と人間』8月号 特集 ファシズム下・名もなき抵抗の詩

 「あきらめませう 大東亜戦争」―― 言論の自由を奪われた戦時中にも、庶民は反戦・厭戦の声をかすかにつむいでいた。落書きや投書、そして隣人への言辞として。 

・座談会 日本軍に反戦を呼びかけた日本人たち・日本人反戦同盟
  前田光繁(元日本人反戦同盟)
  山下好之(元日本人反戦同盟)
・抵抗する力を獲るために 梶村太一郎(ジャーナリスト)
・徴兵を拒否した祖父・北御門二郎
・僕の少年時代は戦争しかなかった 黒木和雄(映画監督)

●季刊『中帰連』33号 特集 再び問う・私たちは中国で何をしたか

過去の歴史への認識を共有しよう  呉祖康(上海・918愛国ネット)
なぜ対日抗議行動に取り組むのか  盧雲飛(北京・愛国者同盟)
中国の対日不信感を払拭するために  段躍中(日本僑報社)
証言 戦争の為の教育とその結末  絵鳩毅
証言 無住地帯 船生退助
証言 中国行記 本多立太郎

kuma@office.email.ne.jp 熊谷 伸一郎 拝

熊之巣 http://www.ne.jp/asahi/kuma/radical/
問答有用 http://bbs2.otd.co.jp/mondou/bbs_index
月刊『自然と人間』 http://www.n-and-h.co.jp/
季刊『中帰連』 http://www.tyuukiren.org
八王子平和市民連絡会 http://peace-8.hp.infoseek.co.jp/
戦後責任.com http://www.sengo-sekinin.com/
本多勝一さん裁判支援 http://www.jijitu.com