37035 | 返信 | 【終戦の詔勅】の無責任 | URL | 烏龍茶 | 2005/09/27 02:18 | |
いつもえらそうなことを書いていますが、恥を忍んで告白すればつい今し方まで、いわゆる【終戦の詔勅】というものを通読したことがありませんでした。 で、とほほ氏の投稿中それにふれる部分があったので読んでみたのですが、これは実は相当ひどいものなんですね(問答有用の皆さんには常識の部類かもしれませんが)。 一言でいえば、日本国民と膨大なアジアの方々が(加害者と被害者というちがいがありますが)この戦争で味わった苦しみも悲しみも、全て【他人事】でしかない、としか言いようがありません。責任感が完全に欠落している文であります。 ○ 戦争を始めた理由(というか志) 終戦の詔勅では、これを次のように述べます。 「曩ニ米英二國ニ宣戦セル所以モ亦 實ニ帝國ノ自存ト 東亜ノ安定トヲ庶幾スルニ出テ他國ノ主權ヲ排シ 領土ヲ侵カス如キハ 固ヨリ朕カ志ニアラス」 (先にアメリカ・イギリスの2国に宣戦した理由も、真に日本の自存と東アジア諸国の安定とを強く望んでいたからであり、他国の主権を排除したり、領土を侵略したりするようなことは、もとより私の意図するところではなかった) 1 まず問題なのは、この戦争について1941年の真珠湾攻撃(とマレー作戦)以前 については一言も触れていない点です。南部仏印進駐、日中戦争、満州事変と、他 国の主権の侵害そのものであるのに、それには口をつぐんで太平洋に植民地を持 っていた米英に対する開戦理由のみを述べるのは、明らかに【事実の一部しか述 べない】という意味に於いて【欺瞞】であります。 2 さらに、太平洋の戦いが始まってからにしても、天皇自らが知らなかったはずがな い1943年5月31日の御前会議決定「大東亜戦争指導大綱」、 「マライ・スマトラ・ジャワ・ボルネオ・セレベスは帝国領土と決定し、重要資 源の供給地として極力これが開発並びに民心把握に努む」および 1941年11月の大本営政府連絡会議策定「南方占領地行政実施要領」 「国防資源取得と占領軍の現地自活の為、民生に及ぼさざるを得ざる重圧はこれ を忍ばしめ、宣撫上の要求は右目的に反せざる限度に止むるものとす」 にも全く口をつぐんでいます。 あの戦争のどこら辺が「他国の主権を排除したり、領土を侵略したりするようなことは、もとより私の意図するところではなかった」などといえるのか、読んでいて腹が立ってくるほどです。 ○戦争終結を決意した理由 続けて、終戦の詔勅は、戦争終結を決意した理由につき、次のように述べます。 「然ルニ 交戰巳ニ四歳ヲ閲シ 朕カ陸海将兵ノ勇戰 朕カ百僚有司ノ勵精 朕カ一億衆庶ノ奉公 各々最善ヲ盡セルニ拘ラス 戰局必スシモ好轉セス 世界ノ大勢亦我ニ利アラス加之 敵ハ新ニ残虐ナル爆彈ヲ使用シテ 頻ニ無辜ヲ殺傷シ 惨害ノ及フ所 眞ニ測ルヘカラサルニ至ル」 (しかし、交戦四年間にわたり、我が陸海軍将兵が勇戦し、わが臣下たちががんばり、国民が奉公し、それぞれ最善を尽くしたのに、戦局は必ずしも我々によくならず、世界の大勢もまた我々に不利である。それだけではなく、敵は新たに残虐な爆弾(原爆。引用者)を使用し、しきりに罪もない民を殺傷し、どこまで惨害が広がっているのか想像することもできないほどになってしまった) 平たく言えば、みんなよく頑張ったんだけど【力が及ばないため】に戦局が好転しない、ということです。この「力が及ばない」という部分(そういう考え方に基づく文、という意味ですが)は重要だと思います。 要するに悪いのは国民のみんなでなくて敵が強すぎた、ということでしょうが、そんなことは戦争を始める前からよくわかっていたわけで、今更なにを、という箇所です。 それだけでなく敵は残虐な爆弾まで使って国民を殺傷している、という部分も問題です。天皇は、自らの軍隊がこれまでの戦争でどういう残虐な事をしてきたのか、全てではないにしろ知っていました。それを止める努力もせずに敵の残虐のみにふれる。被害者意識のみを強調しているわけで、たとえば三光作戦の犠牲者や731部隊で実験で殺された人、あるいは南京大虐殺の犠牲になった人たちがこれを読んだらなんと思うでしょう。 「而モ尚 交戰ヲ繼續セムカ 終ニ我カ民族ノ滅亡ヲ招来スルノミナラス 延テ人類ノ文明ヲモ破却スヘシ斯ノ如クムハ 朕何ヲ以テカ 億兆ノ赤子ヲ保シ 皇祖皇宗ノ神靈ニ謝セムヤ是レ 朕カ帝國政府ヲシテ 共同宣言ニ應セシムルニ至レル所以ナリ」 (しかもなお戦争を続けるならば、ついには我が民族の滅亡を招くだけでなく、人類の文明をも破壊するに至るであろう。もしそうなってしまったら、私はどうやって億兆ものわが赤子である国民をまもり、我が先祖に謝ればいいだろうか。これが私が帝国政府を(ポツダム)宣言に応じさせた理由である) これ以上戦うと、民族が滅亡するだけでなく人類の文明すら破壊されるだろう、ということですが、この戦争の被害の責任を全て相手(聯合国)にかぶせる責任転嫁としかいいようがありません。 そもそもそういう戦争を始めたのは誰なのだ、始めた理由について本当のことをいわないのはなぜだ、つまり、たいした見通しもなく目先の利益に目がくらんで次から次へと侵略の手を広げ、それに対して相手が反撃してきたら「自存自衛のためである」などとしたり顔で真珠湾に出かけていったのだと、またアジアの安定のためである、大東亜共栄圏の建設が目的であるなどとウソを言って、その実新たな侵略の手を太平洋に広げただけであると、なぜ自ら土下座してでもわびなければならない国民とアジアの人々に対して正直に言わないのだ、ということです。 それもせずに「終戦の御聖断」などと、どの面下げてこんな恥ずかしいことが言えるのか、とあきれかえる思いです。 血圧が上がってきたので続きはまたとします。 |
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