37132 返信 文献紹介 URL 前田 朗 2005/10/02 12:31
東京裁判や横浜裁判に関する書き込みが続いていますが、どなたも基本文献を読んでいないようなので、少しだけ紹介しておきます。

1)東京裁判

日暮吉延『東京裁判の国際関係−−国際政治における権力と規範』(木鐸社、2002年)[10000円+税]

かつてアーノルド・ブラックマン『東京裁判−−もう一つのニュルンベルク』(時事通信社、1991年)を翻訳した著者は、鹿児島大学教員。東京裁判研究の水準を一気に引き上げた本書は、東京裁判について発言するなら<必読書>です。「諸君!」をはじめとするめちゃくちゃ雑誌を見ると、ひんぱんに東京裁判批判が出ていますが、本書は参照されていません。本文だけで600頁の大著なので研究者にしか読まれていないようです。著者がコンパクトな新書本を出してくれるといいのですが。巻末の文献一覧は非常に充実しています。

序章 問題の所在
第一章 国際軍事裁判成立の政治過程
第二章 対日基本政策の決定過程
第三章 検察側と弁護側の裁判準備
第四章 公判と国際関係
第五章 判事団の権力状況
第六章 判決をめぐる政治力学
第七章 戦犯裁判終結の政治過程
終章 国際政治における権力と規範

2)BC級裁判

この掲示板でも紹介された、

林 博史『BC級戦犯裁判』(岩波新書、2005年)

は、新書ながら充実した一冊です。著者は関東学院大学教員で、『季刊戦争責任研究』の編集長。「日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷」の証人でもありました。

横浜弁護士会BC級戦犯横浜裁判調査研究特別委員会『法廷の星条旗−−BC級戦犯横浜裁判の記録』(日本評論社、2004年)[2600円+税]

BC級裁判のうち横浜裁判については本書が大いに役に立ちます。裁判の経過や問題点を弁護士たちが詳細に検討しています。特別委員会副委員長の三木恵美子さんは弁護士で「慰安婦」弁護団の一員にして、女性国際戦犯法廷関係者でした。

内海愛子『日本軍の捕虜政策』(青木書店、2005年)[6800円+税]

著者のライフワークです。今春出版されたばかりですし、650頁の大著ですから、まだ書評もあまり出ていないようです。私もまだ半分しか読んでいません。

序章 捕虜問題と日本人
第一章 文明国からの「お客さん」
第二章 宣戦布告なき戦争
第三章 アジア太平洋戦争の捕虜たち
第四章 労務動員された白人捕虜
第五章 白人捕虜の労務動員
第六章 捕虜観の日米摩擦
第七章 捕虜と戦後処理

第五章では泰緬鉄道のことが取り上げられています。タイのカンチャナブリの現場の写真も掲載されています。私も以前、地獄の灯と言われた現地を歩いてきたので、一瞬懐かしかったり。第七章の中で戦犯裁判も取り上げられています。本書の著者も女性国際戦犯法廷関係者で、政治家の圧力によって改竄された例のNHK番組にも出演してコメントをしています。ちなみに本書の編集担当者は、私の『戦争犯罪論』『ジェノサイド論』の編集者であり、ラムゼー・クラーク『アメリカの戦争犯罪』(柏書房)も編集しました。