「ネットワーク・ファブリケーション」へ向けてー2014年の研究ビジョンマップ

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慶應大学SFC研究所ソーシャルファブリケーションラボ代表 
COI-T「感性に基づく個別化循環型社会創造拠点」ディジタルファブリケーション国際研究拠点リーダー
田中浩也


慶應大学SFCソーシャルファブリケーションラボは、2012年に「3Dプリンタ等のデジタルファブリケーション技術を、"社会の問題解決"に応用する」研究を特に推進する目的で設立されました。高齢者や障がい者らマイノリティのための「1品生産」パーソナルデザインのプロジェクトや、破棄物をなくし循環型社会を実現するための再分解・組立式生産の基礎研究を実施しながら、さらに「食とデジタルファブリケーション(2012-2013)」「ファブシティー構想(2013-2014)」など、大学外の社会の様々なアクターと連携しながらビジョンをまとめるタイプのプロジェクト活動も行ってきました。2013年には、第9回世界ファブラボ代表者会議を主催し、「ソーシャル・ファブリケーション」の世界的潮流を広く社会に伝えると同時に、国内・海外のファブラボの交流を場をつくり、国際的なネットワークを形成することも支援しました(この結果FAN: FabLab Asia Networkが発足しました)。

その後、2013年10 月に文部科学省の実施する「革新的イノベーションプログラム(COI STREAM)」に参加することになり、トライアル型 COI の「サテライト拠点」として活動することになりました(拠点名 :「感性に基づく個別化循環型社会創造拠点―ディジタルファブリケーション国際研究拠点―」)。

2014年は、このCOIに向けての活動を本格的させる計画です。ソーシャルファブリケーションラボとしては、これまでの「ソーシャル」な視点に基づく応用的なテーマを継続しつつも、基礎レベルからさらなる技術的イノベーションを推進するために、SFCの主としてIT・ネットワーク系の研究者を新たに迎え入れ、以下のような「ネットワーク・ファブリケーション・ビジョンマップ」をもとにProactiveな研究を推進して参ります。

(ネットワーク×ファブリケーションの全体像)

 


 

具体的には以下のような研究テーマから構成されます。


A. 基礎研究テーマ



1. 「ものの出力」から「モノの出力」へ("Things"レイヤー) 
村井純教授、田中浩也准教授、三次仁准教授、植原啓介准教授
樹脂や金属等による「もの」の3Dプリントだけではなく、センサやタグ、アンテナ、回路といったエレクトロニクスを含める「埋め込み式3Dプリント(モノプリント)」の基礎研究を進めます。また慶應SFC研究所Auto-IDラボとの共同により、ファブリケーションの領域とビッグデータサイエンスがどのように関わりを持つのかも検討します。

 

2. ネットワーク工作機械基盤("Machines"レイヤー) 増井俊之教授、田中浩也准教授、青木翔平(訪問研究員)、増田恒夫(訪問研究員)
現在の3Dプリンタをはじめとするデジタルファブリケーション機器はまだ「スタンドアローン」な状態です。それらをネットワークからすべて操作したり管理できるようにすると同時に、複数の工作機械を自律・分散的に効率よく稼働させるためのプログラミング言語を開発します。


3. 3Dデータ標準化・変換基盤("3D-Data"レイヤー) 田中浩也准教授、脇田玲准教授、岩竹徹教授
現在の3Dプリンタでは、複数の素材を混合したり、柔らかさ・硬さなどが出力できるメタマテリアルの研究が進んでいます。またこれまでのような固体のみならず、液体や気体のモデリング技法も進化しています。そうした特徴を反映できるような次世代3Dデータ国際標準フォーマット(AMF: Additive Manufacturing Format)策定の議論に参加し、これまでのSTL, XVL, G-Codeなどとの整合性を図ります。またマテリアルの知見を含んだ新たなモデリングソフトの研究を行います。流体や液体のシミュレーションについても基礎検討します。


4. オープンデザイン基盤と「学習・教育」コンテンツ("Method"レイヤー) 筧康明准教授、水野大二郎専任講師、加藤文俊教授、渡辺ゆうか(訪問研究員)
ファブリケーションによるものづくりは、必然的に、ソフトウェアからハードウェアまで、デザインからエンジニアリングまでを組み合わせた「異分野混合的」なものになります。そうしたものづくり知識をネットワークを通じていかに(まるで料理のレシピのように)人に伝え、共有化する情報にまとめればよいのかを、デザインドキュメントの派生プラットフォームであるGitFAB(言語化できる知識・文書)、テーブルのうえの手作業の撮影投影装置であるFab Table (言語化できない「技」)などのシステム開発と並行して検討します。

また、オープンデザインのキラーコンテンツは教育です。ウェブプラットフォームや学習装置も含めて、小・中・高・大学・社会人・高齢者、それぞれの年代にあわせたデジタルファブリケーションの教育カリキュラムや教科書を開発します。

B. 応用研究テーマ


1. 衣 筧康明准教授、水野大二郎専任講師
人が身につけ、身に纏うもののファブリケーションに関して、ウェアラブルコンピューティングの視点とファッションデザインの視点の両方から検討します。

2. 食 水野大二郎専任講師、田中浩也准教授
人が食べるもののファブリケーションに関して、デジタル調理器具の視点と食文化の視点の両方から検討します。

3. 住 田中浩也准教授、筧康明准教授
人が活動する場所のファブリケーションに関して、家具の視点と道具の視点の両方から検討します。

4. 学習 筧康明准教授、水野大二郎専任講師、加藤文俊教授、渡辺ゆうか(訪問研究員)、田中浩也准教授
小・中・高・大学・社会人・高齢者、それぞれの年代にあわせたデジタルファブリケーションの教育法や教科書を開発します。


c. 総合的なゴールとビジョン

1. ファブ生活・暮らし(Fab Life)

2. ファブ産業・経済(Fab Industry)

3. ファブシティー(都市) 田中浩也准教授、水野大二郎専任講師、加藤文俊教授、小川克彦教授

来年の第10回世界ファブラボ会議(FAB10)のメインテーマである「from Fab Labs to Fab City」を受け、日本やアジアの都市をFab City化する計画を立案します。創造的な暮らしとそれを支える都市・施設について、コンソーシアム型で月1~2回の議論を行っています。また、自治体や地域の「創造度」を評価する社会指標についても考察します。

 

SFC研究所ソーシャルファブリケーションラボ・メンバー

代表 田中 浩也 /慶應義塾大学 環境情報学部 准教授

村井 純 / 慶應義塾大学 環境情報学部 教授
筧 康明 /慶應義塾大学 環境情報学部 准教授
小川 克彦 /慶應義塾大学 環境情報学部 教授
増井 俊之 /慶應義塾大学 環境情報学部 教授
岩竹 徹 /慶應義塾大学 環境情報学部 教授
加藤 文俊 /慶應義塾大学 環境情報学部 教授
脇田 玲 /慶應義塾大学 環境情報学部 准教授
水野 大二郎 /慶應義塾大学 環境情報学部 専任講師
三次 仁 /慶應義塾大学 環境情報学部 准教授
植原 啓介 /慶應義塾大学 環境情報学部 准教授

大野 一生 /SFC研究所所員(訪問)
増田 恒夫 /SFC研究所所員(訪問)
青木 翔平 /SFC研究所上席所員(訪問)
升森 敦士 /SFC研究所所員(訪問)
大島 遼 /SFC研究所上席所員(訪問)
西原 由実 /筧研究室研究補助者
天笠 邦一 /SFC研究所上席所員(訪問)
田島 悠史 /SFC研究所上席所員(訪問)

共同研究などのお問合せ先
大野 一生  (産学連携担当)
TEL:070-6998-7379
E-mail:kazohn@gmail.com
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