慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス
情報通信法研究会 海野敦史研究会
01
研究会の概要
本研究会は、情報通信法の主要論点について、学生主導で議論を深めることを目的としています。
参加者の学生それぞれがご自身で興味関心のある論点を見つけ、あるべき解決策や立法論について理解を深めるとともに、プレゼンテーション能力を向上させることを目標としています。
担当教員の情報通信行政に関する実務経験(約30年間)も踏まえながら、インターネット経由の通信における「通信の秘密」の保護法益、プラットフォーム事業者の流通情報の取扱いに関する自由と責務など、議論の余地のある論点を中心に扱います。
関係する判例の分析(ケーススタディ)も適宜行います。
到達目標
論点を見い出し、自分なりの考え方を導く
情報通信法上問題になり得る各課題に対して、参加者との議論を通じてさまざまな論点への理解を深め、それらに対する「自分なりの考え方」を論理的に導くことができるようになる。
先行研究・判例・海外制度を調査する
「自分なりの考え方」を導くために、先行研究・関係する判例・海外の制度等を十分調査し、得られる示唆を的確に整理することで、研究成果としてまとめあげられるようになる。
わかりやすく筋道立てて伝える
研究成果を、参加者皆が理解できるようにプレゼンテーションできるようになる。 参加者との議論を通じて、新たな論点に気付いたり、自身の論証を見直すことができるようになる。
議論を重ね、一定の方向性に到達する
他の参加者が提示する考え方に対し、法の趣旨に照らした不整合、論理的な矛盾点や疑問点等を適示することで、報告内容を洗練させるために参加者同士で協力できるようになる。
活動の全体像
- 定例ゼミ
- 週1回・2コマ(各90分)。 各コマとも、①報告担当者によるプレゼンテーション、
②参加者全員での議論、③担当教員によるコメントという流れで進みます。 - 輪番での報告発表
- 原則として、輪番で各参加者が研究報告を行います。 1回の研究会で複数名が報告するため、各参加者は、学期内に複数回報告の順番がまわってきます。
- 卒業プロジェクト
- 研究会での報告と議論を土台に、参加者各自が独自に設定したテーマで卒業プロジェクトに取り組みます。 報告発表内で示しきれなかった点も「今後の課題」として整理し、次の研究につなげます。
- 準備学修
- 事前学習として毎回3時間程度、教科書や関連文献を読み、自身の考え方を整理しておくことが望ましいとされています。 事後学習は2時間程度です。 報告担当回については、これ以上に時間をかけて先行研究を整理する必要があります。
1コマ(90分)の進め方
| 進行 | 内容 |
|---|---|
| ①プレゼンテーション | 報告担当者が、先行研究・判例・関係法令等の調査結果を整理したうえで、論点と自身の見解を報告します。 |
| ②議論 | 参加者全員で議論します。 不整合や論理的な矛盾点、疑問点を指摘し合います。 |
| ③担当教員のコメント | 法の趣旨や実務の観点から、担当教員が参加者の報告発表における論点を整理し、今後の検討課題を示します。 |
定例ゼミは週1回・2コマ(各90分)。 2コマとも上記の流れで進行します。
02
研究テーマ・成果の例
実際の研究テーマ
- デジタルプラットフォームの仲介が持つ役割と責任
- 国家による通信情報の取得は肯定されるか
- SNSにおける個人データ利用と同意の原則の限界
- 青少年のインターネット利用について
- ステルスマーケティング規制の現状と生活者の意思決定
- 行動ターゲティング広告は生活者の自己決定権を侵害するのか
- 大規模SNS運営者に対する規制のあり方
- 性的マイノリティと婚姻制度の憲法適合性
- 災害と情報通信
- 郵便法とユニバーサルサービス
- AIと著作権
- AI推進法とEUのAI法比較
- 通信の秘密における同意と「同意疲れ」への対応
- 未成年のSNS禁止規制
- プラットフォーム事業者による「AI生成コンテンツ」ラベル付与行為の憲法上の位置づけ
- 日中の現状比較からみるICT教育の推進と個人情報保護について
- データ三法を通した中国のデータ管理について
- 国外オンラインスポーツベッティングサイトの利用禁止と「通信の秘密」
- PASPA判決とWire Act
その他研究テーマの一例
- 「通信の自由」の内実
- 「放送の自由」の内実
- 「プライバシーの権利」の内実
- サイバーセキュリティ対策と通信の秘密
- 匿名表現の自由の保護の程度
- 通信の秘密との関係からみた通信傍受と通信記録の把握との規範的な差異
- 通信の秘密との関係における「同意」の効果
- 「公然性を有する通信」と通信の秘密(及び表現の自由)との関係
- SNS運営者等による「私的検閲」の脅威と表現の自由・検閲禁止の法理の意義
- SNS運営者に対する規律のあり方とその憲法上の根拠
研究過程の一例
「人工知能と政策論」の講義で「AIと個人の尊重の原理」を扱ったことに触発され、「AIプロファイリング」と「プライバシーの権利」との関係という最先端の論点かつ難問について研究開始。
当初、「プライバシーの権利」を通説的な「自己情報コントロール権」と捉え、AIプロファイリングの問題点を論じたが、学説上の批判が高まっている「自己情報コントロール権」の限界に直面し、再検討。
「プライバシーの権利」をどのように定義づけるかで苦悩した結果、各種の先行研究・学説を土台に、「自己情報をむやみに生成・分類されない権利」と消極的に再構成する方向性を提唱。
「自己情報をむやみに生成・分類されない権利」が具体的にどのような法的効果を持った基本権で、判例上の「私的領域に侵入されることのない権利」とどのような関係に立つのかが不明との指摘に対し、再検討。
「私的領域」を意識しつつ、各種学説を再調査のうえ、「自己情報の輪郭をみだりに書き換えられない権利」と再々構成する方向性に転換し、「私的領域に侵入されることのない権利」とは補完関係に立つことを明確化。「自己情報コントロール権」のエッセンスにも接合。
03
メンバー・教員紹介
研究会の雰囲気
担当教員
OECD事務局、総務省情報通信政策研究所、長崎大学経済学部、一般財団法人マルチメディア振興センターワシントン事務所、国土交通省道路局、総務省行政評価局、総務省サイバーセキュリティ統括官付、総務省国際戦略局、内閣官房等を経て、現在、慶應義塾大学環境情報学部に勤務。
- 学位
- 修士(M.Phil.)(ケンブリッジ大学)
- 研究分野
- 人文・社会 / 公法学 / 行政法
人文・社会 / 公法学 / 憲法
人文・社会 / 新領域法学 / 情報通信法
情報通信 / 情報学基礎論 / 観光情報学 - 研究室
- 学期によって変更されるため、シラバスをご確認ください。
担当科目
環境情報学部・総合政策学部
- 情報通信法
- 人工知能と政策論
- ネットワーク政策(GIGA/GG)
- 立法技術論
- 情報通信技術展開政策
- 労働法
- 特別研究プロジェクトB(憲法、情報通信法)
- 研究会A
全学部(三田キャンパス)
- 情報通信政策Ⅰ
- 情報通信政策Ⅱ
政策・メディア研究科
- プライバシーと個人情報管理
- アカデミックプロジェクト
- 修士研究会
主な著書
- 『情報収集解析社会と基本権』(尚学社、2021年)ISBN:978-4860311681
- 『通信の自由と通信の秘密 ― ネットワーク社会における再構成』(尚学社、2018年)ISBN:978-4860311513
- 『「通信の秘密不可侵」の法理 ― ネットワーク社会における法解釈と実践』(勁草書房、2015年)ISBN:978-4326403011
04
志願者へのメッセージ・履修案内
歓迎要件
- 政策のニュースを見て、「もっとこうしたら良いのに」と思うことがある方
- 物事を論理的に考えることが好きな方
- 他者と専門的な内容について議論することが好きな方
- 日常生活の問題を、政策課題に結び付けて考えられる方
- 輪番の報告発表と議論に継続して参加する意思のある方
募集要項
| 研究会テーマ | 情報通信法 |
|---|---|
| 設置学部・研究科 | 総合政策学部・環境情報学部 |
| 対象学年 | 1年・2年・3年・4年 |
| 開講場所 | SFC(湘南藤沢キャンパス) |
| 授業実施形態 | 対面授業(主として対面授業)。各回とも原則として対面で行いますが、オンライン形式で行う場合もあります。 |
| 受け入れ予定人数 | 35人 |
| 履修条件 | 特になし |
| 関連科目 | 情報通信法 |
| その他推奨知識 | 憲法 |
| 英語サポート | 授業で英語サポートなし |
| 履修者制限 | 履修制限あり(追加許可あり) |
| 選抜方法 | 課題 |
| 応募方法 | 参加希望者は、氏名・学籍番号及び志望理由を示した文書(様式自由)を、K-LMSを通じて担当教員に提出してください。 シラバス記載の締切りに間に合わず追加許可を希望する場合には、シラバス記載の所定の日時までに、氏名・学籍番号及び志望理由を示した文書を担当教員にメールしてください。 |
| 募集期間 | 春学期:1月中旬 〜 4月上旬 秋学期:7月中旬 〜 9月下旬 |
| 成績評価 | 報告発表の内容、質疑時の対応、他の参加者の報告発表に対する議論、出席状況等を総合的に勘案のうえ評価します。 |
この表はシラバス記載の内容に基づいています。締切りや提出先の詳細は学期ごとに変わりますので、応募前に必ず最新のシラバスをご確認ください。
よくある質問
法学の知識がまったくありません。 ついていけますか。
問題ありません。 在籍者の多くは、入会時には法学や憲法学の専門知識は持っていませんでした。 必要な知識は入会後でも身に着けることができます。 教員が開講している授業を履修することも効果的です。
「情報通信法」の授業を履修していなくても参加できますか。
可能です。 関連科目として「情報通信法」、推奨知識として「憲法」が示されていますが、いずれも必須ではありません。 学期中に「情報通信法」等の授業を研究会と並行して履修する方も多くいます。 教員は情報通信法以外にも様々な授業を開講しているため、それらに参加される方も多いです。
報告は学期に何回まわってきますか。
1回の研究会で複数名が報告するため、学期内に複数回まわってくる可能性があります。 ほとんどの学生が1学期あたり2回以上発表することになりますが、発表の日程については、参加者の希望する日時を勘案して事前に決定されます。 報告テーマは、情報通信法上及び憲法学の適切な論点である限り、自由に設定できます。
報告の準備には、どのくらい時間がかかりますか。
通常回の事前学習は3時間程度、事後学習は2時間程度が目安とされています。 報告担当回については、発表資料の作成も含め、それ以上に時間をかけて論点に関する先行研究を整理し、自身の考え方をまとめる必要があります。 参加者によって所要時間は異なりますが、文献調査に時間がかかる傾向にあるため、早めに取り組まれることを推奨しています。
やむを得ず欠席する場合はどうすればよいですか。
担当教員までメールにてご連絡ください。 報告発表の担当回はできる限り出席することが求められますが、やむを得ない事情があるときは早めに連絡してください。
生成AIを使ってもよいですか。
本研究会では、生成AIの活用を奨励しています。 情報収集、構成案の検討、文章の改善等の効率化により、学習効果の向上が期待されるためです。 ただし、次の3点を守ってください。
- AIが生成した内容は必ず自分で検証し、必要に応じて修正すること
- 使用したAIツールの名称と使用目的を発表資料等に明記すること
- 他者の著作物や個人情報を含むプロンプトは使用しないこと
教科書は買う必要がありますか。
テキストは担当教員の著書3冊が指定されています(書名は「担当教員」の欄をご覧ください)。 いずれもメディアセンターにて利用可能(貸出可)です。 購入されたい場合は、WEBサイト末尾の連絡先までお気軽にご連絡ください。
履修者制限にもれた場合、どうすればよいですか。
追加許可の制度があります。 シラバス記載の所定の日時までに、氏名・学籍番号及び志望理由を示した文書を担当教員にメールで送付してください。
募集期間外に問い合わせてもよいですか。
差し支えありません。 次の学期の予定や聴講の可否についてお答えします。 WEBサイト末尾の連絡先までお気軽にご連絡ください。