高橋洋『イノベーションと政治学―情報通信革命<日本の遅れ>の政治過程』(勁草書房、2009年)
IT革命という象徴的なイシューを事例に、理論、文献、オーラルを駆使して「イノベーションと政治」の関係を明らかにした著作が出ました。私にとっては、長年、先端研で机を並べてきた畏友の著作です。政治学と歴史学を融合して現代を問うとどう解けるのか。そのひとつの答えを出された一冊だと思います。
以下、出版社のサイトから。
<内容紹介>
IT革命のような「非連続のイノベーション」が国家にとってもつ意味とは何か。通産省と郵政省の取り組みや産業政策という文脈のなかで、IT革命の40年を考察する。
どうして、IT革命はアメリカで発生し、日本は遅れをとったのか。情報通信分野の革命性を世界でいち早く認識したのは、実は日本政府だった。30年も前から「知識集約化」戦略を打ち出していた日本政府が、いったいなぜ2000年の時点では自らの遅れを認めざるを得なくなったのか。国家にとって、「非連続のイノベーション」が意味したもの。
<目次>
序章 IT 革命を政治学から考える
第1章 政府とイノベーション
第1節 政府の役割
第2節 環境変化と省庁の変化
第3節 政府と市場の関係の概念類型
第4節 省庁の組織資源配分と人事資源配分
第5節 郵政省と通産省の省内資源配分の分析
第2章 高度経済成長(1950 年代半ば~1960 年代半ば)
第1節 高度経済成長と「情報」と「通信」
第2節 通産省と産業政策
第3節 郵政省と郵政現業
第3章 第一次情報化(1960 年代半ば~1970 年代末)
第1節 情報化社会論と「情報」と「通信」の融合
第2節 通産省と「知識集約化」の政策ビジョン
第3節 郵政省と第一次データ通信開放
第4章 高度情報化 (1970 年代末~1980 年代末)
第1節 ニューメディアと新自由主義
第2節 郵政省と電電改革
第3節 通産省と産業政策の限界
第4節 VAN 戦争と日本型多元主義
第5章 IT 革命(1980 年代末~2000 年)
第1節 インターネットとアメリカ
第2節 郵政省による「管理された競争」と NTT 経営形態問題
第3節 通産省と利用者支援の情報化政策
第4節 日本の遅れと内閣による取り組み
第5節 森内閣と IT 戦略会議
第6章 イノベーションと政治学
第1節 情報通信革命の政治過程
第2節 IT 革命への日本の遅れ
参考文献
あとがき
事項索引
人名索引
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台湾オーラルヒストリー研究会編『台湾口述歴史研究』第1集、2009年
台湾でのオーラル・ヒストリーにと組まれている所澤潤先生より頂きました。ありがとうございます。
奈良岡聰智「駐日ベルギー大使館の140年(3) 戦前から戦後へ」『日本・ベルギー協会会報』76号、2009年6月
同「駐日ベルギー大使館の140年(2) 加藤高明邸からベルギー大使館へ」『日本・ベルギー協会会報』75号、2008年12月
著者の奈良岡聰智さんから頂きました。以前に(1)も頂いていたのですが、漏らしていました。すみません。(2)に掲載されている加藤邸の写真について熱く語る奈良岡さんが、とても印象的でした。