日本政治研究にオーラル・ヒストリーが本格的に導入されてから25年。新しいテキストが刊行され、刊行記念シンポジウムが行われました。
「インタビュー」との違いを強調しながら進んだ20年前からすると、今や、人文社会科学でオーラル・ヒストリーをはじめとする「聞く」手法を用いることはずいぶんと当たり前になったように思います。隔世の感があります。
政治学、とりわけ政策研、東大先端研だけで見ても、『オーラル・ヒストリー』(中公新書、2002年)、『オーラル・ヒストリー入門』(岩波書店、2007年)、『オーラル・ヒストリーで何ができるか』(岩波書店、2019年)と、向き合い方、方法論、使い方がぐいぐいと広がってきたことが感じられます。
4月13日に開かれた第4回「オーラル・ヒストリーのつどい」は、そうした思いを強くさせてくれるものでした。午前は2005~08年に開かれていたオーラル・ヒストリアンの養成講座「夏の学校」「春の学校」での講義内容の変化を追い、午後は武田徹さんによる『オーラル・ヒストリーで何ができるか』の書評と、村井良太さんによる『野中広務オーラル・ヒストリー』を題材にした使い方の議論。
改めて考えさせられたのは、かつて「老・壮・青」と言っていた聞き手のチーム編成と育成の問題でした。聞き取りはしばしば「見て学べ」「技を盗め」といった職人的な学びと言われることがあります。この新しいテキストは、テキストとしてはずいぶん突き抜けたものになっていますが、それだけにどう読まれるか、興味が尽きません。07年のテキストを使われた方とどう違ってくるか、これからのオーラルが楽しみです。
私自身の関心からすると、政治学、社会学双方で、櫻井厚さんが提示された対話的構築主義の次の世界が見えてきていることが面白く感じられました。もちろん、社会学で行われる聞き取りと、政治学で行う聞き取りには大きな違いがあるのですが、それだけに、そろそろインターディシプリンの「対話」の場が欲しいように感じています。今学期、SFCのオーラル・ヒストリーWSに岸政彦さんに来ていただけるのは、その第一歩になるのではと思っています。
SFCオーラル・ヒストリーゼミでは、昨年度より「オープンなゼミ」と題して、各回にゲスト参加者をお迎えする試みを始めています。同じ課題文献を読み、同じ課題レジュメを提出してくださった方をゲストメンバーとして議論に加わっていただくものです。ご関心があれば、Facebookの清水研究室ページをご覧ください。
駒場キャンパスの名物を楽しむことも忘れていませんよ。ごちそうさまでした!
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