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11月4日は原敬没後101年。102回目の命日です。盛岡、岩手でたくさんの方にお話を伺ってきました。
菩提寺・大慈寺での法要は例年通り。原敬を想う会会長(盛岡市長)による追悼のことば、岩手県知事からの来賓あいさつ、ご住職による枯香、読経と焼香ののち、大慈寺小学校の生徒さん50名ほどによる校歌(原のことが随所に歌い込まれています)の合唱が本堂に響き渡っていました。ご子孫のご挨拶も、没後100年の先を見据えたお話しでした。
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変化があったとすれば、参列者でしょうか。この法要は来賓(地元の名士、教育関係者)、原敬を想う会のメンバーのほか、一般参列者の方があるのですが、今年は一般参列者の方が増え、また、若い方がいらしたのが印象的でした。来年は土曜日ですから、より多くの方がご参列されるのではないかと思います。
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もうひとつのうれしい変化は、蕎麦ふるまいが復活したこと。原は母の米寿祝いで建てた「介壽荘」(盛岡市。現、アートホテルの場所)に帰省するたびに地元の人々を1000人ほど集め、蕎麦を振舞っていました。それにちなんだ蕎麦ふるまいが、コロナ禍を経て復活していました。おいしく、あたたまる心遣いです。
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原敬記念館では、生家がみごとな紅葉に彩られ、そのなかで原の大好きだった「さんさ踊り」が、地元・大宮のさんさ踊り保存会のみなさんによって奉納されました。これも3年ぶりです。
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おりしも記念館では、学芸員の田崎さんがここ数年温めてこられた企画展「原達(とおる)―叔父・原敬に期待された才人」が開催中(来年1月15日まで)。達は、原の兄・恭の次男で、盛岡の父のもとから東京の叔父・敬のもとに送り出され、東京帝国大学法科大学(フランス法)の特待生となった秀才というイメージでした。ここ数年、田崎さんの調査のおかげで、若干16歳で正岡子規に認められ、郷里の友人たちに俳句を勧めた才人であったこと、父と原の意向で哲学研究の道を諦めたこと、結核で早世したあと、原がそれを悔いて、自ら句作を始めるようになったことなどがまとめられました。
盛岡中学では、1学年上に米内光政、1学年下に金田一京助、郷古潔、田子一民、野村胡堂、2学年下に板垣征四郎、3学年下に石川啄木と、眩暈がしそうな面々。原は端正な顔立ち、大きな体躯、そして何より細やかな心配りで誰からも愛されたと野村が伝えています。
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夜は、ご縁をいただいた紫波町図書館で「平井六右衛門と『平民宰相』原敬 二人の出会いから別れまで」と題した対談に臨みました。紫波町といえば駅前に役場をはじめとした都市開発をPPPで進めた「オガール」エリアが知られていますが、古くは街道沿いにあった日詰エリアが中心地でした。そこには実業家であり、政友会の政治家であった平井政治郎の旧宅があり、近年、この旧宅を軸にしたイベントが多く開催されています。
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この平井邸の完成を祝う宴の主賓が原でした。そんなご縁から、今回、『平井六右衛門政治郎伝』を書かれた地元の史家・内城弘隆先生との対談を組んでいただきました。
なにより「夜のとしょかん」というコンセプトがすてきです。通常の開館時間が19:00に終わったあと、一度、館を閉めて、すこし照度を落としてから皆さんをお迎えしてのお話し会(消灯係は地元の小学生!)。客層も幅広く、なごやかに、楽しく対談させていただきました。
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定刻の21:00を過ぎても質問が続いたのでヒヤヒヤしたのですが、館のみなさんもとても楽しんでくださり、みごとな司会のもと、終了。館を出たのは22:00過ぎでした。「PPPの成功事例」といわれますが、なにより、そこにかかわる方々のすばらしさが「成功」を生んでいるのだろうと感じました。人のあたたかさ、町のうつくしさ、食べ物のおいしさはすべてつながっているのだなあと。ご縁にあらためて感謝です。また伺いたい、大好きな町が増えました。
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