『選挙研究』26-1号(日本選挙学会、木鐸社、2010年)に、杉本仁『選挙の民族誌―日本的政治風土の基層』(梟社、2007年)の書評を書きました。
これまで政治学、歴史学の分野ではなかなか取り上げられる機会がなかった本書ですが、地方における伝統的な選挙の実態がよくまとめられている、貴重な一冊です。山梨県の選挙、教組による候補者支援の事例としてはもちろんのこと、ある種の伝統的な選挙を知らない私たちの世代や、新興地域に住んでいる方々には、別して一読の価値があると思います。2007年刊と、やや旧聞に属する書籍ですが、取り上げずにはいられませんでした。
以下に目次をあげておきます。
はじめに
第1章 ムラ祭りとしての選挙
一 神迎え
1 御輿に乗る人、担ぐ人
2 神座と縁起物
3 神意伺い
二 神の降臨
1 暴れ御輿
2 御成道
三 神祭りのあと
1 排斥と調整
2 謝礼と日和見
第2章 ムラの選挙装置と民族
一 イッケとジルイ
1 同族組織
2 スジの拡張
二 親分子分慣行
1 オヤブンの権威
2 オヤブンの変容
三 無尽と仁義
1 資本金借
2 無尽の活用
3 選挙と無尽
4 義理張り
第3章 ムラの精神風土と金丸信
一 甲州の政治風土
1 中傷ビラ戦争
2 甲州人気質
二 ムラの政治家
1 イデオロギーの棚上げ
2 任侠
3 久親会
4 人脈政治
5 傀儡人形
6 ウチのホトケさん
終章 政治風土と民族のゆくえ