『写真週報とその時代』が刊行されます(7月15日)

 玉井清編『写真週報とその時代』(上)(下)が慶應義塾大学出版会から刊行されます。
 
 「ぜいたくは敵だ!」という標語は、太平洋戦争中に日本政府が刊行していたグラフ雑誌から広まったものでした。その雑誌の名前は『写真週報』。内閣情報部(のち情報局)が刊行したプロパガンダ雑誌です。
 そう言ってしまうとなんだかネガティブなイメージを持ってしまいますが、その誌面からは戦時中の日本政府がどのような社会を作ろうとしていたのかを窺い知ることができる貴重な資料です。標語を掲げた「時の立札」の活用法など、政府の指示は細部にまで及んでいます。
 参加している芸術家の顔ぶれにも驚かされます。名取洋之助、土門拳をはじめ、戦後の著名カメラマンや、漫画家、音楽家、、、彼らがいかにして戦時を生き抜いたのかを考える上でも貴重な資料です。
 
 この研究は、およそ10年前に玉井先生の門下による共同研究にとして、2008年に21世紀COE叢書の1冊として刊行された『戦時日本の国民意識』をベースにしています。今回、一般向けに大幅改稿と書き下ろしを加えて刊行されるものです。私は上巻の第1章「国民を動員せよ―国策グラフ誌『写真週報』の誕生」を担当しています。編集の方針と組織、取材の現場、販売と普及状況、活用のされ方などを論じました。20頁のグラフ誌で定価10銭という安さ、読者は300万人に上ったと推計されます。まさに戦時における『キング』級の雑誌を扱った一冊。来週22日には店頭に並ぶそうです。お目に留まれば幸いです。
 
https://www.keio-up.co.jp/np/isbn/9784766424355/
  


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