5月最終週、オーラル・ヒストリーに関するワークショップを3回行う機会をいただきました。さすがに1週間で3回も行うといろいろ考えるものですね。
ここ10年ほど、オーラル・ヒストリーを教育の場で活用することに取り組んできましたが、先日の選挙学会でのラウンドテーブルや、別の原稿などもあり、そろそろこれまでの取り組みとこれからの行き先を定める段階に入ってきたように感じています。
もっとも、3回のワークショップはそれぞれ全く異なる方を相手にしたものでした。5月28日は岐阜県大垣市にあるIAMAS(情報科学芸術大学院)の1年生ゲートウェイ科目として、新入生がお互いの研究プロジェクトについて聞き取り、他己紹介的に発表するというもの。ここでは「聴く」よりも「語る」、「聞き出す」よりも「語ってもらう」ことに重点を置いて行いました。
5月31日にはSFCの学部講義「オーラル・ヒストリーWS」に日本美術オーラル・ヒストリー・アーカイブの加治屋健司先生(東京大学)をお迎えして、何を聞くのかをじっくり考えました。表象文化論を専門とし、100人近い現代日本美術関係者に聞き取りを行われてきた加治屋さんと考える「事実」と「解釈」には大きな示唆をいただきました。
6月1日は全国歴史資料保存利用機関連絡協議会(全史料協)関東部会総会で、資料保存機関でアーキビストとして活躍される皆さんと行いました。総会記念講演会でしたので、講義とワークショップをそれぞれ60分行うかたちでしたが、ワークショップを実施したのははじめてとのことで、ずいぶん驚かれました。ここでは専門の近い皆さんが、お互いの持つ視野、認識、思い込みとどう向き合いながら聞くかをポイントにしました。
このワークショップでは、「聴く」だけでなく、「語る」と「見る」を体験していただくのですが、どうやらそこが「聴く」を考える肝になることがよくわかってきました。その上で、「語る」のなかに変化の位相をどう見出していくのかというヒントもいただきました。
来週は、オーラル・ヒストリーゼミでこの実習を行います。これまで多くの文献を読んで「聴く」を考えてきたゼミ生がどんな実践を見せてくれるのか、とても楽しみです。
最後に、ご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました。勉強になった1週間でした。
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